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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 4-10

メイディア「さ。排泄物を運ぶのです」

 

 脱力してしゃがんだまま、

 

レク「あの~…俺、帰ってもいい?」

メイディア「ダァメェッ! 意地悪教官と戦うの! 正義のために!」

 

 座り込んだままのレクの服を一生懸命に引っ張る。

 

レク「同情はするけど、俺の正義じゃないし、それ…」

 

 ウンコ運びなんか勘弁して欲しい。

 しかも教官をハメようとしているだなんてさすがに思わなかった。

 「穴を掘っている時点で落とし穴だと気づくだろ、フツー」と同室で同じ剣士を目指しているイヤミでスカしたフェイトがここにいたなら言うところだろう。

 

メイディア「今さら何を怖じけづいているの。ワタクシの味方だと言ってくれたではありませんか」

 

 今度は両肩をつかんでゆする。

 揺さぶられるままに、

 

レク「それはそうだけど…」

 

 確かに言った記憶はある。

が、あれはあくまで例の男につきまとわれていると思ったからであって、決して穴を掘って土まみれになり、翌日寝不足のまま訓練に勤しんだり、ウンコを運んで教官に一泡吹かせるためではナイ。

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レイディ・メイディ 4-9

 さて。

 待ちに待った夜。

 二人は約束の場所で落ち合った。

 

レク「今日は何だか辛そうだったね、メイディ」

メイディア「こんばんは。…ところでメイディって呼ぶのはやめて下さる?」

レク「? なんで?」

メイディア「いくらお友達になったとはいえ、貴方とワタクシは身分が違うのですから」

レク「そっか…わかったよメイディ」

メイディア「………」

 

 不機嫌に腕を組んで片足を軽く踏み鳴らす。

 

レク「あっ、また言っちゃった ゴメン、メイディ…あっ またっ!?」

メイディア「…………もう…いいですわ」 ため息。

     「でも身分の違いはわきまえて下さい。いいこと? お友達だから“様”でなくてもいいケド“さん”で許してあげる」

 

 細目で軽くにらんでくる貴族の娘に友達でも身分は関係あるのかと平民でしがない加治屋の息子のレクは思った。貴族は大変なんだなぁなどとのんきに。

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レイディ・メイディ 4-8

 同室のフェイトと友人になった赤薔薇志望の少女・レイオットと共に食堂で朝食をとっていた時のことだ。

 

レイオット「昨日、私たちの部屋に泥棒がっ!」

フェイト「エッ!? 女性ばっかりの部屋に!? 危険じゃないかっ。気づかなかったのか、君は。それでも君は……」

レイオット「…女なんだけど…」

フェイト「…あ…」

 

 シーン…

 気まずい空気が流れる。

 それを何とかごまかそうとレクが割って入った。

 

レク「盗まれたモノは?」

レイオット「それが…まったく」

 

 ごまかしはうまくいったようだ。

 

レイオット「どうも侵入する前にクロエさんがロープを切って落として、逃げていったようなんだけど……

フェイト「物騒だなぁ。ちゃんと窓の鍵は閉めてあるんだろうな?」

レイオット「かけてるわよ。女の子しかいないんだから」

 

 “女の子しかいない”レイオットの口から出た台詞に一瞬、止まってしまう二人。

 レイオットはこめかみに薄く青筋を立てる。自分だって女の子に含まれているのだ。

 今、二人、笑ったな? 笑ったでしょう? そんな目で睨みつける。

 

フェイト「ああ、すまない。話がとぎれたかな」

 

 あわててフォロー。

 

フェイト「しかし窓が空いていてロープがかかっててってことは、これから入るところじゃなくて逃げる途中だったんだじゃないか?」

レク「そういえばそうだよな、だいたい………あ…」

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レイディ・メイディ 4-7

レク「…エート…?」

 

 “穴”?

