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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 56-11

メイディア「んもーっ! んもー、んもー、んもぉっ!!!
 
 地団駄踏む。
 
氷鎖女「ブッフー♪ あんの驚きっぷりったら……プププッ」
メイディア「今日から戻らないとおっしゃってたではありませんかっ!!」
氷鎖女「いやな、この部屋の仕掛けの解除を忘れておった気がしてな」
メイディア「気がしてではありません! 危うく死に至る所でしたわっ!!」
 
 槍を指差す。
 

▽つづきはこちら

氷鎖女「それはすまなかったでござるな。よもや入るなと言った部屋にあのメイディア様が行こうハズがないと思ったのでござるよ」
メイディア『ギク!』
氷鎖女「でも信用していなかったわけではござらんがぁー……ひょっとして、もしかして、万が一、メイディア嬢が誤って踏み込んで、串刺しになっておるといかぬと思うてな~あ」
メイディア「うっ」
氷鎖女「一週間後に戻って腐乱死体があったら嫌だし」
メイディア「……………」
 
 その腐乱死体にもうちょっとでなるところだったと咽まで出かかったが、黙って入ってしまったので、やり返せない。
 
氷鎖女「それで今日だけは一応、戻ってみた」
メイディア「家に余計なことをしないで下さい!!」
 
 横開きのスライド式ドアがあるわ(しかも全てではなく何故か一つだけ)、槍は出てくるわ、ドアは偽物だわ……
 
氷鎖女「だって一人でここに暮らしているといじりたくなってくるんだもの」
メイディア「とんでもないですわ!!」
氷鎖女「ところでどうしてここにいるのかなぁ? おっかしーなぁ?」
 
 わざと部屋を見渡す。
 
メイディア「そ……それは……えっと……」
氷鎖女「青いヒモの鍵と赤いの、間違っちゃった?」
メイディア「ご………………………ごめんなさい……」
氷鎖女「よろし」
 
 二人、カラクリ部屋を出る。
 
メイディア「そ、そうでしたわ。もうこの騒ぎで逃げちゃったと思いますけど、泥棒が……!」
氷鎖女「泥棒? ……ま、確かに人気はないし入りやすそうだが……しかしそれならば、人形が反応しておるであろ? 動いた形跡はなかったでござるぞ」
メイディア「でも開かずの間で物音が……確かに誰かがおりましたの」
氷鎖女「開かずの間?」
 
 廊下に出たメイディアが隣のドアを指し示す。
 
氷鎖女「ああ」
   「あそこには誰もおらぬ」
メイディア「いました、本当です! 信じて下さい」
氷鎖女「家鳴りでござるよ」
メイディア「家鳴り?」
氷鎖女「家が古いから、きしんで静かにしていると聞こえてくるだけでござる」
メイディア「そ……そうでしょうか? でも中を確かめてみては?」
氷鎖女「その必要はない。中にあるのは人形だけで、金目の物などないしな」
メイディア「でもっ」
氷鎖女「ないと言うたらないわ」
メイディア「……………」
氷鎖女「誰かが一歩でも入れば、人形が反応する。心配は無用でござる」
メイディア「……………」
氷鎖女「いいの。あそこは何もいないの」
メイディア「………わかりました」
     『絶対にいたもん……! でもどうやら公爵ではないみたい。先生が戻ってきていなくなったのだから、泥棒に違いないわ。次はやっつけてやる!』
 
 恐怖に陥れられて恥をかいた雪辱はしなくては。
 
メイディア「もー! それにしてもどうしてあの部屋は危険なのです? 偽物ドアとかホント、やめて下さらない? おかげでワタクシ……」
 
 突き指をしてしまった。
 ズキズキと痛む指をさする。
 
氷鎖女「泥棒が入ってだまされたら面白いと思うてな」
 
 1階に降りる階段に向かう。
 これから晩の食事を作らなくては。どうせメイディアがやっているとも思えない。
 
メイディア「ねぇ、先生」
氷鎖女「なんぞ?」
メイディア「クロエを愛していらっしゃるの?」
氷鎖女「……ハァ?」
 
 足を止めて振り返る。
 
氷鎖女「唐突でござるな? どこからそんなトンチキな回答が導き出されたのか、ゼヒとも数式を伺いたいものだ」
メイディア「だって……ウフフ」
氷鎖女「……?」
 
 1つ目の青鍵の扉を開いて中に入る。
 
氷鎖女「あっ、これ。その部屋は……」
 
 相変わらず一方を向いているドレス姿のクロエ人形の前にひざまづき、メイディアはすそを手にとって自分の唇までもっていった。
 
氷鎖女「?」
メイディア「おお、我が愛しの姫君、クロエよ!」
氷鎖女「……………」
メイディア「拙者の切なる想いを聞き届けておくれ」
氷鎖女「……………」
 
 近づいて、メイディアの背中を軽く蹴飛ばす。
 
メイディア「イッタ! 何をなさるんですか!?」
氷鎖女「何をなさるはこちらのこと。コレにイタズラ書きなどしてはおるまいな? まだ完成しておらぬのだから、むやみに触ってはいかぬ」
メイディア「しておりませんとも! 先生の大事な恋人ですもの」
 
 頬を両手で包んで、クネクネ。
 
氷鎖女「確かに納入までは大事だが、蝋人形が恋人では立派な変態ではないか」
   『も~……だから嫌だと言ったのに、ニケ殿ぉ~』
 
 見られれば余計な誤解が生じるのは必至だ。
 
メイディア「大丈夫です! ワタクシ、口が裂けてもしゃべったり致しませんからっ!」
氷鎖女「入るなと言った部屋を物色した奴の言うことは信用ならんわ」
 
 だいたい、口が裂けなくとも、しゃべる相手自体がいないではないか。
 
メイディア「うっ……で、でも、先生もいけないんですのよ」
氷鎖女「なんで?」

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