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みやまよめな:4
2008.05.18 |Category …みやまよめな
4,
1年後。都15歳、社14歳。
母は1年間の闘病生活にすっかり疲れ、衰え、日に日に弱っていった。
数々の医者を呼んだが、一向に回復の兆しをみせない。
荒々しく廊下を歩き、父は都の部屋に現れる。
父「都!! お前の妖術で何とかしろ!!」
都「無理です、父様。私は妖術など知りませぬ」
父「たわけっ!! 前にも村に流行った病を治したではないか!! それを自分の母が苦しんでおるときに無理とぬかすか!?」
都「以前、病を治したのは都ではございませぬ。医者でございます。都は、夢で見た草を医者にお教えしただけでございます」
父「同じことだわ!! 早く何とかせい!! さもなくば……」
そこへ社が駆けつける。
▽つづきはこちら
社「父上!! おやめ下さい!! いくら父上といえど、女子(おなご)の部屋へ何の断りもなく踏み込むなど、無礼極まりない行いですぞ」
父「黙れ、社!! 貴様、母がどうなっても良いと申すか!?」
社「そうは申しません。ですが、姉上のお力は御心(みこころ)が静まっているときでないと発揮できませぬ。父上がそのようにせかしては、占いも狂うというもの…。どうぞお引き取り下さい」
父「……ちぃ」
舌打ちをして、いったんは引き下がる。
こうしたことが度々あったが、都は母を助ける手立てをみつけられずにいた。
そして、ある日、
都「……見えました」
父「おお、そうか!! でかしたぞ、都!!」 すごく嬉しそう。
社「姉上!!」 やはり嬉しそう。
都「……ですが……」 しかし暗い表情。
父「……ん?」
都「見えたのは、母は助からないということです」 目を伏せる。
父「……なに!?」
社「…………………」 表情を硬くする。
重い沈黙ののち、父は突然、都の胸倉を乱暴につかむ。
父「今、何と言ったぁ~!? 助からないだと!? わしはそんなことは聞いておらん!! 助ける術を聞いておるのだ、馬鹿者がっ!!」
都「きゃっ!?」
父と都の間に割って入り、
社「おやめ下さい、父上っ!! 姉上は医者ではありませぬ、未来を占っているだけでございますっ!!」
もめていると、端女・椿(つばき)が慌てて走って来る。
女中・椿「御館(おやかた)様ぁ~!!」
社「何だ、騒々しい!!」
女中・椿「奥方(おくがた)様が…………」
父「何っ!!?」
都「母様っ!!?」
社「母上……」
三人が母の床へ急ぐと、母は弱ってやせ細った手で手招きをしている。
始めは父とだけ話がしたいと言い、次に社を呼び、最後に都を呼んだ。
母「都。貴女の力を万能だと勘違いして父様はああ言っておりますが、気に病んではなりませんよ」
都「はい……」
母「いつかきっと貴女を理解してくれる日が来るでしょう……。それまで、社と共に頑張るのですよ」
都「……はい……」
母「貴女の力は人の手助けができる素晴らしいものです……。ですが、使い道を誤れば危険な力でもあります……。それだけは心にとめて、くれぐれも忘れないよう……」
都は8年前に、母の言い付けを守らずに社と二人でいたことを思い出した。
母「貴女は優しくて強い子だもの…………大丈夫ね?」
都「ええ……、約束します、約束致(いた)します、母様……。ですから、都を置いて逝(い)かないで下さいまし……!! 母様に置いて逝かれたら、都は……っ」
母「いいえ、貴女には社もついております。気を強く持ちなさい」
その夜、母は旅立った。
父はそれ以来、ことあるごとに都が母を助けなかったとなじり続ける。