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みやまよめな:2
2008.05.18 |Category …みやまよめな
社「見て、姉上。来るときにきれいな花を見つけたんだよ」
青紫の『みやまよめな』。
都「まぁ、キレイだこと。これを私に? ……ありがとう」
しきりに照れる社。
二人になって心細さも二分にされ、都はすっかり安心しておしゃべりを楽しむ。
一方、社もちょっとした冒険気分になって、もしも鬼が出てきたら捕まえてやろうと息巻いている。
都「やっぱり男の子がいてくれると頼もしいものです」
社「へへっ……」
『姉上は絶対、社が守ってあげるんだ』
▽つづきはこちら
夜中。
眠りこけてしまう二人。
ガサゴソと葉の擦れる音がして、都は目を覚ます。
都「ねぇ、起きて…社」
社「…むにゃ?」
都「社、何か音がする…」
社「狸か狐だよ」
都「そ、そうね…でも…」
『何か』はお堂の周りをぐるぐる回りだす。
息をひそめてじっとしていたが、一向に立ち去る気配がない。
さすがに社も怖くなってきて、持参した刀を握り締めていると、都が寄り添ってくる。
何か「誰ぞおらんか、誰ぞおらんか」
都・社『鬼!!?』
抱き合う二人。
何かは「誰ぞおらぬか、誰ぞおらぬか」を繰り返しながら、まだ徘徊している。
何か「匂うぞ、匂うぞ。隠れても無駄だぞぅ」
社「…ひっ…」
都「しゃべってはダメ」と小声で言い、社の口をつむがせる。
何か「童の匂いがするぞ、男の子の匂いがするぞぉ~!!」
ギクリとする二人。
“何か”は突然、お堂の扉に顔を近づけ、爪を立てる。
何か「みぃつけたぁ~」
都「きゃあっ!!」
何か「……? おかしいな。今、娘の声もしたぞ」
実は、都は札の結界に守られ、姿が見えていない。
しかし今、声を上げてしまった。
何か「娘の声もしたぞぉ~。食らってやる、食らってやる」
社「おのれぇ、化け物め!!」
社は顔をつけて覗いてくる“何か”の目に持参してきた木刀を突き立てる。
何か「ぎゃああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
“何か”は片目を押さえてのたうちまわる。
すかさず社は躍り出て、“何か”にトドメを刺そうとするが、それだけでこのもののけがやられるワケもない。
もののけは素早く木の枝の上に跳び上がり、こちらを狙っている。
都「社!! こちらに帰ってきなさいっ!!」
都も飛び出す。
お堂の外に出てしまい、完全に都の存在に気づくもののけ。
社が木刀を構えているその視界からサッと消えた。
社「!? ……っ!! 姉上っ!!」
姉を狙っているといち早く気づいた社は、都をお堂の中に突き飛ばす。
都「あっ!!?」
都の代わりに、もののけの爪を受ける社。跳ね飛ばされ、転がって意識を失う。
遅れて背中をさぁっと血の染みが広がる。
都「社っ!!」
気絶している社をつかんで食らおうとしているもののけに都が叫ぶ。
都「おやめなさい!!」
もののけは振り向き、ガタガタ震えている都を見てニタリと笑う。
都「弟を離しなさい!! でないと、承知しませんよっ!!」
もののけ「ほほぅ。気丈な姫じゃ。何を承知しないのか教えてもらおう」
都「……っ!! 何を…って……その…」
少し考えて、
都「わ、私には御神崎様から授かった神通力があるのだ!! お前のような下等な魔物、すぐにでも…ひっ…、引き裂けるのだぞっ!! 弟を置いて、さっさと去ねっ!!」
言葉だけは勇ましいが、顔は引きつり、足もガタガタと震えている。
沈黙の後、もののけは大きく笑い出す。
それをぐっと睨む都。
ここで弱みを見せたら負けだ。
もののけ「御神崎様か…。面白いことを言う姫じゃのう」
社を下に置いて都に近づき、まじまじと眺める。