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みやまよめな:33
2008.05.29 |Category …みやまよめな
再び画面は社。
家にたどりつき、社は早速、都との約束をやぶって父の元へ。
もとより、黙っているつもりはなく、姉の手前うなづいて見せただけ。
とにかく彼は、猛を何とか解雇させたくて仕方がなかった。
一方、そんなことはまったく関せずの椿は上機嫌で庭を横切る。
万次「お前さん、何だ、そりゃ。そのカッコ」
椿「うん?」
振り返る。
万次「うわ、ヒッデーなぁ。バケモンみたいだぞ?」
椿「なぁんですってぇ~!?」
万次「鏡見たのかよ!?」
椿「……ちょっと失敗したかなって思ったけど、社様がいいって言ってくれたんだから、いいんだよ~っ!!」
べっ!!と舌を出す。
▽つづきはこちら
万次「社様がお優しいから、椿をガッカリさせたくなかったんだろ」
『さもなきゃ、どうでも良かったかだ』
椿「む……むぅ~」
万次「“いつもの方がいい”とかって言われなかったか?」
椿「うっ」 ギクリ。
万次「……はは~ん。図星だな? そりゃあ、遠回しにやめろって言ったのさ」
椿「……………………」
万次「どーだい、心当たりあるだろ?」 ニヤニヤ。
椿「ふ……ふーんっだっ!! 万次なんか嫌いだよっ!!」
怒って走り去る。
父の部屋から戻った社が入れ違いに庭を横切る。
冷笑を浮かべながら……
3,
夜。
どかどかと都の館に兵たちがなだれ込む。
巫女たち「きゃあっ!?」
「ここは都様の館じゃ!! そなたら、わかっておるのかっ!?」
「男子禁制ぞ!!」
兵士「その男子が入り込んだということじゃ!! 引っ捕らえに参った」
都の父からの命令書を見せる。
館内は騒然。
もちろん、都の寝室にも……。
兵士「御免!!」
突然、襖が開かれて跳び起きる都。
都「……な……何事ですか……」
あわてて寝間着の前をかき寄せ、半裸になっていた肌を隠す。
猛「………………」
横からむっくりと同じ裸で起き上がる。
兵士「……ッ!!」 鼻じらむ。
猛、にぃ、と大きな犬歯を見せて笑う。
兵士「と……捕らえろっ!!」
都「あっ!! 待って……!!」
追いすがろうとするが、他の足軽兵士たちに取り押さえられ、猛は連行されていった。
都『……どうして……どうしてわかったの……!?』
騒ぎが収まった部屋で、一人うずくまる。
4,
それから。
いくら都が猛のことを尋ねても誰も教えてくれなかった。
猛はあれっきり、とんと姿を現さない。
父の怒りに触れて、もう殺されてしまったのではないかと気をもむ。
都「どうしよう。困った……。殺されていないにせよ、きっと獄中か、さもなければ追放されたやもしれぬ」
部屋の中で右往左往する彼女も体中、アザだらけ。
父の意に反して、館を抜け出した報いだった。
父は都が少しでも逆らうことを許さない。それも目の届かないところで男と一緒だったというのだから、怒りも大変なものである。
都はただ恐れ、背を丸めて父の気が済むまで蹴飛ばされるより他、何もなかった。
都「今頃、私のせいで拷問などをうけていたら……………ああっ!」
たまらなくなって、両手で顔を覆う。
あれから、もちろん、黒百合は届かない。
都「あれから社も姿を現さないし……」
『来たら、猛殿のことを探らせようと思ったのに……』
と、思う間に、社が久しぶりに顔を見せた。
都「!! 社!!」
駆け寄って抱き着く。
社「あ、姉上……」 ドキ……
都「よう来てくれました!! 社、お願いがあるのです」
社「……願い?」 眉をひそめる。
都「猛殿がどうなったのか、確かめて欲しい」
社「……………………」 やっぱり……
都「もしあんまりな目に合わされていたのなら、何とか助けてやっておくれ。お前の言うことなら父様も聞き入れてくれよう」
社「しかし……あの者は……」
都「お願い、あの方は私の恩人なのです。わかるでしょう? あの方がおらねば、私は今ここにはいなかった」
痛々しい青アザのある顔をあげる。
唇も切れ、血が凝固しており、片目も腫れのためにあまり見えていない様子。
こんな都に頼み事をされては、嫌というワケにもいかない。
社『……ちっ!!』