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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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みやまよめな:34

 とりあえず、その場でだけはうなづいておく。

 だが、この頼みはかえって、社の薄暗い嫉妬心をあおる結果になったのは言うまでもない。

 館を出ると、猛がつながれている牢へと足を運ぶ。

 人払いをして、天井から吊り下げられた猛をしげしげと眺めた。

 

社「よい様だな、猛」

 

 残忍な冷笑を浮かべる。

 

猛「……おかげさまでな」

 

 ニヤリと口の端を吊り上げた。

 

「まさか、本当に父上殿に言い付けるとは思わなかったな、はははははッ」

社「姉上に不用意に近づくからそうなる。これにこりたらおとなしく田舎にでも帰るのだな」

 

 言って、勝ち誇る。

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みやまよめな:33

 再び画面は社。

 家にたどりつき、社は早速、都との約束をやぶって父の元へ。

 もとより、黙っているつもりはなく、姉の手前うなづいて見せただけ。

 とにかく彼は、猛を何とか解雇させたくて仕方がなかった。

 一方、そんなことはまったく関せずの椿は上機嫌で庭を横切る。

 

万次「お前さん、何だ、そりゃ。そのカッコ」

椿「うん?」

 

 振り返る。

 

万次「うわ、ヒッデーなぁ。バケモンみたいだぞ?」

椿「なぁんですってぇ~!?」

万次「鏡見たのかよ!?」

椿「……ちょっと失敗したかなって思ったけど、社様がいいって言ってくれたんだから、いいんだよ~っ!!」

 

 べっ!!と舌を出す。

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みやまよめな:32

都「猛殿に送ってもらうから、私の方はよい。それよりも今は椿と一緒にいておやりなさい」

椿「都様……」

社「………………」

 『……くそ……』

都「椿」

椿「はい、都様」

都「社を頼みましたよ」

椿「はいっ!!」

都「あの子は見た目より、まだまだ子供…………。末子のせいか少々甘えたところがありますが、椿が鍛え直してやってちょうだいね」 ニッコリ。

椿「お任せ下さい

 

 二人、去って行く。

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みやまよめな:31

社「……はは……」

 『……イカン、イカン。椿に当たってどうするというのだ……』

 

 頭を振る。

 

「そうだ、椿、後で買い物につきあっておくれ」

椿「あっ、ハイハイッ!! どこまでもお供致しますぅ」

 

 社、ニッコリと笑む。

詫び(わび)のつもりだ。

 約束した時間になると椿は、いつもと違い、めーいっぱい背伸びしたお洒落をキメてやってくる。

 社とのおつかいなので気合が入っていた。

 

社「……………………」

 『……変なカッコ……』 ヒク……

 

 ……が、気合が入り過ぎていて、ちっとも似合っていない。

 化粧がヘタなのに無茶するから、やたらと厚化粧でほとんどお化け。

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みやまよめな:30

魅入られし者

1,

 あれから、毎晩、猛は都の部屋に忍び込んで来た。どこからともなく。

 初めは無礼者とののしっていた都だったが、人を呼ぶことはしなかった。

 抱き寄せられて、

 

都「いくら恩人とはいえ、このような狼藉(ろうぜき)、許されるものではありませんよっ!!」

猛「では、人でも呼んで、わしを斬るがよい。わしはそれでも構わぬ」

都「恐ろしくないのですかっ!?」

猛「なーに、人が恐ろしくて、神子殿をモノにできるか」 口づけを迫る。

都「何と豪胆(ごうたん)な……」

 

 しかし、都はこの男が嫌いではなかった。

 おかしな力を持つ自分を、人々は恐れ、あがめるばかり。

 このように一人のただの女として扱われたことは、ほとんど身に覚えがない。

 しかも都はまだ、本当の恋など知らぬ乙女。

 男子に強く求められることもなかったために、胸の高鳴りにあがらうこともままならなかった。

 

都『……そうだ、夢での鼓動はこの男からだ……』

 

 黒百合も彼の仕業であり、もうこれは疑いようもない。

 

都『私は、ずっとこの男に恋をしていたのだ……きっと……』

 

 太い腕に抱きすくめられて、うっとりと目を閉じる。

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みやまよめな:29

都「まさか……」

猛「ほうじゃ」

都「まぁ……まさかあのときの方が貴方でしたとは……」

社「??」

都「その節はとんだご迷惑を……」

 

 さっきと打って変わって、深々と頭を下げる。

 

猛「まぁ、なに。構わぬよ。……じゃが、もう二度とあのような馬鹿げたことをするでないぞ」

都「………………………」 目をそらす。

社『馬鹿げた…………まさか……』

猛「汝(うぬ)の命は汝だけのモノではないからな」

 

 これはなぐさめの言葉と思われたが、実は他意があることを都たちは気づかない。

 

都「……はぁ……」

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みやまよめな:28

都「!?」

猛「………………………」

 

 ニヤリと下品に口元を歪める。

 

社「ここは男子禁制の館ぞっ!! 誰の許可あって踏み込んだっ!?」

猛「おうよ。だから、忍んできたのじゃ」

 

 社の背にいる都に視線をはわせる。

 またしてもニヤリと笑い、

 

猛「姫に会いにな」

社「黙れ、不埓者っ!!」

猛「おっと!!」

 

 抜刀しようとした社の手を上から押さえる。

 

社「!?」

 

 力任せに引き抜こうとするが、まったく動かない。

 

『ばかな…………!?』

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