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みやまよめな:34
2008.05.29 |Category …みやまよめな
とりあえず、その場でだけはうなづいておく。
だが、この頼みはかえって、社の薄暗い嫉妬心をあおる結果になったのは言うまでもない。
館を出ると、猛がつながれている牢へと足を運ぶ。
人払いをして、天井から吊り下げられた猛をしげしげと眺めた。
社「よい様だな、猛」
残忍な冷笑を浮かべる。
猛「……おかげさまでな」
ニヤリと口の端を吊り上げた。
猛「まさか、本当に父上殿に言い付けるとは思わなかったな、はははははッ」
社「姉上に不用意に近づくからそうなる。これにこりたらおとなしく田舎にでも帰るのだな」
言って、勝ち誇る。
みやまよめな:33
2008.05.29 |Category …みやまよめな
再び画面は社。
家にたどりつき、社は早速、都との約束をやぶって父の元へ。
もとより、黙っているつもりはなく、姉の手前うなづいて見せただけ。
とにかく彼は、猛を何とか解雇させたくて仕方がなかった。
一方、そんなことはまったく関せずの椿は上機嫌で庭を横切る。
万次「お前さん、何だ、そりゃ。そのカッコ」
椿「うん?」
振り返る。
万次「うわ、ヒッデーなぁ。バケモンみたいだぞ?」
椿「なぁんですってぇ~!?」
万次「鏡見たのかよ!?」
椿「……ちょっと失敗したかなって思ったけど、社様がいいって言ってくれたんだから、いいんだよ~っ!!」
べっ!!と舌を出す。
みやまよめな:32
2008.05.29 |Category …みやまよめな
都「猛殿に送ってもらうから、私の方はよい。それよりも今は椿と一緒にいておやりなさい」
椿「都様……」
社「………………」
『……くそ……』
都「椿」
椿「はい、都様」
都「社を頼みましたよ」
椿「はいっ!!」
都「あの子は見た目より、まだまだ子供…………。末子のせいか少々甘えたところがありますが、椿が鍛え直してやってちょうだいね」 ニッコリ。
椿「お任せ下さい♪」
二人、去って行く。
みやまよめな:31
2008.05.29 |Category …みやまよめな
社「……はは……」
『……イカン、イカン。椿に当たってどうするというのだ……』
頭を振る。
社「そうだ、椿、後で買い物につきあっておくれ」
椿「あっ、ハイハイッ!! どこまでもお供致しますぅ」
社、ニッコリと微笑む。
詫び(わび)のつもりだ。
約束した時間になると椿は、いつもと違い、めーいっぱい背伸びしたお洒落をキメてやってくる。
社とのおつかいなので気合が入っていた。
社「……………………」
『……変なカッコ……』 ヒク……
……が、気合が入り過ぎていて、ちっとも似合っていない。
化粧がヘタなのに無茶するから、やたらと厚化粧でほとんどお化け。
みやまよめな:30
2008.05.28 |Category …みやまよめな
魅入られし者
1,
あれから、毎晩、猛は都の部屋に忍び込んで来た。どこからともなく。
初めは無礼者とののしっていた都だったが、人を呼ぶことはしなかった。
抱き寄せられて、
都「いくら恩人とはいえ、このような狼藉(ろうぜき)、許されるものではありませんよっ!!」
猛「では、人でも呼んで、わしを斬るがよい。わしはそれでも構わぬ」
都「恐ろしくないのですかっ!?」
猛「なーに、人が恐ろしくて、神子殿をモノにできるか」 口づけを迫る。
都「何と豪胆(ごうたん)な……」
しかし、都はこの男が嫌いではなかった。
おかしな力を持つ自分を、人々は恐れ、あがめるばかり。
このように一人のただの女として扱われたことは、ほとんど身に覚えがない。
しかも都はまだ、本当の恋など知らぬ乙女。
男子に強く求められることもなかったために、胸の高鳴りにあがらうこともままならなかった。
都『……そうだ、夢での鼓動はこの男からだ……』
黒百合も彼の仕業であり、もうこれは疑いようもない。
都『私は、ずっとこの男に恋をしていたのだ……きっと……』
太い腕に抱きすくめられて、うっとりと目を閉じる。
みやまよめな:29
2008.05.28 |Category …みやまよめな
都「まさか……」
猛「ほうじゃ」
都「まぁ……まさかあのときの方が貴方でしたとは……」
社「??」
都「その節はとんだご迷惑を……」
さっきと打って変わって、深々と頭を下げる。
猛「まぁ、なに。構わぬよ。……じゃが、もう二度とあのような馬鹿げたことをするでないぞ」
都「………………………」 目をそらす。
社『馬鹿げた…………まさか……』
猛「汝(うぬ)の命は汝だけのモノではないからな」
これはなぐさめの言葉と思われたが、実は他意があることを都たちは気づかない。
都「……はぁ……」