HOME ≫ Category 「みやまよめな」 ≫ [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]
みやまよめな:13
2008.05.21 |Category …みやまよめな
相手は16人。
こちらは齢(よわい)15の小童(こわっぱ)唯一人。
結果は火を見るより明らか。
……の、ハズ……だったのだが……
都が両手を顔に当ててうずくまっているたった5分間の間に、事は済んでしまっていた。
ほんの少し前まで森を騒がせていた、剣の激突する音や足音、悲鳴…………。
それらは跡形もなく消えうせている。
恐る恐る指の隙間から、周囲を見渡す都。
都「……ひっ!!」
辺り一面に広がった血の海を目の端に捕らえ、
都「は、ああ~…………」
目を回し、気を失ってしまう。
みやまよめな:12
2008.05.20 |Category …みやまよめな
社「仕方ありませんね」
都「何が仕方がないものですか」 ふんっ。
社「そのようにムクれないで下さい。まるで子供のようですよ」
クスクスと笑う。
都、余計に怒ってそれにも答えない。
社「さ、ではしばらくは私がおぶって行きましょう」
目の前にしゃがむ。
都「……でも」
社「大丈夫です。……さぁ」
都「重いですよ?」
言いながらも、その背におぶさった。
社「何の何の」
姉を背負ったまま、山道を黙々と歩く社。吹き出す汗は、都がそっと拭ってやる。
みやまよめな:11
2008.05.20 |Category …みやまよめな
都「部屋にお帰りなさい。いくら姉、弟といえど、このような夜更けに女子の部屋を訪れるものではありません」
社「姉上」
都「……ん?」
社「姉上が合意して下さらなくとも、社は………」
持って来ていた真剣をスラリと抜き放つ。
都「!!」
社「社は貴女様をお連れ申す」 目を薄く開く。
刀は月明かりに冷たい光を放った。
都「……ひゃっ!?」
切っ先を目の前に突き付けられて、思わず小さく悲鳴を上げる。
みやまよめな:10
2008.05.20 |Category …みやまよめな
都『………嫌…………あんな………』
吐き気と目眩に襲われてよろめく。
父「2、3日中にここを出て行けよ」
都「2……2、3日中っ!!? それはあまりに急な……」
驚いて顔を上げる。
父「善は急げじゃ。この父の親心、無駄にするでないぞ」
都「…………………………」
父「どうじゃ、嬉しかろう? どうした、もっと嬉しい顔をせぬか。女子(おなご)の悦びは嫁ぐことであろうが」
今日は珍しく上機嫌。
恐らく、前から狙っていた権力が手に入ると思っているに違いない。
都「……はい……」
消え入りそうな声で返事をし、頭を下げてから退室。
部屋の前で待っていた社が駆け寄ってくるが、何も言わず、うつむいたまま自室へ行く。
社「……………………………」
それを目で追う社。
みやまよめな:9
2008.05.20 |Category …みやまよめな
社「……………………」
都「父様は心が病んでおいでなのです。あれ程、愛された母様に先立たれてしまってきっとお寂しいのでしょう。許しておあげなさい」
社「だからと言って、姉上に当たっていいという道理はございません!! 当たられるのならば、この社にすればよいのです!! 社は男子(だんし)ですし、まま受け入れるようなことは致しませぬ。父上をぐぅの音も出ない程に言い返してやりますに」
都「社……」
社「一番寂しい想いをしているのは姉上の方ではございませぬか」
『毎日……、泣いてばかり……』
都「……………………」
その言葉を聞き、不意に立ち止まり、振り返る。
社「ん?」
一緒に足を止める。
みやまよめな:8
2008.05.19 |Category …みやまよめな
都がもう寝るというので、椿はまた衣類を持って廊下に出る。
障子を閉めて、一息つく。
椿「都様……、あんなにやつれて、お可哀想に。お館様は何が気に食わないのかね? あんなにベッピンで優しくて、オマケに町人の救いの神さんじゃない」
憤慨(ふんがい)。
ドスドスと怒りにまかせて歩く。
椿「皆が姫様、姫様って慕うから焼き餅だろか?」
いきなり背後から、荷物を取り上げられ、
椿「あっ!?」
振り向くと、そこには社。
社「これこれ、椿。父上の悪口を言って聞かれたらどうするつもりだい?」
椿「あっ!! やっ!! あのっ!! その…………」
大パニック。
みやまよめな:7
2008.05.19 |Category …みやまよめな
都「うっ……ううん……」
ハッとして、社「……いかがされましたか?」
都「う~、う~」 うなされている。
社「姉上っ」
手を強く握り直してやると安心したように、また安らかな寝息を立て始める。
社「……姉上……。お美しい姉上……。社はいつも貴女のお側におります……」
そっと額に口づける。
2,
くる日もくる日も父は酒に浸りながら、娘をなじり続け、都は精神的にまいってきて、床につくことが多くなった。
特に病というワケではなかったが、なにもかもが億劫(おっくう)で動きたくない。
何も考えたくない。
ただ布団の中で一日が終わるのを待つ。
その間にも「お告げ」はあったが黙っていた。
また予言めいたことを言えば、父は自分を恐れ、更に遠巻きにするに違いない。
自分は何も語ってはいけないのだと思った。
今朝も女が夜盗に遭う夢を見たが、口をつぐんだ。
見る夢が全て予言に結び付くワケではない。
今度もきっと違うと言い聞かせ、関与(かんよ)せずにやり過ごす。