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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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みやまよめな:26

 社は姉から追い返された館にもう一度足早にやってくる。

 

社『確かめたい……っ!! もし噂が本当ならば……』

 

 少なくとも自分の心は噂通りだ。隠し立てしても己だけはあざむけない。

 

社『もしも姉上のお心が私に向いておられたなら……っ!!』

 

 会わないとどうしてこないかとなじり、来ると突き放すその行為は、ひょっとしたらとの期待を抱かせる。

 門の前に立つ。

 

社「私だ!!」

 

 門が開く間も惜しいと開いた隙間からもぐりこみ、駆け足で庭を横切る。

 

巫女1「これはこれは社様……」

巫女2「あら、社さま、お帰りになられたんじゃ?」

 

 声をかけてくる巫女たちを全て無視。


▽つづきはこちら

社「姉上っ!!」

 

 部屋の前に立つ。

 

都「!!」

社「姉上……お………お話が……」

都「……?」

社『いや待て。何と申し上げる? 様子を探るだけだが……だが何と言ってきりだそうか?』

 

 思案している内に障子が開き、招き入れられる。

 

都「一体、どうしたというのですか?」

 

 よそよそしく、突き放したような口調。

顔もこちらを向いてはいない。

 

社『…………何だ、やはり思い違いか……』

 

 そんな様子に淡い期待は一瞬にして吹き消される。

「いや……その……」

 

 …………困った。

 

「何やら近頃、姉上の態度がいささか冷たいような気がしまして……」

 おずおず。

 

都「そのようなことはありません」 きっぱり。

社「ですが……」

都「私の機嫌をうかがいにきたのですか? だったらもうお帰りなさい」

社「姉上……」

 『そんな言い方をされなくても……』 しょぼーん。

都「いつまでも姉様の顔色をうかがってビクビクしているようでは、立派な当主になれませんよ。もう………姉離れなさい」

社「…………………………」

都「…………………………」

 

 背中を向ける。

 

『それは私だ……。早く、弟離れしなくてはいけないのに……』

 

 袖で口元を隠す。

 背中に弟の哀れな眼差しを感じる。

きっと叱られた犬のように目をキョロキョロさせているに違いない。

 けれどここ最近の自分は本当におかしい。

 昨夜もその弟と接吻を交わすという汚らわしい夢を見てしまったのだ。

 そう、いつしか黒百合は蚊帳の外から枕元になっていた。

 今は秋も深く、薄ら寒い日が続き、蚊帳がなくなったということもあるのかもしれないが、黒百合の君は確実に都に接近してきていた。

 そしてとうとう、昨日の晩、都に触れてきたのである。

 

声「姫よ、姫よ。我が愛しの姫君よ……」

 

 声の主は相変わらず影になっていて顔はわからない。

夢だからか姿形はぼんやりとして、正体がつかめないのである。

しかし花を運んでくるのは社以外にいない。

 

社「ビクビクしてなどおりません」

 

 少し、ムッとしたように言い返してくる社。

 

都「だったら私の気持ちなど探りに来るでない」

社「姉上。私は姉上があの噂を気にして、わざと私を遠ざけていると思い……」

都「……? あの噂?」

社「その……いえ……知らぬのでしたらよいのです」 

 

しまった、と口をつむぐ。

 

都「よい。申してみよ」

社「あの……つまり……、あ、姉上が…………私………を……」

 

 声が尻すぼみ。

 

都「何です? 聞こえません。ハッキリおっしゃい」

 

 言いよどんで、一度口をふさぎ、意を決したように大きく息を吸い込む。

 

社「姉上が弟である私に情を向けているという下世話な噂です」

 

 見られているワケでもないのに、顔をそらす。

 

都「情? 情くらいは傾けますとも。血を分けた姉弟(きょうだい)ですもの。そんなことは当たり前で……」

社「いいえ。つまり……、口にするもはばかられることではありますが……、つまり………、私を…………この社を弟ではなく、一人の男として見ておるのでは…………と……」

 

 言っていて、自分で顔が火照るのを感じた。

それを気取られまいと土下座して形をとる。

 他人の噂話の話とはいえ、恐れ多く、そして汚らわしいことを口にしている。

 しかも実のところはその反対だ。

姉を女として見ているのは、他でもない、この社。

 ともかく低姿勢を保たなくては…………顔を見られてはいけない。

 

都「!!」

 「馬鹿を言うものではありませんっ!!!」

 

 勢いよく振り向いて、キッと睨む。

 

社「………で………ですから………私ではなく………ただの下世話な噂話で…………」

 

 しどろもどろ……

 

『はぁ、やはり……。姉上から見ては聞きたくもない話か。しかし……』

 

 チラリと上目使いに憤怒の形相の姉を盗みうかがう。

 

社『何もそんなに力いっぱい嫌がらなくても……』 しゅん……。

 

 もしかしたらと少しは思っていただけに、落胆も大きい。

 

社「……………………………」

 

 社が黙っている間にまた都は背を向けてしまった

むくれてしまったのかもしれないと思い、社は首を縮める

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