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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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みやまよめな:7

都「うっ……ううん……」

 ハッとして、社「……いかがされましたか?」

都「う~、う~」 うなされている。

社「姉上っ」

 

 手を強く握り直してやると安心したように、また安らかな寝息を立て始める。

 

社「……姉上……。お美しい姉上……。社はいつも貴女のお側におります……」

 

 そっと額に口づける。

 

 

2,

 くる日もくる日も父は酒に浸りながら、娘をなじり続け、都は精神的にまいってきて、床につくことが多くなった。

 特に病というワケではなかったが、なにもかもが億劫(おっくう)で動きたくない。

 何も考えたくない。

ただ布団の中で一日が終わるのを待つ。

 その間にも「お告げ」はあったが黙っていた。

また予言めいたことを言えば、父は自分を恐れ、更に遠巻きにするに違いない。

 自分は何も語ってはいけないのだと思った。

 今朝も女が夜盗に遭う夢を見たが、口をつぐんだ。

見る夢が全て予言に結び付くワケではない。

今度もきっと違うと言い聞かせ、関与(かんよ)せずにやり過ごす。


▽つづきはこちら

その翌日。

 女が犯されて殺されたという話を耳にし、都は泣いた。

 突然、父が部屋の障子を開け放つ。

 床にふせていたのであわてる都。

乱れていた寝間着の前をかき寄せる。

 

父「都ぉ~!! 女が殺されたぞ~? しかも子を身ごもっていた身体だったそうじゃ。不憫なものよな、都?」

 

 朝っぱらから酒臭い。

 

都「………………………」

 

 布団の上に正座して、髪を手櫛で整える。

 

父「お前が予知しておれば、死なずに済んだのではないのか? え?」

都「………………………」

父「ワザと黙っておったのだろ?」

都「ち……」

 

 違うと叫びたかった。

…………しかし、実際には父の言うとおり。

 現実逃避をしてしまったせいで、この事件は起こってしまったのだ。

 先回りしてくい止められたハズだったのに。

 

父「化け物娘めっ!!」

 

 怒鳴って酒瓶を投げ付ける。

 

都「………………………」

 

 瓶は砕け、遅れて額から血が滴(したた)り落ちた。

 洗い上がった洗濯物を持った椿、父が出て行くのと入れ違いに都の部屋へ。

 

椿「姫様…………」

 

 おずおずと声をかける。

 額の傷に気づき、あっと驚く。

 

椿「こんな、ヒドイ……!! 今、手当をしますから、じっとしておいて下さいまし」

 

 薬と包帯を取りにあわてて廊下に飛び出す。

 身じろぎせずに布団の上で正座したままの都。

椿からの手当を受ける。

 

椿「嫁入り前の女子になんて御無体な……うっ、うっ」 涙ぐむ。

都「……椿」

椿「はい?」

都「……私は生きていてはならぬのでしょうか?」

椿「えっ!?」

都「私は呪われた子なのでしょうか?」

椿「何をおっしゃいます!? 姫様は神子です!! 呪われるなんてそんなことありゃしませんっ」

都「でも身重の若い女が殺されてしまった…………私のせいで……」

椿「いいえっ、姫様が何をされましたか? 何もしちゃいないじゃないですか。何もしてないのに姫様のせいなんてそんなことありゃしません!! そんなのおかしいですぅ」

 

 首を横に振り、

 

都「何もしなかったから殺されたの」

 

 両の手で顔を覆う。

 

都「本当は知っていたのっ!! でも言わなかった!! 父様(ちちさま)に嫌われとうなくて、黙っていたのです!! それで何もなければいいと思っていたのに、ああっ」

 

 うずくまる。

 

椿「姫様、姫様!! そんなにご自分を責めたらいけないです!! 本当のことになるなんて、わからないじゃないですか!! たまにはそういうこともありますよ!! 大丈夫、泣かないで下さい!! 姫様の先見(さきみ)の目は素晴らしいです!! ウチのばっちゃんが山で足くじいたの見つけてくれたの姫様だし、そうでなかったらばっちゃん見つからなかったかもしれないし、他にも病治したり、沢山、沢山の人を救ってなさってる!! 姫様は神の子ですよ!! 皆、そう言ってますっ!!! 神子だって崇めておりますっ!!」

 

 必死になってまくし立てる。

唾が飛び散るのもおかまいなし。

 

都「ありがとう、椿……。……ありがとう……」

椿「姫様……」

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