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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 56-9

 年越しの晩に、母親に毒を盛られて殺された少女は。
 父親も知っていたはずだ。
 見て見ぬふりをした。
 するとやはりあの兄が氷鎖女ということか。
 それとも全く別の……?
 
メイディア「ううん。確かにこの絵だった……アレ?」
 
 抱いていた絵をよく見てみれば、どの人物も顔が違う。
 いや、絵の中の人物にはどれも顔がなかった。
 髪や影に隠れていて表情が読み取れないようになっている。
 温かく優しい雰囲気は、人物の表情よりも絵の全体から醸し出されているものだったのだ。
 

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レイディ・メイディ 56-8

母「ああ、ああ。こんなに冷たくなって。手も真っ赤」
 
 母親は口をぱくぱくさせて、メイディアの耳に聞き覚えのない言葉を発していたが、何故か意味は正確に伝わってきた。
 娘の赤紫に凍えた手を両手で包んで温める母親の愛にメイディアは胸を打たれた。
 
メイディア「こんなお母様の元で育つのはきっと幸せに違いないわ」
 
 嬉々として声に出したが、誰もこちらを見向きもしなかった。
 メイディアから見えていても、相手のいる場所に存在してはいないのだ。
 
母「今日はな、大晦日だからほら、特別に白いご飯。たんと食べて大きくなり」
 

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レイディ・メイディ 56-7

 ヒトサマの荷物を残虐にも荒らす暴君は、恋心を綴った何かブツを求めて別のものに行き当たった。
 また絵画だ。
 
メイディア「そうね。絵にしている可能性も高いですわね」
 
 謎の多い教官・氷鎖女の秘密を暴く誘惑に夢中になっているつかの間、メイディアは恐怖心を忘れられた。
 無意識に恐しい記憶から逃れようとしているのかもしれなかった。
 ……やっていることは、決して褒められたものではないが。
 絵はやはり他の部屋にあったものと変わらず、クロエらしき人物は見つからない。
 代わりにだまし絵などが登場して注意はあっと言う間にそちらに向いてしまった。
 続けて見つけたのは、
 
メイディア「家族……?」
 

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レイディ・メイディ 56-6

青いリボン「先生のこと、知りたくない? 一緒に暮らしているのに顔も見せてくれないなんてヒドイよ。メイディアはもう先生しか頼れる人がいないのに他人行儀で」
 
 これを聞いたら、氷鎖女は間違いなくこう言うだろう。
 行儀じゃなくて他人なのだと。
 けれどメイディアは面白くなかった。
 2年間、顔を1度も見たことがない。
 365日×2回もいて。
 今なんか、同じ屋根の下なのに養成所にいるときと態度が一緒だ。
 メイディアちゃんは可哀想なのだから、もっともっと優しくしてくれてもいいのに。
 またまた身勝手な理屈が沸いて出た。
 
メイディア「そうだわ! ヒサメ先生の秘密を握ってやるっ!!」
 
 ヒトサマにやっかいになっておいて、地位をなくした令嬢はとんでもないことを思い立った。
 

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レイディ・メイディ 56-5

 赤いリボンの鍵が合う部屋だけ見て回った。
 この屋敷に来て2カ月が経ったが、自分にあてがわれた部屋と台所、風呂場、トイレ。
 その4カ所の行き来しかしていない。
 他の部屋にもそろそろ興味が向いて来たところだ。
 思い切って一つ目の扉を開くと、人形と絵とが乱雑に置かれていた。
 
メイディア「……なんてキレイ…」
 
 描かれた森の中の風景を手に取り、メイディアはうっとりと眺め入った。
 森の開けた場所に湖。水面に映り込むもう一つの涼しげな風景。
 葉の間から木漏れ日がやわらかく、絵を見ているだけで森の薫りが漂ってきそうだ。
 こんな風景の中を裸足で駆け回って遊びたい。
 そんな気持ちに応えるかのように小さく風景に溶け込んで人も描かれている。
 手をつないだ幼い兄妹だ。
 兄は籠に木の実を摘んで、妹は花を束ねて持っている。
 彼らはメイディアの希望を絵の中で叶えてくれていた。
 

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レイディ・メイディ 56-4

 公爵の元から助け出されたメイディアは2ヶ月経った今もあの夜の恐怖から逃れられていなかった。
 夜中に幾度となくうなされては騒ぎ、怖いと言っては氷鎖女の部屋のドアを叩く。
 さすがにドアの前でというのはなくなったが、ロープは二人の部屋をつないでいる。
 お陰で氷鎖女は休まる暇が無い。
 朝は休んでくれと袖を引く。無理に振り払って養成所にいき、夕方戻ってみれば、やはり独りが怖いと泣いている。
 よくもまぁ体内の水分が涸れないものだと妙な感心をしてしまうほどだ。
 
氷鎖女「寂しければ、部屋の人形で遊んでおれ」
メイディア「その人形が怖い!」
氷鎖女「だからそちらの部屋は片付けたじゃん」
メイディア「ううう~っ」
 
 下唇を噛んで徹底抗戦の構えだ。
 

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レイディ・メイディ 56-3

カイル「リクー」
リク「なに?」
カイル「あんまりしつこく先生イジメてると嫌われっぞー?」
 
 見かねてカイルが声をかける。
 
リク「平気だよ」
 
 軽く応えて、
 
リク「はい、お手」
氷鎖女「!?」
 

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