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みやまよめな:47
2008.06.04 |Category …みやまよめな
5,
葬儀が行われ、社が正式に当主としての座に着いた。
“下手人”はただちにひっとらえられ、新当主じきじきに処刑。
都は館から自由になり、元の懐かしい家に戻って来た。
庭のはき掃除をしながら、
椿「こんなこと言ったら、アレだけどさ。よかったよねぇ、お館様亡くなられて……」
庭木の手入れをしながら、
万次「めったなこと言うもんでねーよ、椿ちゃん」
たしなめる。
椿「だってさ、これでもう都様がいじめられることもないし、こっちに帰ってこれて万々歳だよ」
手を止める。
万次「そううまくいくもんかね?」
こちらはそのまま仕事中。
▽つづきはこちら
椿「何がさー? 万次ってばいっつもあたしの言うことにケチばっかつけんだから」
万次「……だってよ、お館様、殺したの誰の仕業だと思ってんだ」
椿「下手人は捕まったろ?」
万次「さーてね。……お館様が死んで……誰が一番得をしたか……。よぉ~く考えてみるこったな」
ようやく手を止めて椿の方に向き直る。
椿「………………………………」
少し考え、あっと驚く。
椿「……よしなよっ。どっちがめったなことだいっ!?」
万次「ウチの若様はさ、思い詰めると何をするかわかんないところがあっからなぁ」
椿「やめなって!!」
万次「こりゃ、忠告だぜぇ? 椿ちゃん」
また枝の伐採(ばっさい)を始める。
椿「何?」
万次「あの方は、都様しか見ちゃいねーんだ」
椿「……………………」
「ねぇ……万次」
万次「あ~ん?」
椿「アンタ、ひょっとしてだけど…………」
万次「?」
椿「あたしに気ィあんのかい?」
万次「……ハ!??」
ガッターンッ!!
ハシゴから落ちる。
椿「あ~っ!!? 誰かーっ!! 万次さんが落っこっちゃったよーっ!!」
まさか落ちると思っていなかったので、あわてて助けを呼びに行く。
万次「……きゅうぅ~……☆」 目を回す。
貢ぎ物
1,
館から出た都は、父が生前作りかけていた城の建設を社に急がせた。
自分はそこに住みたいと。
そして、占ってやるから領土を広げて来いと戦に駆り立てる。
社は不審がったが、結局、姉の意のまま……。
都は今まで不自由していたぶんを取り戻すかのように好き放題を始める。
国中を荒らし回り、破竹の勢いで領土を広げて行く。
占いはいつもにも増してピタリと的中。
欲しい物は全て手に入った。
そうして気のおもむくまま、欲するままに。
貪欲の限りをつくす。
社は言われるがままに戦に出て、その脅威の力をふるう。
いつしか猛のように吼(ほ)え、人の血肉を好んで貪る(むさぼる)野獣と化していく社。
時に自分の所業に気づき、嫌悪にさいなまされるものの、戦場の空気を吸うと途端、自制はきかなくなる。
そのときには決まって、背中の古傷がうずくのだった。
戦を終え、戻ってくる社を椿が迎える。
椿「社様っ!!」
社「ああ、椿……。ただいま」
椿「お帰んなさいませっ♪」
社「こちらは変わりなかったかい?」
椿「ん~……、変わりっていうか……。でも、大変ですよ、社様」
社「どうした? 姉上に……何か?」
椿「何か……ってコトはないんですけど……」
社「?」
椿「何だかまたお嫁さんに欲しいって、使者が至るところから来ているんですよぉ。そりゃあもぅ、いっぱい!!」
今までもたくさん来てはいたのだが、都がそれを知る前に父がすべて断っていた。
社「ナニっ!!? 当主は私だぞ!!?」