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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 4-6

 結局、鳥は……

 水晶珠に映る不細工な自分を見て思い出そうとした。

 でも、よく思い出せなかった。

 そんなに遠い過去のことでもないというのに。

 ともかくそれからだ。

 彼女が自分の意志で勝手気ままをするようになったのは。

 家庭教師たちに悪意あるイタズラを仕掛けては辞めさせてしまったり、それまでしていた努力を怠り礼儀作法を無視したり。

 時には一人で馬に乗って屋敷を抜け出したりもした。

 町で危ない目にもあったこともあったが、それでも懲りなかった。

 お金を無意味にバラまいてみたり、弱い立場の者を踏み付けたりしてもみた。

 けれど(みな)は言う。

 貴族様、貴族様。

 貴族様ってそんなにご立派?

 他人を踏み付ける権利があるんだ。

 そうそう。だって、自分の子だって売ってしまってもいいのだから。

 ワタクシは貴族! エマリィ=シャトーの。

 皆がかしづかなくてはならないの!

 水晶に映った少女がメイディアに語りかけてくる。

 

メイディア「そうですわ…あの、あの教官…いなくなっちゃえばいいの。だって、ワタクシにいつも恥をかかせて…何様のつもりかしら」

 

 小さくつぶやく。

 水晶に映った少女もうなづいた。

 あのチビ教官を実力でもって屈服させ、さらに嫌がらせで追い出そうというのが当面の、彼女のちっぽけな目標となったのである


▽つづきはこちら

メイディア「お屋敷を抜け出すのなんか、カンタンでしたわ」

 

 真夜中。

 6人部屋の5人はすでに眠りについているようだ。

日々のハードな訓練によほど疲れているのだろう。

 メイディアも条件は同じハズだが、イタズラを思いついた時の彼女に限っては規格外。

 突然元気が沸いて来て、昼間の疲れなどなんのその。

 今はこっそりと3階の窓からの脱出をするためのロープを製作しているところだ。

 あまり長さのない布を縛ってつないで長くしてゆく。

 “布”の中にはルームメイトたちが始めに着ていた私服などがざっている。

 彼女にとってはワタクシの物はワタクシの物。貴女たちの物もワタクシの物。

 そこに少しの躊躇(ちゅうちょ)も悪びれもない。

 ただ、布が必要だったからあるものを使用しただけだ。

 シワになるし破るのは嫌だから、自分のは使わない。

 恐ろしく自己中心的な考えの持ち主である。

 服でできたロープを3段ベットの足にくくりつけ、強度を確かめると彼女は窓からスルスルと器用に降りて行く。

 3階の高さは相当であったが、いかにも慣れているといった様子で、恐れなど微塵も感じていないようだ。

 しかし悪いことをすれば天罰が下るもの

 クロエが目を覚ました。

 

クロエ「んと…おしっこ………………んん?」

 

 眠い眼をこすりながらトイレに起き上がると闇の中に白く妙なモノが視界の端に映った。

 

クロエ「何コレ!? もしかして…」

 

 簡易ロープに近づく。

 泥棒!? ハッとなって窓の方を見やる。

 空っ放しの窓。微かな風に揺れるカーテン。
 そして……

 ギシギシ…ギシ…

 確かに誰かが    いるっ!??

 

クロエ「ひゃあっ! 大変っ! 泥棒さんめっ! でも見てなさい! そんな悪い人は  …」

 

 自分の荷物からハサミを取り出してロープの根から…

 

クロエ「エイッ!」

 

 チョッキーン☆

 2階と1階の間まで差しかかっていたメイディアが急にロープの張りがなくなったのに気づくまで数秒。

何が起こったのかわからないままに転落。

 

メイディア「ぶぎっ!?」

 

 尻から落っこちて、無様にのたうちまわる。

 

メイディア「あががが…」

 

 一方、上のクロエは泥棒をやっつけたとばかりに得意げな笑顔。

 

クロエ「スゴイ音がしたみたい。よく見えないけど…ちょっとやり過ぎたかな? でも多少痛い目にあえばもうこりて泥棒さんなんてやめるでしょ。うんっ♪」

 

 窓の戸締まりを厳重にして手洗いへと向かった。

 

クロエ「♪」

 

 切ってしまったのが、自分の服だったことも知らずに…

 芝の上でもだえていたメイディアは尻をさすって目に涙を浮かべながらも立ち上がる。

 一度上を見上げて、縛り方がゆるかったかな? と、首をかしげる。

 ともかく事を急がねば。夕方のうちにくすねておいたスコップをかついで夜の中庭を走り抜ける。

 …が、それを偶然に目撃した者が一人。

 寝付かれずに窓の外をながめていたレクである。

 

レク「あれは…昼間の泣いてた女の子?」

 

 月夜の晩に金色の髪が映えて見えた。

 

レク「こんな時間にどうしたんだ?」

 

 念のために剣を携えて、そっと部屋を出て行く。

 昼間のこともある。

 ひょっとしたらまたあの男にしつこくつきまとわれているのかも…っ!?

 女の子は守らなくちゃ!

 ヒーロー気取りで後を追う剣士…まだ見習いのレク。

 自分の足音以外のもう一つの音を敏感に察知したメイディアがサッと植え込みに身を隠す。

 

レク「ねぇ、隠れなくてもいいよ。俺は君の味方だから……ホラ」

メイディア『…? あれは……

 

 記憶にある声と顔だった。

 思い出そうと頭の中の引き出しを探ってみる。

 レイオットと名前は知らないが、自分の足を手当してくれた紳士的な少年の姿がすぐに思い浮かび、その真ん中に遅れてもう一人の輪郭がボンヤリと……

 

メイディア『ああ、あのボケっとした冴えない方ね』

 

 うなづいて、茂みから顔を出す。

 

メイディア「ワタクシの味方をしてくれますの?」

レク「もちろんだよ。何も心配することは…」

 

 言いかけた相手にハイとばかりにスコップを持たせる。

 

メイディア「穴を掘るの。大きな穴。分かりづらい場所…そうですわねぇ…あっちの木々が沢山生えている辺りはどうかしら?」

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