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みやまよめな:28
2008.05.27 |Category …みやまよめな
都「!?」
猛「………………………」
ニヤリと下品に口元を歪める。
社「ここは男子禁制の館ぞっ!! 誰の許可あって踏み込んだっ!?」
猛「おうよ。だから、忍んできたのじゃ」
社の背にいる都に視線をはわせる。
またしてもニヤリと笑い、
猛「姫に会いにな」
社「黙れ、不埓者っ!!」
猛「おっと!!」
抜刀しようとした社の手を上から押さえる。
社「!?」
力任せに引き抜こうとするが、まったく動かない。
社『ばかな…………!?』
▽つづきはこちら
腕力に自信があっただけに、軽く押さえている相手の様子にショック。
力の押し合いで細かく震える腕。
猛「男子禁制といいつつ、坊主はここにおるではないか」
社「私は血縁の者だからな」
猛「つまりは“男”ではないと」
社「何を無礼なっ!!」
会話の間も片方は刀を抜こうとし、片方はそれを押さえている。
猛「何、男子ではないと言っておるのではない、ムキになるな。姫にとって男として数えにならないということじゃ」
社「!!」
猛「のう、姫よ」 手を離す。
都「……!!」
『このヒト……』
社「おのれぇっ!! 馬鹿にしおってぇっ!!!」
怒りの形相の社を涼しく受け流し、猛は手を伸ばした。
社の後ろにいる都をいとも簡単に捕まえる。
都「あっ!?」
猛「んー、ほんに美しゅうなった」
細いアゴを持ち上げさせ、無遠慮に眺め回す。
都「……なっ!!? ぶ、無礼者っ!!!」
かっとなって平手をお見舞い。
社「姉上から離れろっ!! さもなくば、たたっ斬るっ!!!」
社を完全に無視して、
猛「アタタ。相変わらず、気の強いことじゃ」
ひっぱたかれた頬をさする。
都、キッと睨む。
猛「こうしてお互い、まともに会うのは久しぶりじゃのう、姫よ」
都「えっ!?」
久しぶり?
社「猛!! 貴様は姉上に目通りしたことはないハズだっ!! デタラメ申すなっ!!!」
猛「うるさいぞ、小坊主」
坊主から、小坊主に格下げだ。
社「何ィっ!!?」
猛「姫、積もる話もしたい、弟を黙らせてはくれんかの」
都「……………………」
目をパチクリ。
都「……ともかく、私を久しいというこの者の話を少し聞きたい。社、得物をしまい」
猛「そうじゃ、姫の前で血を見せるつもりか?」
社「……くっ!!」
仕方なしに刀を収める。
都「久しい者かどうかは知らぬが、図々しい。もう少し離れなさい」
猛に向かって冷たく言い放つ。
猛「御意」
今度は素直に従い、間を置いてあぐらをかく。
社に向かい、
猛「突っ立ってないで、坊主も座ったらどうだ」
社「黙れ。私はお前がおかしな真似をせぬように見張る!! 少しでも姉上に触れればその首ないと思え!!」
猛「……ふん」
都「猛といいましたね?」
猛「おう。覚えておらなんだか」
都、黙ってうなづく。
猛「無理もないか。姫は幼かったし、もう何年も前のことじゃ」
都「?」
社「?」
猛「ホレ、罪流しの泉で姫が溺れておったろう」
都「!!」
社「……えっ!?」
『罪流し……罪流(ざいる)の泉で姉上が……!?』
……初めて聞く話だ。
社『……そんな……知らなかった』