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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 35-3

 尋ねられてニケは考え込んだ。

 シズカ=ヒサメという人間は…………?

 初日に着任の挨拶をした彼は内気を通り越して挙動不審な生き物だった。

 どこかおかしいこちらの言葉を操り、時々通じてなかったり、別の意味になっていてもわりかしスルー。

 生徒たちには教官というよりは友達のように扱われており、ちょっかいを出されやすい。

それに対しては逃げ回るだけで反撃の意志はまったくもって見られない。

 責任感と緊張感に欠けており、試験の日程を忘れて大騒ぎ。

 会議中には足をぶらつかせて落ち着きなし。

窓の外を見ては空想に浸っている様子。

 そんな彼が授業がないときに何をしているかと思えば、絵を描いたり人形を作ったり。

さもなければ、日がな一日ボンヤリして過ごす。

 空気を読むのが下手なのか常識がないのか、いきなり養成所敷地内に芋を植え、敷地内にから煙が上がったと行ってみれば、受け持ちクラスの生徒たちと焼き芋大会をしていたりする。

 図書室の上の教室にやってきては、首吊り人形をぶらんと窓際に落とすというとんでもないイタズラもしでかす。

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レイディ・メイディ 35-2

 糸車を挟んで老婆と少女が向かい合っている。

 窓から柔らかく射す太陽の光の輪の中で、あどけない顔をした少女が老婆に向かって何か話しかけていた。

 

 

「それはなぁに? どうしてクルクル回すの?」

「知らないのかね、お嬢ちゃん。これはね、糸を紡ぐための糸車さ」

 

 

 今にも糸車を回す音と他愛のない会話が聞こえてきそうだったが、気がつけばそれはよく出来た人形であった。

 窓辺には二羽の小鳥が二人の会話に聞き入っているかのように寄り添う。

驚くことにこれもまた側に寄らねば気がつかない程の精巧な作り物だった。

 

女王「好きなものを作ってごらんなさいって言ったら、こんなモノを作ったの。……ね、おかしいでしょ?」

ニケ「……変わり者ですから」

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レイディ・メイディ 第35話

第35話:糸車と13番目の魔女

 数日前のローゼリッタ城。

 女王に呼ばれたニケが王の間で片足をついて20年前の生徒に挨拶をする。

 

女王「お久しぶりです。先生はいつお会いしても変わらないのですね」

 

 呼び出しに応じてきた12、3歳の少年…………に見える高齢の白魔道士に向かい、女王はゆるやかに微笑んだ。

 

女王「ここは堅苦しい。散歩でもしながらお話しをしましょう」

 

 薔薇をモチーフにあしらった白銀の剣を手に玉座から立ち上がると数名の女官が後に続こうとした。しかし女王はそれを制してニケと二人だけの時間を作った。

 居城の前に広がる薔薇の庭園を歩いて楽しみながら、本題を切り出そうと女王が口を開く。

 

女王「早速ですが、娘は……クロウディアはどのような様子でしょう? 手紙は拝見しておりますけれど……この間も狂信者に命を狙われたとか」

ニケ「……はい」

女王「もう養成所も安全ではなくなったということでしょうか」

 

 今年17になる娘を持つ母の身でありながら、未だあどけない少女の面影を残した横顔が悲痛に歪んだ。

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レイディ・メイディ 34-11

クロエ「そーんなこと言ったって、怪我人には変わりないんだから。それに練習試合でしょ。自業自得っていうのもなんだかおかしいよ」

クレス「だって……」

クロエ「はい、失礼しまーす」

 

 尚も食い下がろうとするクレスを制して、隣のカーテンを開ける。

 

少年「…………アイツの言うとおりだ。いいよ、俺は」

 

 いたたまれなくなって先に口を開いた。

 

クロエ「そんなの私には関係ないもん」

少年「……………………」

クロエ「…………今、私に惚れそうだった?」

少年「……はっ!!?」

クロエ「うーん、今、私カッコ良かったかもーとか思って」

ステラ「バカ言ってないで早くしてあげなよ」

 

 ステラのツッコミが素早く入る。

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レイディ・メイディ 34-10

 レヴィアスが消えると前方から先ほどまで見舞いに来ていたメンバーがクロエを連れて戻ってきた。

 

リク「だから回復を頼みたいんだ」

クロエ「うん、任せて!!」

リク「それから、宿舎までは俺たちが運ぶけど」

クレス「俺“たち”!!?」

 

 反応して目を細める。

 

リク「女子寮までは無理だから、部屋にはアンたちと一緒に連れて行ってもらえるとありがたいんだけど」

クロエ「わかってるって♪」

 

 どうやら一度戻った彼らがメイディアのためにクロエを呼んできたようだ。

一緒に友人のステラもついてきている。

リクとクロエという最悪の組み合わせを見つけて、氷鎖女は素早く窓から外に逃れた。

 

氷鎖女『イジメられてしまう…………!!』 などと本気で考えて、さっさと逃げ出す。

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レイディ・メイディ 34-9

ミハイル「威張って言うことか。教官にはそれも必要だと聞いたがな。懲戒免職食らっても知らないぞ」

氷鎖女「じゃあ、黙ってておくれ」

ミハイル「あのなぁ」

氷鎖女「失礼するでござるよー」

 

 廊下に逃げて扉を閉めた。

幸い、本気ではないお小言は追ってこなかったので、のんびりと袖に手を突っ込んで歩きながら考え事をする。

 

氷鎖女「約一半年か」

 

 メイディアがクレスやリクに追いつけないと気が付くまでにかかった所要日数は。

 99%の黒薔薇候補生は入所して早々、現実に気が付いてあきらめたというのに、比べてずいぶんと遅いものだ。

 

氷鎖女『けど、そういうバカは嫌いじゃない』

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レイディ・メイディ 34-8

氷鎖女「ミハイル殿、すまぬが手ぬぐい……タオル貸して下され」

 

 担任教官は、保健医にタオルを借りると無造作にメイディアの顔に放った。

 顔が隠れたことでいくらか安心したのか、我慢していた涙が再びあふれ出す。

 

氷鎖女「人にはな。生まれながらの魔力容量の限界というのが決まっておって、こればかりはどうにもならぬ。これが大きい奴が恐らく魔術師としての才といっても良いでござろうな。……物覚えは遅くともどうにでもなろうからやはり最終的には器の差か。拙者が見たところ、手前は先の二人に比べて小さいように思える。あくまで未熟な拙者からの視点だが」

 

 申し訳程度に慰めが入ってはいたが、その言葉はずんと心に堪えた。

才能がないと言われたようなものである。

 

氷鎖女「ヤツラは確かに特別だ。才のない者が努力で補うことは無論できるが、限界もあろう」

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