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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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みやまよめな:3

もののけ「それに、よく見ればずいぶんな美形じゃな」

 

 毛むくじゃらの手で、都の顎を持ち上げる。

 

都「け、汚らわしいっ!! 触るでないっ!!」

もののけ「ところで姫、御神崎様とは何か知っておるか?」

都「……山を護る神だ」

 

 そう、母から聞かされていた。

 

もののけ「……フ……ファファファ。山神か!! ふぁふぁふぁふぁっ」

都「何がおかしいっ!!?」

 

 それを無視して、

 

もののけ「ふん、なるほど。……気に入ったぞ、姫。そなた、名をなんと申す」

都「誇りある我が名をもののけがごときに教える言われはない」


▽つづきはこちら

もののけ「勝ち気な…………。ますます気に入った。どうじゃ姫、弟を助けたくば、わしと取引をせぬか?」

都「…………取引?」

 

 倒れたままの社を見つめ、慎重にうなづく。

 

「…………いいでしょう」

 

 都はもののけと取引をすることに。弟を助けるにはそれしか道がない。

 

もののけ「では約束を破らぬよう、お互いの持ち物を交換しようではないか」

 

 巨大で毛むくじゃらな手が迫り…………

 

 

 翌日、迎えに来た母が、二人が倒れているのを発見する。

 社は着物の背中が破れていたが、血は出ておらず、しかし不思議なことに大きな4本の爪痕がふさがった状態で残っていた。

まるで古傷のように。

 お堂の中には『みやまよめな』が無残に散らかっている。

 母親が後日、何があったのか尋ねるが、二人は何も覚えていないと言う。

 祖母が「御神崎様が守って下さったのに違いない」と言うので、母もそれで一応は納得。

 

みやまよめな

1,

 七つ参りの日以来、都は神通力を手に入れたのか、ときどき人々の未来を予測するようになった。

 子供がいなくなったと村で大騒ぎすれば、雑木林の池だと予言し、子供が溺れているすんでのところで大人がかけつけて助かったとか、病の原因を突き止めたり、天候を占ったり、死期を予知したりした。

 人々は都を神子としてあがめた。

しかし父親はこれを気味悪がり、娘を遠ざけるようになる。

 

2,

 それから7年後。都14歳。社13歳。

 都は美しく優しい姫君として育ち、予知の力も健在だった。

彼女が予知するものはピタリと当たったので、国中にその名は広まり、「ぜひ嫁にしたい」と申し出る豪族なども現れた。

 しかし父親は以前にも増して、都を不気味に思うようになる。

 

 夜。

父と母の寝室の前を通りかかる都。

父母の会話を聞いて、足を止める。

 

父「都を嫁にしたいという輩が今日も3人も来たぞ」

母「あらまあ。それはそれは……。都も年頃ですからねぇ、そろそろ行き先も決めなくてはなりませんし、よい機会かもしれませんね」

父「そうだな。いつまでも帯刀に置いておいては、いつ災いをもたらすか知れん」

都「……!!」

母「まぁ、貴方ったら、まだそのようなこと……!!」

父「あの7つめの夜からだろう、あの力が宿ったのは。それも禁を破って、社と二人で堂に入り、その後は何も覚えておらんときたもんだ!! 何か魔物がとりついたに決まっておる」

都「………………」

母「よして下さい!! あの子は御神崎様に守られて、神通力を手に入れたんです!!」

父「ふん、どうだかな。だったら社にも何かあってよさそうなものだが、あやつには何も起こらんではないか!? あるのは背中の4本傷だけじゃ」

都「……………………」

 

 都、しょんぼりしてその場を立ち去る。

 

3,

 ある日、帯刀家に一通の文(ふみ)が届く。

 朝早くから剣の稽古をしていた社がそれを受け取り、父宛だったが、勝手に読んでしまう。内容は都が欲しいとの見合いの申し込み。

 

社『姉上にはまだ早い』

 

 それを懐にこっそりしまってしまう。

幾度かこんなことをして、姉への申し込みや恋文をにぎりつぶしている。

 

 同時期。

都に結婚の申し込みに来た者は、来る途中や帰り途中に謎の魔物によって変死を遂げる事件が相次いだ。

 魔物が都を見初めたのだとか、魔物を装った都に恋する者が道中を狙って襲ったのだとか不吉な噂がたちまち広がった。

 そんなおり、都たちの母が病に倒れる。

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