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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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みやまよめな:13

 相手は16人。

こちらは齢(よわい)15の小童(こわっぱ)唯一人。

 結果は火を見るより明らか。

 ……の、ハズ……だったのだが……

 都が両手を顔に当ててうずくまっているたった5分間の間に、事は済んでしまっていた。

 ほんの少し前まで森を騒がせていた、剣の激突する音や足音、悲鳴…………。

 それらは跡形もなく消えうせている。

 恐る恐る指の隙間から、周囲を見渡す都。

 

都「……ひっ!!」

 

 辺り一面に広がった血の海を目の端に捕らえ、

 

「は、ああ~…………」

 

 目を回し、気を失ってしまう。


▽つづきはこちら

 そしてその血の海の中にただ一人立つのは社。

 

社「はー、はー………」

 

 息をきらせて、足元に転がる遺体を見つめていた。

 16人いた山賊たちは、五体満足ではなかった。

どれもバラバラになっており、ひしゃげている物もある。

……この殺し方は、刀でできる所業ではない。

 

社『ウ…………』

 

 遺体を凝視する目は血走っている。

 

『ウマ…………』

 

 顔にかかった大量の返り血を拭う。

 

『ウマソウダナ…………』

 

 口元に不気味な笑み。

 

『……………………………………………………………………んっ!!?』

 

 ハッと我に返り、

 

「いや……、今……何を考えていたんだ、私はっ!?」

 

 あわてて首を振る。

 そうしてから改めて周囲を回してみると、惨劇の跡。

 

社「うっ!! ううっ、オエッ!!」

 

 突然、酸っぱいものが喉を駆け上がってきた。

 ひとしきり胃の中の物を吐き出して、姉を放っていたことを思い出し、頭を巡らせる。

 

社「姉上っ!!」

 

 足をもつれさせながらも側まで駆け寄り、倒れている都を抱き起こす。

 

「姉上っ!! 姉上っ!! 死なないでっ!!!」

 

 激しく揺さぶる。

 

都「うっ、ううん……」

社「……っはぁ……」

 

 気を失っているだけとわかって、安堵のため息。

 ともかくこのまま現場にいたくないと都を背負ってその場を逃げ出す。

 その背を木々の間から見つめるモノが一人……

 

正体不明の者「“ここ”からは出さぬ。我が姫君……」

 

 低く唸るようにつぶやく。

 二人が去った後に残された、地面に散らばる“みやまよめな”を毛むくじゃらの手が拾い上げる。

 

5,

 惨劇の現場を遠く離れた社は、ようやく落ち着きを取り戻し、水筒の水で口をすすぎ、のどを湿らせる。

 残りの水で手ぬぐいを濡らして、横たえた都の額に乗せた。

 

社「それにしても……」

 『さっきのはであったのか……』

 

 ウマソウダナ、という言葉を思い出す。

 

社『アレは私ではない。別の所から聞こえてきたのだ。それに……』

 

 簡単にもぎ取られた人間の頭を思い出す。

 

社『アレも私ではない。あのようなコト、私にできようハズがない』

 

 身震い。

いくらか落ち着いた今も思い浮かべれば、顔は青ざめ、歯は恐怖のためにカチカチと音を鳴らす。

 

社「気づいたら、ああなっておったのだ……。私じゃない、私ではない」

 

 あらぬ方向を見て、ブツブツと独り言を繰り返す。

 ふいに都が呻いて、社は身を震わせた。

 

都「……あ、は……、社……、社? 社!!」

 

 段々、声が高くなる。

 

社「はい、姉上。社はここに!!」

 

 

 

みやまよめな:14

都「大変です、社!!」

社「大丈夫です、賊は去りました。私がぼんやりしている間に、……そう、物の怪!! 物の怪が出たのです!!」

 

 思いつきで言ったのだが、改めて思うにあの仕業は人間業ではない。

アレは物の怪の仕業なのだ。

そうだ。

その方がしっくりする。

 

社「物の怪の噂は本当だったのですよ、姉上!!」

都「何が物の怪か!! それどころではない、社!!!!」

社「え……いや……あの……?」

 

 物の怪の存在が、それどころではないと片付けられ、戸惑う。

 

都「見えたのですっ!!!」

社「えっ!? 物の怪をですかっ!?」

 『……それとも私のあさまし姿を……?』

 

 一瞬、心配になる。

 しかしそれには答えず、

 

都「帰りますっ!!」

社「何を言われます、そんな急に……!?」

都「急いで、社!! 父様や皆に知らせるのですっ!! ……敵国が攻めてくるとっ!!!」

社「!!!」 にわかに青ざめる。

 

 都は見た。

これから起こることの予知。

 個人の云々を言っている時ではない。

今は。

 一刻を争うと聞き、社は姉を背負って来た道を飛ぶように走った。

 無論、あの惨劇跡は迂回し、道なき道を無理に押し通った。

 

 

 …………こうして、一夜限りの「かけおち」はあっけなく、幕を閉じる。

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