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みやまよめな:12
2008.05.20 |Category …みやまよめな
社「仕方ありませんね」
都「何が仕方がないものですか」 ふんっ。
社「そのようにムクれないで下さい。まるで子供のようですよ」
クスクスと笑う。
都、余計に怒ってそれにも答えない。
社「さ、ではしばらくは私がおぶって行きましょう」
目の前にしゃがむ。
都「……でも」
社「大丈夫です。……さぁ」
都「重いですよ?」
言いながらも、その背におぶさった。
社「何の何の」
姉を背負ったまま、山道を黙々と歩く社。吹き出す汗は、都がそっと拭ってやる。
▽つづきはこちら
そしてしばらく。
都「社、もう疲れたであろう? そろそろ休んでは?」
社「さほどでもございませぬ」
都「では私が降りましょう。足の疲れも癒えました」
社「お構いなく」
都「しかし……」
女性といえど、人一人かついでそんなに歩けるものなのだろうか。
かれこれあれから1時間にもなる。
もう夜明けも近い。
それなのに社の足は同じ速度を保って、まったく疲れた様子を見せないのだった。
都『はて? 男子というのはかように頼もしいものであったか』 感心。
……が、普通はそんなハズはない。
ふいに、
社「あ、“みやまよめな”」
道端にしゃがむ。
都「? “みやまよめな”?」
社「椿に聞きました。この花の名です」
青く露に濡れる花を摘んで、背の姉に渡す。
都「みやまよめなというのですか。知りませんでした」
受け取り、口元をほころばせた。
社、満足げに笑い、また足を進める。
やがて下り坂に差しかかったときに、
社「ちょうどこの辺ですな」
都「今度は何です?」
花に気をとられていた瞳を上げる。
社「姉上に求婚を申し込んだ者たちが、化け物に襲われたという場所です」
都「まぁっ!!」
社「決まってここを通るときにやられるのだとか……」
都「なぜそんな恐ろしい所を通るのです?」
社「ここを通らねば、御神崎山からは出られないでしょうに。道はここ一本でございます」
都「……化け物が出たらどうするのですか!!?」
社「なーに、化け物なぞおりはせぬ。どうせ山賊か何かが獣の皮でもかぶっておったのでしょう」
都「山賊でも同じことでしょう!! 夜盗は女を見るや、とても恐ろしいことをするのだとか……」
社「相手が人間ならば、負ける社ではござらん。言ったでしょう、姉上はお守りすると。安心して下され」
都「……………………」
そんなことを言われても不安で仕方がない。
ここまで怯えられると思わなかった社は、少しばかり脅かすだけのイタズラ心のつもりだったのだが、姉の嫌な予感は的中してしまった。
特に神のお告げなどではない。
噂どおり、遭遇すべくしての状況である。
下賎な山賊たちが突然、木々の間から飛び出して来て、身なりのいい二人を取り囲む。
都「きゃあああっっ!!!」
社「心配なさるな」
都を降ろし、抜刀する。