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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 4-9

 さて。

 待ちに待った夜。

 二人は約束の場所で落ち合った。

 

レク「今日は何だか辛そうだったね、メイディ」

メイディア「こんばんは。…ところでメイディって呼ぶのはやめて下さる?」

レク「? なんで?」

メイディア「いくらお友達になったとはいえ、貴方とワタクシは身分が違うのですから」

レク「そっか…わかったよメイディ」

メイディア「………」

 

 不機嫌に腕を組んで片足を軽く踏み鳴らす。

 

レク「あっ、また言っちゃった ゴメン、メイディ…あっ またっ!?」

メイディア「…………もう…いいですわ」 ため息。

     「でも身分の違いはわきまえて下さい。いいこと? お友達だから“様”でなくてもいいケド“さん”で許してあげる」

 

 細目で軽くにらんでくる貴族の娘に友達でも身分は関係あるのかと平民でしがない加治屋の息子のレクは思った。貴族は大変なんだなぁなどとのんきに。


▽つづきはこちら

メイディア「さ、最後の仕上げを致しますよ♪」

レク「OK」

メイディア「じゃ、大変申し訳ないのですけれど、排泄物置き場からその中身を運んで来て下さる?」

レク「…は?」

 

 しれっと今、大変なことを言わなかったか、この人?

 

メイディア「うんっもうっ。どうしてこう頭の回転が鈍い方なのかしら?」

レク「ニ…ニブ…!?」 ガビッ!?

メイディア「排泄物をこの中に投入するのです」

 

 指を下に突き付ける。

 

レク「…と…投入って……っていうかコレ、何する穴なワケ?」

 

 何ゆえウ○コ!? ますます嫌な予感が濃厚になってゆく。

 

メイディア「落とし穴ですわっ♪」

 

 さもおかしそうに言うその目は悪意に満ちて燦然と輝いてい

 

レク「ええええっ!?」

メイディア「シッ! 声が大きい」

 

 相手の足を小さく蹴飛ばす。

 

レク「………」

 

 あわてて口を押さえる。

レク「ま…マズイって、そんなの」

 

 まさか自分がイタズラの片棒を担がされていたとは、知りもせずに一生懸命手伝ってしまった。

 

メイディア「いいのっ! ワタクシを侮辱したあのおチビさんを追い出すんだからっ!」

レク「おチビさん?」

メイディア「まぁっ! よくぞ聞いてくれました!!

レク「え? いや…まだ何も…」

メイディア「実はこれには深ぁぁぁぁ~いワケがありますのよ!」

レク「へえー…そうなんだ…」

 

 握にぎり拳を作って、力いっぱいに言うメイディアに対し、眉間に指を当てるレク。

 そろそろさすがの彼も頭痛を覚えてくる頃だった。大きくため息をつきたい。

 むしろ、もう部屋に戻りたい。

 

メイディア「話せば長くなりますけれど、でも聞いてちょうだい。語るも涙、聞くも涙、涙の物語ですのよっ」

 

 レクの腰に巻かれた長い布を自分の目尻に持っていき、涙をぬぐうマネをする。

 

レク「ソレ…俺の…」

メイディア「あるまじきことか、教師であるウチのクラスのヒサメ先生が」

レク『聞いてないし』

メイディア「初日の初対面からワタクシのコトをウーンコ呼ばわりしたのですわっ!」

レク「ウ…ウン…………」

メイディア「しかもゴールデンスーパースクリューグルグルグレイトタイフーンデンジャラスファイナルウンコと言い放ったのですっ! 皆さんのいらっしゃる前でっ!!」

レク「それはまぁ…豪快な…」

 

 被害妄想大爆発で“ゴールデン巻ぐそ”が悪化している。

 しかし、それほどにこきおろされたと感じるくらいに屈辱だったのだ。彼女にとっては。

 笑って済ませられる範囲ではなかったらしい。

 

メイディア「キィィ! 悔しいですわ~っ!!」

 

 手に取っていた布にかじりついて引き千切る。

……力の限り。

 

レク「ヒィィ!? ソレ、俺のだってば~っ!!」

 

 ビリビリビリッ☆

 食いちぎられて無残な姿に変わっていく、お気に入りの腰布。

 もうとりあえず叫ぶしかない。

 

メイディア「絶対にっ! 絶対に許さないんだからっ! 彼には本物のウ○コになっていただこうじゃあありませんのっ! 彼は黒髪ですから、おあつらえ向きですわっ! ブラックスーパーストレートググレイトデンジャラスハリケーンファイナルウンコって呼んで差し上げてよっ! オホホホホッ。ホーホホホホホッ!」

 

 ヒトサマの声には敏感にたしなめるクセして、自分の声はデカイ。

 

レク「うう…俺の腰布が…」

メイディア「というワケで、憎しみの(うたげ)っ! 復讐のプレリュードの始まりですわっ! このプロジェクトのおかげでお尻まで被害を被りましたし、こうなっては必ず成功させるしかありませんっ」

 

 まだ痛む尻をさすりつつ、ハリキるメイディアをよそに、レクはうなだれてしゃがみ込んでいる。

 

メイディア「あら? どうなさったの? 聞いておられまして?」

 

 レク、無言。

すでに応える気力も失せていた。

 

メイディア「ご気分でも?」

 

 背中をさすってやる。

 当然ながら、自分のせいだとは微塵も思っていない彼女に、レクはお願いだからそっとしておいてと言いたい気分だった。

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