HOME ≫ Entry no.617 「みやまよめな:54」 ≫ [622] [621] [620] [619] [618] [617] [615] [614] [613] [612] [616]
みやまよめな:54
2008.06.06 |Category …みやまよめな
社「ただの、水晶だったようですな?」
これを持ってきた求婚者を振り向く。
周囲もクスクスとせせら笑っている。
求婚者1「くっ!!」
社「かようなまがい物で、占い姫をめとろうなどと……。申し訳無いが、お引き取りいただこう」
都「次の方……」
次に差し出されたのは、金のウグイス。
しかしこれも鳴かぬ作り物であったり、金粉を塗っただけのただのウグイス。
当たり前だが、金のウグイスなど存在しないのだから用意できるハズもない。
求婚者2「これが鬼の角でござる」
女官が受け取り、都に渡す。
▽つづきはこちら
都「……ふぅん……」
しばらく手にとって考え、
都「鬼の角を頭につけると、その者は鬼と同じになるといいますね?」
社「……試しますか?」
都「……面白いな。ちょうど、うちでの小槌もあることですし……」
社「……はい」
また罪人がつれてこられる。
頭に“鬼の角”と称される物があてられ、“うちでの小槌”と称された槌を持った大男が近づく。
罪人「何をする気だ!? この……っ!! 鬼姫めっ!!」
社「やれ……」
大男「……あい」
社の合図を受けて、大男が槌を振り下ろす。
罪人「ぎゃああっ!!!」
釘を刺すように、頭蓋骨に“角”を埋め込まれる。
求婚者たち「……ッ!!」
やがて罪人は痙攣(ケイレン)しながら絶命。
社「……………鬼に、なりませんな?」 しれっと。
そうして一人、二人と次々婿候補から外されていく。
都「まぁ、これはなんと見事な織物なのでしょう」
うっとりと“天女の羽衣”の手触りを楽しむ。これが最後の宝物。
求婚者3「それこそは他に類を見ない雅な織物!! いかがかな、気に入っていただけましたか姫?」 自信満々。
確かにこれほどの物は見たことがない。
天女の羽衣と言われて納得してしまいそうな出来。
しかし…………
都「これ、そこの……」
側に控えていた巫女の一人を呼び付ける。
都「そなたにコレを差し上げましょう」
巫女「えっ!? よろしいのですか!?」
眼が輝く。
都「いつもお前には世話になっておりますからね。…………………社が」
巫女「……え?」
社「……は?」
求婚者3「姫!! それがお気に召さないとでもっ!?」
都「いいえ。そのようなことはありませんが、この者には色々、世話になっておりますので」
有無を言わせぬ、威圧的な微笑みを送る。
求婚者3「……ッ」 たじろぐ。
社『あの者の世話になど……私はなっていないぞ??』
巫女に向かい、
都「気に入りましたか?」
巫女「はあぁ~……ありがとうございますっ!!」
都「貴女にとても似合っております」
巫女「神子様……」 感激。
社「…………………」
腑に落ちない表情。
社『今度は何を…………考えておられる?』
都「それはね、天女の羽衣だとか。天女の羽衣は天女が天に帰るときに使う物なのですよ」
巫女「……はい?」
嬉しそうな顔が固まる。
都「………………………飛んでみて」
やはり、笑みを絶やさない。
巫女「……ッ!!」
完成間近の城の天辺に巫女が立たされ、都、社、求婚者たちが地上から見上げている。
巫女「……あああああ……」
下を見て、目眩を覚える。