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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 56-10

メイディア「よ、よし……」
 
 上手く行ったことに感謝して、隙間から体を滑り込ませた。
 その瞬間!
 床から天井から数本の槍が勢いよく飛び出して来て、危うく串刺しになる所であった。
 音を鳴らさずになどという考えはすでに吹っ飛んでいた。
 悲鳴が屋敷中に響き渡る。
 
メイディア「きゃああああっ!??」
 
 転がって難を逃れたメイディアは室内にもう一つあったドアに向かって走った。
 物音がしたのと反対側に位置している。
 ドアを開ければ外だ。
 外観を未だ見て回っていないメイディアだったが、ここにドアがあるということは、2階から出入りできる階段がついているのだと見当をつけた。
 
メイディア「早く、早く逃げなきゃ!!」
 

▽つづきはこちら

 悲鳴は完全に隣にも聞こえただろう。
 勢いよくノブに手を伸ばして、メイディアは、
 …………………突き指した。
 
メイディア「イッタァー!!」
 
 とっさに手を引っ込める。
 
メイディア「な、なに!?」
 
 もう一度、ノブに手をかけようとして、気が付いた。
 
メイディア「ウッソ!? どうしてそういう余計なことをするのよ、バカァッ!!!」
 
 怒りのあまりにその“絵”を蹴飛ばした。
 人をくったこのドアは、それ自体が絵だったのである。
 彼女が逃げ場として選んだのは、外へ通じる階段じゃない。ただの壁だったのだ。
 壁に描かれた、ドアの絵。それにだまされた。
 
メイディア「もうっ!!」
 
 これで死んだら呪ってやると毒づいて、メイディアは窓へ走り寄った。
 2階から飛び降りるつもりである。
 カーテンを開いて、閉じたままの窓を開こうとし、メイディアはまたしてもだまされた。
 これまた絵だったのである。
 
メイディア「ちょっと!! これもなのっ!? もーっ!!」
 
 暗い中で必死になって逃げ道を探していると今度は1階で音がした。
 しかも今度は完全に玄関の開く音だ。
 ベルがちりんと鳴った。
 
メイディア「ああっ!! 神様!!」
 
 しゃがみこんで神に祈る。
 
メイディア『ワタクシが約束を破って青い鍵の誘惑に負けたからですわ! ごめんなさい、どうか許して!!』
 
 リクに言ってはいけなかった秘密もバラしてしまっている。
 公爵の嫁になるくらいなら、秘密を伝えて首を落とされてもいいと手紙を書いたときには思っていたからだ。
 今が裁きのときなのかもしれないとメイディアは本気で考えて震えた。
 
メイディア『どうかどうか! お利口にしますから、もうイタズラしませんから、ワタクシを公爵の元に連れ戻さないで!!』
 
 1階から、ぎしぎしと階段をきしませながら、“何か”がやってくる。
 確実に距離を縮めて、左のドアから一つずつ確認をしているような物音が聞こえてきた。
 
メイディア『ああっ! お父様、お母様! ばあや………ヒサメ先生!!』
 
 とうとう足音は最後の扉の前で止まった。
 
メイディア「!!」
 
 心臓が早鐘を打つ。
 気のせいではない。そこに誰かがいる。
 扉のノブが回った。
 ドアは少し開いた所で一度止まり、どうすることもできずにしゃがみこんでいるメイディアをあざ笑うかのようだった。
 隙間から、何かがこちらの様子を伺っている……?
メイディアは息を止めた。
 
メイディア『もうダメ!!』
 
 隠れる場所をさがす間もない。
硬く目を閉じる。
 じらすようにしてほんの少しの間をおいて、ドアが大きく開かれた!
 
メイディア「きゃあああああ!!」
?「ワァワァワァー!!」
メイディア「きゃあぁ………あ?」
?「ヒヒッ♪」
メイディア「…………………」 ひく…
 
 ドアを勢いよく開き、両手を挙げて中に飛び込んだのは……………家主だった。
 
氷鎖女「だぁーまされおったなァ!?」
 
 ヒトを驚かせて、それはもうキャッキャッと大喜びである。
 
メイディア「…………………」
 
 ぴょんぴょん跳ね回る姿にだんだん腹が立ってきた。
 涙を浮かべて、氷鎖女をポカスカと叩く。
 
メイディア「なんですか、なんですかっ!! 貴方という人はっ!! このっこのっこのっこのっ!!!」
氷鎖女「あっ、これっ! ぶってはならぬ、ぶっては…!! 拙者が可哀想でござろうっ」
 
 頭をかばって腕を上げる。
 
メイディア「可哀想なのはワタクシですっ!!」
氷鎖女「イジメてはいかぬっ。はわわ」
メイディア「どっちがイジメですかっ! こんなイタズラばっかして………一体、貴方はおいくつっ!?」
氷鎖女「……22歳」

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