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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 57-4

ラビア「……貴女は……病んでいたのですね?」
 
 あれほど軍隊を翻弄して暴れまわった魔女とは思えない、頼りない背中にそっと草を踏んで近寄る。
 しかし彼女は振り返らずに湖の水面をただ目に映している。
 
シレネ「ラビア、私はこのまま平穏に生きていたとしても、もういくばくもない」
ラビア「戻って……医者に……」
シレネ「病じゃない。先祖から受け継がれた呪いが、私を内から壊しているんだ」
ラビア「……呪い……」
シレネ「私は所詮、氷鎖女の子……幸せなど求めても結局、このザマ。このようなことになるのなら、早く、早く、呪いに取り殺されてしまえばよかったのに」
 
 苦しそうに笑う気配がした。
 

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レイディ・メイディ 57-3

嘆きと怒りに猛り狂って王を責め立て、彼女は刃を向けられた。
 
「この醜悪な化け物め!」
 
 王は知っていた。
 彼女に取り憑いた人面瘡の存在を。
 それを示して、化け物と呼んだ。
 この国を滅ぼそうとする魔女を殺せと兵を差し向けたのである。
 シレネの中で何か、大事なものが切れてしまった。
 ぷっつりと。
 それは奇しくも、何も知らされていない無垢な王妃から新たな生命が誕生した瞬間でもあった。
 出産の場に王宮賢者たちが呼ばれていたが、招待されたのは12人。
 13人目のシレネだけが呼ばれていなかった。
 理由は明確にはされなかったが、要するに生まれてくる子に害をなす恐れがあると見なされたからである。

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レイディ・メイディ 57-2

 だが、いくばくも経たない内にこの幸せの絵図に亀裂が生じた。
 王子が生まれたわずか1年後に、王妃の懐妊がわかったのである。
 未来の王として望まれた子だったのに。
 王妃の子が生まれれば、継承権は廃止されるだろう。
 シレネは自分の息子が用済みの物のように捨てられた気持ちになっていたたまれなかった。
 王妃の腹は日に日に大きくなり、比例するようにシレネの中の小さかった妬みの芽も大きく育ってゆく。
 あの腹さえ潰してしまえれば。
 死産であったなら。
 王妃がもう二度と子を生めない体になってくれたら。
 さすれば自分の子が立場を脅かされることもない。
 唯一の継承者として、人々にひざまづかれ、約束された幸せをつかみとることができるのだ。

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レイディ・メイディ 第57話

第57話:東から来た魔法使い
 その異国の女は美しかった。
 おかしな言い方かもしれないが、気味が悪いほど、美しかった。
 その女は口が利けなかった。
 いや、口は利けたが、女が操る言葉はこの大陸では何一つ、通用しなかったのである。
 密航して西の大陸に降り立ったその女は、当時まだ齢は12、3の小娘であったが、それでも充分に男を狂わせるだけの魅力が備わっていた。
 人の美しさを超越した、生まれもっての魔性。
 いくら穢されてもその透明な美しさが損なわれることはなく、また、いつまで経っても可憐な少女のようだったと言われている。
 子を産み、短い生涯を終える間際まで色あせる事なく、その存在はきらめきを放ち続けるのだ。
 言葉が通じず、また守ってくれる者もおらず、当初、彼女は男の間を流されるただ肉人形であった。

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レイディ・メイディ 56-12

メイディア「ダメなのに鍵を渡すなんて………ワタクシを試しましたのね、お人が悪い」
氷鎖女「そうではない。別々にしておくと拙者、忘れてなくしてしまうからでござる」
メイディア「一緒にくっついていたら、退屈だし見たくなってしまいますわ」
氷鎖女「うーむ。別々にして渡せばよかったか」
メイディア「……いえ……渡されてしまいますと別々にしてあっても同じなんですけど……」
氷鎖女「拙者、自分で管理できないもん」
メイディア「…………」
 
 わかる気がする。
 何しろ、大事な試験の知らせも生徒に伝え忘れてしまう困った先生なのだ。
 
メイディア「そもそも、どうして入ってはいけない部屋ですの?」
氷鎖女「さっきのように槍が飛び出す仕掛けになっているから」
メイディア「この部屋は平気でした」
氷鎖女「ここは完成間近のあの人形に悪さされると困るから」
メイディア「しっ、しませんわよ!」

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レイディ・メイディ 56-11

メイディア「んもーっ! んもー、んもー、んもぉっ!!!
 
 地団駄踏む。
 
氷鎖女「ブッフー♪ あんの驚きっぷりったら……プププッ」
メイディア「今日から戻らないとおっしゃってたではありませんかっ!!」
氷鎖女「いやな、この部屋の仕掛けの解除を忘れておった気がしてな」
メイディア「気がしてではありません! 危うく死に至る所でしたわっ!!」
 
 槍を指差す。
 

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レイディ・メイディ 56-10

メイディア「よ、よし……」
 
 上手く行ったことに感謝して、隙間から体を滑り込ませた。
 その瞬間!
 床から天井から数本の槍が勢いよく飛び出して来て、危うく串刺しになる所であった。
 音を鳴らさずになどという考えはすでに吹っ飛んでいた。
 悲鳴が屋敷中に響き渡る。
 
メイディア「きゃああああっ!??」
 
 転がって難を逃れたメイディアは室内にもう一つあったドアに向かって走った。
 物音がしたのと反対側に位置している。
 ドアを開ければ外だ。
 外観を未だ見て回っていないメイディアだったが、ここにドアがあるということは、2階から出入りできる階段がついているのだと見当をつけた。
 
メイディア「早く、早く逃げなきゃ!!」
 

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