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みやまよめな:6
2008.05.19 |Category …みやまよめな
かけおち
1,
母(妻)を亡くして、すっかり酒浸りになった父は、今日も朝からずっと飲んでいる。
夜になってもまだ酒瓶を手放さない父をいさめにくる都。
心配で社もついてくる。
都「父様、そろそろ月も高くなって参りました。お酒も少し控えた方がよろしいかと……」
父「おお、おお。都か。うんうん。お前はよう、母に似てきたなぁ」
都「父様、そんなにあおっては、体に毒です」
しかし、ちっとも聞いていない様子の父。
すっかりできあがっている。
父「ほんに美しくなった。それも妖術か?」
社「父上っ!!」
都「よい、社」
社「しかし、姉上…………」
みやまよめな;5
2008.05.19 |Category …みやまよめな
5,
それからまた1年後。都16歳。社15歳。
社は毎日毎日、暇さえあれば剣の稽古に励んでおり、天賦の才もあって、かなりの腕前になる。
本来は、姉を守るためだが、父は「頼もしい、これで我が帯刀家(おびなたけ)も安泰(あんたい)だ」と大いに喜ぶ。
幼少の頃は女の子のようだった社は、今ではすっかり男らしくなり、美少年になっている。
ただし、少し陰気なカンジ。
社は自分の部屋の前に花壇を作り、白い花と青紫の花を育てている。
今日も朝の稽古がすむと花に水を撒く。
そこへ女中の椿が水を汲んで、通りかかる。
端女・椿「社様、おはようございます。毎日早いですね」
社「おはよう、椿」
みやまよめな:4
2008.05.18 |Category …みやまよめな
4,
1年後。都15歳、社14歳。
母は1年間の闘病生活にすっかり疲れ、衰え、日に日に弱っていった。
数々の医者を呼んだが、一向に回復の兆しをみせない。
荒々しく廊下を歩き、父は都の部屋に現れる。
父「都!! お前の妖術で何とかしろ!!」
都「無理です、父様。私は妖術など知りませぬ」
父「たわけっ!! 前にも村に流行った病を治したではないか!! それを自分の母が苦しんでおるときに無理とぬかすか!?」
都「以前、病を治したのは都ではございませぬ。医者でございます。都は、夢で見た草を医者にお教えしただけでございます」
父「同じことだわ!! 早く何とかせい!! さもなくば……」
そこへ社が駆けつける。
みやまよめな:3
2008.05.18 |Category …みやまよめな
もののけ「それに、よく見ればずいぶんな美形じゃな」
毛むくじゃらの手で、都の顎を持ち上げる。
都「け、汚らわしいっ!! 触るでないっ!!」
もののけ「ところで姫、御神崎様とは何か知っておるか?」
都「……山を護る神だ」
そう、母から聞かされていた。
もののけ「……フ……ファファファ。山神か!! ふぁふぁふぁふぁっ」
都「何がおかしいっ!!?」
それを無視して、
もののけ「ふん、なるほど。……気に入ったぞ、姫。そなた、名をなんと申す」
都「誇りある我が名をもののけがごときに教える言われはない」
みやまよめな:2
2008.05.18 |Category …みやまよめな
社「見て、姉上。来るときにきれいな花を見つけたんだよ」
青紫の『みやまよめな』。
都「まぁ、キレイだこと。これを私に? ……ありがとう」
しきりに照れる社。
二人になって心細さも二分にされ、都はすっかり安心しておしゃべりを楽しむ。
一方、社もちょっとした冒険気分になって、もしも鬼が出てきたら捕まえてやろうと息巻いている。
都「やっぱり男の子がいてくれると頼もしいものです」
社「へへっ……」
『姉上は絶対、社が守ってあげるんだ』