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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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みやまよめな:14

見や子

1,

 帯刀家。

 早朝に戻った二人を見とがめ、ずっと気をもんでいた椿。

 

椿「お二人とも、何処へ行きなすってたんですかっ!? もぅ、家の中、大騒ぎで大変だったんですからぁ!! 今も万次たちが外を探し回ってますよっ!!」

都「すまなかったね、椿。でもいまは火急の用です。お小言は後で聞きますから、皆を集めておくれ」

椿「!? は……、はぁ……」 あいまいに答える。

 

 都は急ぎ父の部屋に行き、「予言」の報告をする。

 これによって、防御体制は早めに整い、敵軍の手の内を逆手にとり、大勝利を収めることに。

 

父「都っ!! よやった!!! よやってくれたぞ!!!」

 

 珍しく父に褒められて、嬉しい都。


▽つづきはこちら

 一方、社は他に気をとられていて上の空。

 「あのときの出来事」が未だに腑()に落ちないのである。

 アレは自分がやったのか、しかし、記憶はない。

覚えているのは、初めの賊(ぞく)と一刀目を合わせたところまでなのだ。

 気が付けば、血を浴びて、ただ棒のように立っていた。

…………それだけ。

 だが、時が経つにつれてその出来事すら曖昧(あいまい)にぼやけていき、いつしか賊に遭遇したことすら記憶のかなたに消失していった。

 不自然だが、都も何も言わない。

 それから、いくらも経たない内に再び同じ勢力がこの地を狙って来たものの、今度も見事、占いを的中させ、都は国を救った。

 こんなことがあってから、父は現金なもので、都を嫁に……という話を断ってしまう。

 都、都と突然、掌(てのひら)を返したように可愛がりだす始末。

 大勝利に気を良くした父は、こちらから撃って出ようと強気に兵力を集める。

 今までは内弁慶で気の弱かった父が自分から領土を広げようというのは、よっぽどのこと

 だがそれもこれも相手の手の内が読めているからこそ。

 飛ぶ鳥を落とす勢いで父は領土を拡大してゆく。

 

父「都にこんな使い道があったとは知らなんだわ」

 

 酒盛りの最中でご機嫌。

 父からの杯を受けながら、

 

社「……姉上を戦の道具に利用するのはおやめ下さい」

父「は~、お前はいつもそうじゃの。都への嫉妬……ではあるまいなぁ。お前もよくやってくれておるからな」

社「当たり前です」

 

 都が占いを当てる一方で、元服し、初陣を果たして間もない社の方でも、戦場にて恐ろしいまでの手柄をあげていた。

 社が刀を一振りすれば、10人の首が飛ぶという比喩が兵の間で噂されているが、実際はそんなに生易しいものではなかった。

 戦で剣を振るう社は戦神か悪鬼が乗り移ったような奮迅(ふんじん)ぶり。

……とても、人間業とは思えない。

 時折、社は自分のしていることを忘れているが、それは興奮のあまりだろうと敢えて気にしないようにしていた。

 実は自らの力に恐れを抱いていたから……

 

 唐突(とうとつ)に、父「そうじゃ社」

社「……は」

父「今度、戦場(いくさば)に都も連れて行こうと思うのだが、どうだ?」

 

 話している部屋の廊下を、椿がお膳を持ってやってくる。

 

椿『ええっ!? またお館様はとんでもないことをっ!!』

 

 思わず足を止める。

 

 中では、社「なりません。戦場に女子(おなご)なぞ……」

 外の、椿『ですよねぇ、うんうん』

 中の、父「はははははっ。言うと思ったわ!!」

社「……ご冗談ですか。お人が悪い……。てっきり社は……」

 『この父上のことだ。本気で言っているのかと思ったわ』 内心、舌打ち。

 外の、椿『…………ホッ、何だ、冗談か』

 

 障子の前に座って、戸を開こうと手をかける。

 

 中の、父「社は都のことになるといつもムキになりおるな」

 外の、椿『………………………………』

 

 また動作を止める。

 

社「それは父上があまりに非常識な物言いをなさるからです」

 

 つい、と顔をそらす。

 

父「よもや、そなた…………」 酒を口に含む。

社「はい?」

父「実の姉に惚れておるのではあるまいな?」

社「………………………………………」

 

 一瞬黙って、ピクリと動く。

 

 外の、椿『えええええっ!? 社様が姉君をっ!??』

     『……でも……』

 

 思い当たる節が……?

 

 外の、椿『いやいや、でもでもっ。それはいくらなんでも……』

 

 すぐに否定して頭を激しく左右に振る。

 

 中の社、ややあって、

 

社「何を申されるかと思えば」

 

 あきれ顔。

 

父「いやな、どうにもお前を見ているとそのような気がしてならん」

社「この社が実の姉に卑しい気持ちを抱いていると?」

 

 キッと鋭く睨む。

 

 外の椿「……社様……」 口の中で小さくつぶやく。

    『……頼みますから、そんなのナシですよぉ?』

 

 一抹の不安。

 

父「ああ、悪かった、悪かった。あんまり姉弟(きょうだい)仲がいいからな、ちょっと言ってみただけじゃ」

社「………………………………」

 

 不機嫌に残りの酒をあおる。

 

父「年頃になってからまで、姉上、姉上といつまでもくっついているようでは、仕方ないぞ。もっと男子(だんし)らしくせぬか」

 

 最後は説教染みた言葉で威厳を保とうとする。

……自分が不利になると親風吹かせる、父のよくやる手口だ。

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