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みやまよめな:58
2008.06.08 |Category …みやまよめな
都「そうですよ。お堂に入り込んでいるものだから、外から覗いてみたのです。そしたら貴方が……」
社「……覗いたのは……姉上? 鬼ではなく……?」
都「鬼?」
椿「んっま!! しっつれい~っ!! 社様っ!! 女子になんてコト言うんですかっ!?」
万次「ははははっ!! お堂の中で昼寝して寝ぼけたんじゃないスかぁ?」
都「……………」
椿「笑いごっちゃないでしょーっ!!」
社「……………」
「姉上……」
都「何です?」
社「姉上の人形が……」
都の右目を見る。
▽つづきはこちら
都「……人形が?」
社「人形右目から血が……」
椿「……え?」
万次「……血?」
都「椿、万次。……お下がり」
椿「あ……え……」
万次「あい」
「ホラ、椿ちゃん、行くぜ」
椿「うん……」
廊下に出て少し行くと万次丸は立ち止まってそば耳を立てる。
椿「……ちょいと、万次っ」 たしなめる。
万次「しっ!!」
「椿ちゃんも気になるだろ? あのお二人、近ごろ特に変だ」
椿「うん……でもぉ……」
万次「なーに。事情知ってりゃ、あのお二人のために何かできっかもしんないだろ?」
椿「そ……それも~……そうさね」
二人、息をひそめて聞き耳たてる。
部屋には社と都が向かい合って座している。
社「姉上、お気をつけ下され!! 姉上の身代わり人形の目から血が流れたのでございます!! 危険を知らせるものやも……」 布団の上に正座。
軽くため息をついて、都「社……。お前は夢でも見ているのです」
社「姉上っ!! 本当にっ!!」
都「……だって、あの人形……私も見ましたよ」
社「ええ?」
都「懐かしいと思うて……」
社「では……」
都「血などなかった。跡も何もな」
社「……そんな……」
都「……ふぅ」
「何を血迷うておるかと思えば……」
社「いや……確かに……でも……」
これだけ言われると何やら自分の子供じみた妄想だった気もしてくる。初めから怖いと感じていたから、思い込みだったのかもしれない……。
社『……しかし……』
頭の中にあの野太い声が響く。
どこかで聞いたような、覚えのあるあの声が。
薄ら寒く………
声「誰ぞおらんか、誰ぞおらんか」
「誰ぞおらぬか、誰ぞおらぬか」
社『…………………』
都「ともかく……今日はゆるりとお休みなさい」 立ち上がる。
社「……あ……姉上」
都「ん?」
振り向く都の右手に包帯。
社「それは……どうされたのですか?」
都「……何でもありません」 手をさする。
社「でも……」
都「……転んだだけです」
言い残して出て行く。