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レイディ・メイディ 56-9
2008.07.30 |Category …レイメイ 55-57話
年越しの晩に、母親に毒を盛られて殺された少女は。
父親も知っていたはずだ。
見て見ぬふりをした。
するとやはりあの兄が氷鎖女ということか。
それとも全く別の……?
メイディア「ううん。確かにこの絵だった……アレ?」
抱いていた絵をよく見てみれば、どの人物も顔が違う。
いや、絵の中の人物にはどれも顔がなかった。
髪や影に隠れていて表情が読み取れないようになっている。
温かく優しい雰囲気は、人物の表情よりも絵の全体から醸し出されているものだったのだ。
▽つづきはこちら
メイディア「………………」
絵をもう一度、よく見てから元の場所に戻す。
メイディア「…………他の部屋を探しましょう!」
わざと大きく明るい声で言うと、手をパンとたたき合わせた。
気分を切り替えて仕切り直しだ。
メイディア「クロエ、クロエ~♪ ラブラブクロエ~♪ 妄想クロエ~♪」
わけのわからない節をつけながら、次の部屋の鍵を回す。
青いリボンの鍵を。
メイディア「アレ、開かない?」
ノブを回したが、何かに引っ掛かったように開かない。
ドアと壁をつなげるようにして何枚も貼り付けられていたのである。
メイディア「むー……」
扉自体にもあちこち同じように貼り紙が。
中の1枚を取り外して、メイディアは縦10cm強、横5cm弱の貼り紙を目の前にかざした。 何か模様と文字が描かれていたが、読めない。
異国の文字で立ち入り禁止とでも書いてあるのだろうか。
いやいや。そんなはずはない。
わからない言葉で禁止されても読めなかったら意味がないのだから。
メイディア「ここは開けたらいけないかしらね、さすがに」
やめて次の部屋に行こうとしたとき、内側から音があった………気がした。
メイディア「!?」
「……だ……誰?」
問いかけて口を閉じる。
返答を待ったが、応答はない。
気のせいかと思い始めたころ、また微かに気配があった。
メイディア「まさか……」
ダンラック公爵?
それとも泥棒?
メイディア「……………」
泥棒ならまだいい。
自分は魔法使いだ。
やっつけてしまえる。
だが、あの化け物公爵だったら?
メイディア『先生………助けて……』
脈が早くなって、冷たい汗が吹き出した。
耳をすます。
……何も聞こえない。
音を立てないようにそっと後ずさり。
もう探索どころではない。
自分の吐く息で位置が知られてしまうのではないかと気になった。
それほど呼吸が荒くなっていた。
カタ…
聞こえた。
小さな、物音。
誰もいないはずのこの屋敷で。
貼り紙だらけの部屋の内側から。
心臓が激しく鼓動を刻む。
他の部屋に隠れようか。
それとも1階に避難しようか?
眼球が落ち着きなく辺りを見回す。
廊下の突き当たりに現在メイディアは立っており、1階に下りるためには階段が逆側だ。
突き当たりから2番目の部屋で物音。
逃げるならば、一番近い部屋の中だが、ここは最後の青鍵の扉。
鍵を開ける音が聞こえてしまったら?
けれどあの誰かの気配がする部屋の前を通り抜けるのも危険に思える。
メイディア『落ち着いて、落ち着きなさい。平気。アレは公爵じゃない。あの公爵なら、とっくにワタクシを見つけて襲いかかって来てる。何もない部屋にいつまでもいるハズないもの』
微かな気配は部屋の中を歩き回っているようだ。
メイディア『泥棒だわ。黙ってやり過ごして、出て行ったところで魔法を食らわせて……』
真っ青になりながら、頭の中でシミュレーションする。
音が鳴らないように気を配りながら、最後の鍵を回した。
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