 戸惑っているレクの手首をつかみ、少女は颯爽と歩きだす。

 

レク「ちょっ…!? ちょっとっ」

メイディア「あまり大きな声を出さないで下さる?」

 

 淡いピンク色の唇に指を一本立て、その指でレクの口にもチョンと触れる。

 

レク「あ…え…」

 

 途端に真っ赤になる純情少年。

 彼はまだガールフレンドはおろか、女の子の手も握ったことがない。

 

メイディア「さ、急ぎましょう」

レク「あ、う、うん」

 

 何が何だかわからないままに流されてしまう自分が少々情けないと思いつつ、この状況をくすぐったく思っている自分も確かにいた。

 いた……が。

それはすぐに夢幻だったと悟ることになる。

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レイディ・メイディ 4-6

 結局、鳥は……

 水晶珠に映る不細工な自分を見て思い出そうとした。

 でも、よく思い出せなかった。

 そんなに遠い過去のことでもないというのに。

 ともかくそれからだ。

 彼女が自分の意志で勝手気ままをするようになったのは。

 家庭教師たちに悪意あるイタズラを仕掛けては辞めさせてしまったり、それまでしていた努力を怠り礼儀作法を無視したり。

 時には一人で馬に乗って屋敷を抜け出したりもした。

 町で危ない目にもあったこともあったが、それでも懲りなかった。

 お金を無意味にバラまいてみたり、弱い立場の者を踏み付けたりしてもみた。

 けれど(みな)は言う。

 貴族様、貴族様。

 貴族様ってそんなにご立派?

 他人を踏み付ける権利があるんだ。

 そうそう。だって、自分の子だって売ってしまってもいいのだから。

 ワタクシは貴族! エマリィ=シャトーの。

 皆がかしづかなくてはならないの!

 水晶に映った少女がメイディアに語りかけてくる。

 

メイディア「そうですわ…あの、あの教官…いなくなっちゃえばいいの。だって、ワタクシにいつも恥をかかせて…何様のつもりかしら」

 

 小さくつぶやく。

 水晶に映った少女もうなづいた。

 あのチビ教官を実力でもって屈服させ、さらに嫌がらせで追い出そうというのが当面の、彼女のちっぽけな目標となったのである

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レイディ・メイディ 4-5

 教官室を後にしたメイディアは意味を悟って青ざめた少年と違い、ただただ例によって腹を立てているだけであった。まったくもって反省も成長もない娘である。

 皆が自習している教室に戻ると噂話がピタリと止んだ

 

メイディア「…………」

 

 ジロリジロリと教室内を見回して、空いた席につく。

 

メイディア『何ですの、何ですのっ!? “ガキは好かない”ですって!? 何よエラソーにっ! ワタクシより背が低いクセしてっ! お子様は貴方ですっ! チービチービッ! 子守なんてしなくて結構よっ。ええ、ええ、そうですとも、そうですともっ! ワタクシは子供なんかではないのだわっ! もう15。立派な…立派な貴婦人なんだからっ! …嫁ぎ先だって……もう……決まっているのに…』

 

 用意してきた水晶球を机の上に乗せ、魔力を注ぎ込む。

 こうなったら、あのナマイキな教官をぎゃふんと言わせてやろう。

 自分はその気にさえなれば何だってできるのだ。

 そう。今までだってそうだった。

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レイディ・メイディ 4-4

 教室の様子をよそに、同じ頃の教官室では…。

 大きめの教官用机に腰掛けて足をぶらつかせているのは氷鎖女(ひさめ)

 その前に立っているのはマラソン時に騒ぎを起こした二人。

 

氷鎖女「一通り事情は聴いたでござるよ」

メイディア「ワタクシはまだ何も言っておりませんわ! 一方的にそちらの方の話だけをお聞きになるというの!?」

 

 かみつく勢いで隣の少年を指さす。

 

少年「先生、俺はホントに…っ」

氷鎖女「あーあー。うるさいうるさい。言いたいことがあるなら、ハッキリ言えばよかろうに。あ~、そっちのからは聞いた。今度はごっ…その…」

メイディア「メイディア=エマリィ=シャトー」

氷鎖女「ああ、めいであ=えまりぃ=しゃとぉ…言い分を聞かせてもらお?」

メイディア「この方がお付き合いを断られた腹いせにとワタクシを転ばせて、乱暴しようとしたのです」

氷鎖女「交際を拒否された腹いせと何故にわかった?」

 

 額当ての角度を直すしぐさをする。

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