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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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みやまよめな:54

社「ただの、水晶だったようですな?」

 

 これを持ってきた求婚者を振り向く。

 周囲もクスクスとせせら笑っている。

 

求婚者1「くっ!!」

社「かようなまがい物で、占い姫をめとろうなどと……。申し訳無いが、お引き取りいただこう」

都「次の方……」

 

 次に差し出されたのは、金のウグイス。

 しかしこれも鳴かぬ作り物であったり、金粉を塗っただけのただのウグイス。

 当たり前だが、金のウグイスなど存在しないのだから用意できるハズもない。

 

求婚者2「これが鬼の角でござる」

 

 女官が受け取り、都に渡す。

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みやまよめな:53

 言われて左の者から宝物を差し出し、それを手に入れるまでの冒険譚を話して聞かせる。

 

求婚者たち「暴れるギョリュウに矢を射掛け、ひるんだ隙に刀で切りつけたのだ!!」

     「鬼は怒り狂って襲いかかってきた!! 連れていた百人の兵は皆やられてしまったのだが、ワシは……」

     「天女が降りるという沼に待ち伏せて……」

 

 披露される宝の数々と自慢話は、都の護衛と女官たちを驚愕させていた。

 

都「……………………」

 

 しかし都は扇の後ろで小馬鹿にしたように小さく笑っている。

 

社「…………?」

 

 その様子を見て、目をしばたかせる。

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みやまよめな:52

 散歩に行ったそのままに一人と一匹は何も持たず、山の獣道を走りだした。

 犬の玄米を背後につけて、社はそれよりも早く走った。

 およそ、人間のスピードではない。

 鋭い草や木の枝に自身を傷つけながら、時に木の枝から枝に飛び移り、身軽な猿のように突き進む。

 夜になってようやくたどり着いた頃には、玄米の方が主人に抱かれた格好。

社「ふぅっ、はぁっ……。さすがに疲れたな。ホラ、玄米」

 

 玄米を下に降ろす。

 

「姉上を連れていたときよりもずいぶんと早く着くものだな。……それに……」

 

 来た道を振り返る。

 

社「……意外と距離もない……」

 

 こんなので駆け落ちなどと思っていたのかと当時の自分たちがおかしい。

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みやまよめな:51

社「…………うん……。そうだな……」

 

 考えてすぐに思い直す。

 

『そういえば……変だ……』

 

 えた犬をつめていると、また“可愛い”の感情がゆっくり戻って来た。

 今の、急激な怒りの感情は何であったのか。

それが過ぎるとまた元の自分に戻る。

 

社「そうだ。万次の言うとおりだ。私はどうかしていた……」

 

 しゃがんで手をばす。

 

「許しておくれ、玄米」

玄米「くぅ~ん」

 

 恐れを見せながらも少しずつ寄ってきて、今度は差し出された手をナメる。

 

万次「ははっ。よかった。仲直りできたようですね」

社「うん……すまなかった。万次のおかげだ」

万次「いやいや」

 

 頭をかく。

 

万次しかし、ホントに変だな、この姉弟……』

 

 いぶかしむ目を細める。

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みやまよめな:50

 ふいにすぐ側で犬が吠えた。

 

社「!!」 ドキッ。

犬「ワンワンワンワンッ!!」

 

 犬は社の飼い犬だ。

 

社「なんだ、玄米か」 ホッ。

玄米「ワンワンワンッ!!!」

社「ただいま、玄米。……おいで……」

 

 手を出す。

 

玄米「………………」

 

 スンスン鼻をヒクつかせながら寄ってくる。

 

社「……?」

 

 いつもなら尻尾を振り回しながらやってくる玄米は今日に限って、警戒をしながらにじりよってきた。

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みやまよめな:49

社『……くっ!!』

都「もしや、おまえ、妬いておるのかえ?」

社「……べ……別に……」

都「あははっ!! あっはははははははっ!!!」

 

 扇子で口元を隠して大笑い。

 以前なら、決してこんな笑いかたはしなかった。

 ……都は、変わってしまっていた……。

 

社「…………………」

 

 急に笑いを引っ込めて、

 

都「社」

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みやまよめな:48

『……しまった!! 誰かに言い付けて私のいない間はにぎりつぶさせておくんだった!!』

椿「ええ、ですから、お返事はまだ返していないようなんですけど…………」

社「そ……そうか……。まぁ、姉上の名は実際に戦場に出ている私よりも知れ渡っているからなぁ……」

椿「ドンピシャリの占い姫ですからね~♪ しかも美人だし」

社「うむ……。しかし、殿方も気の毒なことよ。いくら求婚したところで、応じる姉上ではないからな」

椿「えでも……それが……」

社「ん?」

椿「……都様も悪い気はしてないようですよ? ……熱烈な文や贈り物も届いているようだし、女としたらクラリときますって」

社「!! そ……そうなのか……? あ、そう……そいつは意外だ……ははっ、あの姉上が……ね」

 

 空々しくとぼけてみせるが、内心、穏やかではない。

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