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みやまよめな:27
2008.05.27 |Category …みやまよめな
が、都の方でも……
都『まぁっ!! 何ということでしょう!! “下世話”? 口にするのもはばかられる!? ……そうでしょう、そうでしょうよ。私と貴方はきょうだいですもの。でも、そんな言い方はあんまりではありませんか……。私とて己が自身で責めているというに。これ以上、辱めるか』
袖で顔を隠す。
社「姉上? 姉上……何とかおっしゃって下さい」
都「………………………………」
社「噂は社ではございませ……」
都「社!!」
社「は、はい」
都「噂はどこからです?」
社「いや……あの……」
都「………………………………」
社「つ、椿……から……」
都「椿!?」
社「しっ、しかし、その椿も他から聞いた噂だと」
都「椿はおしゃべりが過ぎますね」
社「私が無理に聞き出したのでございます。椿は悪うございませぬ」
▽つづきはこちら
都「…………………………」
社「……姉上……」
都「…………………………」
社「姉上はそんなにこの噂を嫌とお思いですか?」
都「下世話と言ったのは誰です!?」
社「私はその…………」
都「…………………………」
社「………姉上………」
都「…………………………」
社「…………姉上」
都「…………………………」
社「姉上!!」
都「うるさいっ!!」
社「…………………………」
「…………姉上…………」
都「うるさいと言ったのがわかりませんか。………出ておゆきなさい」
社「……ッ!!」
あまりの言葉に歯をきしらせる。
社「姉上っ!!」
ぐっと相手の肩をつかんで、無理やり振り向かせる。
都「痛っ!!」
社「姉上、私はっ……!!」
もうどうにでもなれ。半ば投げやりな気持ちで顔を寄せる。
瞳に驚きの表情の都が映った。
都「社……」 アレ?
肩に置かれた手を見やる。
都『違う……』 この手ではない。
都は思った。
都『こんなに細くはない……』 それに、
夢の男はもっと男らしくはなかったか?
もっと荒々しく野太い者ではなかったか?
こんなに線の細い少年だっただろうか?
本当に社だっただろうか?
急に記憶の輪郭がぼやけ始めた。
都『それより何より……』
こんな風に近くあるのに、胸のときめきがひとつもない。
そこにいるのは、“男”ではなく、やはりただの“弟”だった。
都『おかしい……? 私は夜な夜な訪ねてくる社との夢を……?』
『アレは……社ではなかった……?』
きょとんとした顔になり、
都「社……」
社「はい」
『都……』
こちら、社はまだ、胸の高鳴りを抑えられずにいる。
都「……冷たく当たって悪かった。許しておくれ」
社「……は?」
『何だ、急に……』 戸惑う。
都「私の思い違いでした」
社「…お…思い違い……? ……何がでございますか?」
都「いや、こちらの話」
社「……………………」
都『……よかった。アレはよくよく考えてみれば、社ではない。私は異常ではなかったのだ。ホントに、もぅ……』
袖で隠した口から、くっく、と小さく笑いが漏れる。
社「な、何がおかしいのですかっ!? 私は……っ」
都「いや。すまぬ。他人の噂でムキになった自分がおかしゅうて」
社「姉上ぇ……」
がっくり。毒気を抜かれた。
そんな二人の背後から、
男の声「お仲がよろしいようで」
二人「!!」
ここには社と父以外の男はいないはず。
驚いて振り返る。
開けっ放しの障子に手をかけて、男……猛が立っていた。
社「お前はっ!?」
都をかばうように背で隠して立ち上がり、腰の刀に手をかける。