HOME ≫ Entry no.609 「みやまよめな:48」 ≫ [614] [613] [612] [616] [610] [609] [611] [608] [607] [606] [603]
みやまよめな:48
2008.06.04 |Category …みやまよめな
社『……しまった!! 誰かに言い付けて私のいない間はにぎりつぶさせておくんだった!!』
椿「ええ、ですから、お返事はまだ返していないようなんですけど…………」
社「そ……そうか……。まぁ、姉上の名は実際に戦場に出ている私よりも知れ渡っているからなぁ……」
椿「ドンピシャリの占い姫ですからね~♪ しかも美人だし」
社「うむ……。しかし、殿方も気の毒なことよ。いくら求婚したところで、応じる姉上ではないからな」
椿「え、でも……それが……」
社「ん?」
椿「……都様も悪い気はしてないようですよ? ……熱烈な文や贈り物も届いているようだし、女としたらクラリときますって」
社「!! そ……そうなのか……? あ、そう……そいつは意外だ……ははっ、あの姉上が……ね」
空々しくとぼけてみせるが、内心、穏やかではない。
▽つづきはこちら
椿「それにもうとっくにお年頃ですもんっ!! それに……猛さんが亡くなられてしばらくになりますし……。お気持ちを慰めたいっていうのもあるんじゃないですか?」
あの事件から、早二年が経過しており、都19歳、社18歳になっていた。
社「それなら私がいる」
椿「……だって……でも……社様は、弟君じゃありませんか……」
遠慮がちに。
社「ッ!! それは……そうだが……」
ぐうの音も出ない。
椿「それよりっ、アタシも年頃なんだけどな~?」 スリ寄る。
社「いっ!? あ……そう……そうだったね、椿も17……。嫁に行ってもおかしくない頃だ。うんうん」
他人事のように。
椿「…………………」 ジト目……。
社「…………………」 目をそらす。
椿「……社様……。もしかして、前にアタシに言ったことをお忘れじゃあないですよね?」
社「いや……その……」
椿「万次さんが言ってました。アタシはからかわれただけだって。……そこんトコ、どーなんですかっ!?」
社「……えっと……」
『……マズッたな……』
椿「………………………」
上目使いにニラんでくる。
社『……邪魔になってきた……』
「ああ、うん、そうそう……」
椿「何が“そうそう”なんですかぁっ!? ハッキリして下さいよ~!!」
社「戦から戻ったばかりだ。今はその話は勘弁しておくれよ」
あわてて逃げて、都の部屋を目指す。
社『? 誰かいるのかな?』
中で都以外の気配を感じた。
社「……失礼します。社にございます」
都「あら、お帰り。ごくろうでした」
りんとした声が戻ってくる。
障子を開くと、そこには………
社「おや? 今、そこに誰かおりませなんだか?」
都「………………いいえ。誰も」
社「いえ……確かに」
都「いないと言うたら、いない。私一人です。……どうしたのですか、社?」
社「……そう……ですか……」
それでもまだ不審そうに中を眺める。
が、本当に何もないようなので考えるのをやめた。
社「それより姉上」
都「なんです?」
社「私がいない間に各地方からの殿方からの文や貢ぎ物を受け取ったりしたそうですね?」
都「……ええ。それが何か?」
社「そのような物、送り返してしまえばいいのに……」
都「なんだ、お前までそうやって、私を縛り付けようというのですか?」
社「いっ……!! いえっ!! めっそうもございませんっ!! ただ……私は…………」
うつむく。
社『……くそっ!! 姉上め……!! とうに私の気持ちを知っていながら……』
悔しくなって唇をかみしめる。
実際にまぐわってくれたのは、父を殺した褒美としてただの一度きりである。
それ以降は頼み事の際にそれらしい態度をとっておきながら、後で知らん顔。
……完全に手玉にとられていた。
都「……ふふっ」
そんな社の様子を見て、楽しげに目を細める。