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みやまよめな:8
2008.05.19 |Category …みやまよめな
都がもう寝るというので、椿はまた衣類を持って廊下に出る。
障子を閉めて、一息つく。
椿「都様……、あんなにやつれて、お可哀想に。お館様は何が気に食わないのかね? あんなにベッピンで優しくて、オマケに町人の救いの神さんじゃない」
憤慨(ふんがい)。
ドスドスと怒りにまかせて歩く。
椿「皆が姫様、姫様って慕うから焼き餅だろか?」
いきなり背後から、荷物を取り上げられ、
椿「あっ!?」
振り向くと、そこには社。
社「これこれ、椿。父上の悪口を言って聞かれたらどうするつもりだい?」
椿「あっ!! やっ!! あのっ!! その…………」
大パニック。
▽つづきはこちら
社「いい。私の前では構わない」
椿「申し訳ございません……」 しゅーん。
社「いいって」 苦笑い。
椿の荷物を代わりに持って歩きながら、
社「ところで椿は何をそんなに怒っているのだい? よければ教えてくれないか。姉上のことのようだし……」
椿「それが……その……」 言いよどむ。
社「ん?」
刀を手に乱暴に廊下を歩く社。
社「今度ばかりは父上であろうと、もう、許せんっ!!」
『姉上に酒瓶を投げ付けるなどとっ!!』
椿から聞いて逆上。
怒髪天衝く勢い。
椿「ひえぇ~っ!!」 真っ青。
「どどどど……どうしよっ!!?」
こんなにまで大変なことになろうとは思っておらず、うろたえる。
椿「ひ…………姫様っ!!」
自分ではすでに止められる状況ではないと都を呼びに走った。
椿「お助け下さい、姫様~っ!!」 半べそ。
その間にも社は、荒々しい足取りで、父の部屋の障子を許可なく弾く。
父「何事だ、社?」
真っ赤な顔をして振り返る。また酒が入っているようだ。
しかも……
社、チラリと床の下賎な女たちに目をくれる。
社『しかも昼間から女遊びか』
見下して、密かに舌打ち。
社「父上っ!!」
父「何だ、社。お前もどうだ、一杯?」
酒をすすめる。
父「女もいるぞぉ? そういやお前、15になったのだから女の味も知っておいてもよい頃じゃな」
女たち「ウフフフフッ」
社「父上!! 先程、姉上に何をされたかっ!?」
父「うん?」
社「返答如何(へんとういかん)によっては、例え父上とて……」
刀の柄を堅く握って怒りに打ち震える。
父「はて? 何だったかな……?」
本当に忘れている様子。
酔っ払っていた内の所業だったので、もう記憶の彼方。
その態度に更に怒りがたぎる社。
社「おのれ、父上っ!!!」
とうとう刀を振りかざそうとしたとき、鋭く都の声が飛んだ。
都「社っ!!」
社「!!」
都「よいのです」
社「姉上……」
都「さぁ、私の元へ来ておくれ」
そっと手を重ねて、振り上げた腕を降ろさせる。
社「………くっ」
都、社を従えて屋敷の外へ出る。
落ち着かせるためにその辺を散歩。
幼い頃、よく一緒に駆け回った場所をわざと通った。
姉の背を追いながら、
社「椿から聞きました!! もう我慢なりませんっ!!」
都「この程度の傷はなんともありません。大丈夫です」
社「なんともないハズがないでしょうっ!? 嫁入り前の娘ですぞっ!?」
先を歩く、都「落ち着きなさい、社」