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みやまよめな:57
2008.06.07 |Category …みやまよめな
声「匂うぞ、匂うぞ。隠れても無駄だぞぅ」
声の主は確かにいる!!
お堂の周囲を回り出した。
足音からして、裸足。
そして、そうとうの大入道であろうことが容易に想像できた。
玄米「バウバウバウバウッ!!!!」
社『しまった!! 玄米が外に!!』
声「童の匂いがするぞ、男の子(おのこ)の匂いがするぞぉ~!!」
社「………ッ!!!!」
息を呑む。
戸を開けようとしたが、体は動かなかった。
全身が泡立つ。
▽つづきはこちら
社「………はぁ……はぁ……」
恐怖のあまり、呼吸が速くなる。冷たい汗が落ちる。
声「……………………」
社「…………………ッ」
刀と人形をにぎりしめた。
まだ玄米は激しく吠えている。
社『……ん?』
ふいに握り締めた人形に注意がいく。
社「……血?」
…………………人形は、右目から血を流していた。
社「ッ!!」 目を見開く。
「うわあぁぁっ!!!!」
思わず声をあげ、人形を放り出して叩きつける。
声「!!」
「みぃつけたぁ~」
社「!!!!」
格子越しに巨大な鬼の影が間近に迫る。
社「うああああああぁぁぁーっっっ!!!!」
2,
……………………自分の悲鳴で目が覚めた。
心配そうに覗き込んで、
椿「大丈夫ですかぁ~?」
社「……はっ……はっ……」 息を切らせる。
「つ……椿……?」
気づけば自分の部屋の布団の中。
続いて万次丸も顔を覗かせる。
万次「どうしちまったんですかい?」
社「万次……」
「私は……一体……!?」
万次「そりゃあ俺っちが聞きたいですよ」
椿「あんだけ七つ参りのお堂には行ったらダメだって言ったのに、ちっとも聞きゃしないんだから社様は~」
母親のように叱る。
社「……では……アレは……」 夢では……?
そこへ都がつと障子を開けて入ってくる。
社「!! 姉上!!」
上半身を起こす。
都「……心配しましたよ、社」
社「………………」
人形を思い出す。
都「呼んでもいないから椿に聞いてみれば、御神崎様のお堂に行ったかもしれないというではありませんか。急いで追ってみれば、人の顔を見て悲鳴を上げて気を失うし……」
社『え?』
都「どうかしていますよ」
社「姉上が私を迎えに?」