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みやまよめな:31
2008.05.29 |Category …みやまよめな
社「……はは……」
『……イカン、イカン。椿に当たってどうするというのだ……』
頭を振る。
社「そうだ、椿、後で買い物につきあっておくれ」
椿「あっ、ハイハイッ!! どこまでもお供致しますぅ」
社、ニッコリと微笑む。
詫び(わび)のつもりだ。
約束した時間になると椿は、いつもと違い、めーいっぱい背伸びしたお洒落をキメてやってくる。
社とのおつかいなので気合が入っていた。
社「……………………」
『……変なカッコ……』 ヒク……
……が、気合が入り過ぎていて、ちっとも似合っていない。
化粧がヘタなのに無茶するから、やたらと厚化粧でほとんどお化け。
▽つづきはこちら
社「きょ……今日はずいぶんとキレイだなぁ……」
無理やり笑顔をつくる。
椿「ヤダー、そんな~っ!! 社様ったら、お上手♪」
社「わ……わぁい……」 汗。
町を行く二人。
すれ違う人々が一度は振り返る。
社『見てる……!! 皆、見てるよ~っ!!』 視線、チクチク。
妖怪変化となった椿をチラリと横目で見る。
社『……た……耐えられん……。どこか茶屋にでも……』
とりあえず、休みを取ろうと手近な茶店に入る。
しかも椿が人目につかないように個室を用意してもらう。
社『はぁ~……疲れた……』 がっくり。
椿は相変わらず、上機嫌。
社「化粧した椿もいいけど、やっぱり私はいつもの椿の方が……」 おずおず…
椿「……え……ダメですか……コレ……」 しゅん……
社「あ、いや、そんなことはないさ、ないけど」
『うわぁ~、どーしよ』
椿「!! そーですか!? 大丈夫ですかっ!? よかったぁ~♪」
ぱっと明るくなる。
社『ひぃぃ~っ』
「あ……ああ、まぁ……」 あいまい。
椿「でも、社様がいつものがいいっていうんなら、そうしよっと」
社『……ホッ』
「そ、そうだよ。若い娘は化粧なんかしない方がいいのさ」
椿「わっかりました☆ たまにしかしないことにしますっ」
社「や……やるんだ……やっぱり?」 ボソ……
椿「え? 何ですか?」
社「ん、なんでもない」
結局、その日は自分から買い物に付き合えと言いつつ、椿の買い物に逆につき合わされるハメとなった社。
荷物を持たされながら、
社『まぁいいさ。椿は良い娘だ。そうそう。私は椿と一緒になるんだ…………………から……』
「……………………」
足を止める。
椿「……どういたしました? 社様……」
何かに注意を向けている社の視線をたどる。
その先には都と猛。
被り物をしてはいるが、間違いない。都だ。
二人で買い物を楽しんでいる様子。
椿「あれれっ!? 都様っ!?」
都「!!」
袖で顔を覆い隠すようにして、さっと立ち去ろうとする。
社「!! 姉上っ!?」
荷物をかかえたまま、駆け出す。
椿「ああ~ん、待って下さいよぉ~」 追いかける。
追いつかれて、
都「し~っ!! し~っ!!」
仕方なく、声をたてるなと合図する。
社「なぜこのような所に……!?」
都は館から出ることを父から禁じられている。
その代わり、望む物は何でも与えられていたが……
都「父様には内緒ですよ」
社「勝手に外出なされたのですか!?」
猛「館にこもりきりという方がおかしいと思うてな、わしが連れ出した」
社「よくも巫女たちが許したな」
猛「ははっ。今頃、騒ぎになっておるやもしれぬ」
社「何っ!? 無断で連れ出したというかっ!?」
都「これ、社。猛殿を責めるでない……。私のことを思って連れ出してくれたのです。自分が処分を受けることになるやもしれぬというのに」
社「………受けるやもではありません!! 受けます、当然っ!!」
『なぜ姉上はこんな下賎の者の肩を持つのだ!?』
都「だから内緒にしておくれと頼んでおるに」
社「……くっ!!」
「……わかりました……ですが、早々にお帰りあそばせ。外は姉上のお力を狙う輩でいっぱいでございます」
都「わかっておる。だから、こうして変装を……」
社「我々は一目でわかりましたぞ」
都「…………………」 しゅーん……
猛「よいではないか。久しぶりの外界じゃ。こもってばかりでは腐ってしまうぞ。ははははははっ!!」
社「貴様は黙っておれっ!!」
怒鳴ってから、都に向き直る。
社「さぁさ、姉上、私が送っていきますから……」 うながす。
都「………………………」 しょんぼり……
猛「わしが連れ出したのじゃ。わしが責任を持って、お帰ししよう」
社「よいっ!! 貴様とて信用ならんからな!!」
都「社っ!!」
鋭く声が飛ぶ。
社「!!」
都「めったなことを言うものではありません!! 猛殿は私の命の恩人ですよっ!!? 無礼なふるまいはこの私が許しません!!」
社「……あ……姉上……」
『そんな……』