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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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みやまよめな:35

 中の都「ごめんなさい、私のせいで貴方を巻き込んでしまった……。でも無事に出されたのですね?」

 それには答えず、猛「ずいぶんと酷くやられたようじゃの、姫よ」

 

 都の頬に触れる。

 

都「……これは……」

 

 あわてて、アザだらけの顔を隠そうとしたが、猛はその手をつかんでさらに覗き込んできた。

 

猛「父上殿の仕業であろう」

 「お前の父はお前を困らせてばかりで、何の役にも立たぬ男よのう」

都「……………………」

猛「いっそ、いなくなってしまった方がよいのじゃあないかえ?」

 

 耳元でささやく生臭い吐息。


▽つづきはこちら

 

都「そっ……そんなこと……」

猛「隠すな、わかるぞ。感じるぞ。汝(うぬ)の中に渦巻いている父親への憎しみが」

 

 薄く笑う。

 

都「………………」

猛「そなたの父親は百害あって一利なしの男。姫にはもうわしがついておることだし、あやつにも用はない」

都「で……でも……」

猛「これからもそなたを苦しめ続けるぞ、あの男は一生……」

都「………………………」

猛「それに、じゃ」

 「わしらの仲をこのまま許すとも思えぬ」

都「………………………」

猛「のう、姫よ。わしと気ままに暮らさぬか? この土地も、そなたが占って広まった領地。本来なら、そなた一人の物……。そうは思わぬか?」

都「私……私の……?」 猛の声がだんだんと遠くなっていく気がした。

猛「……そうじゃ、何を遠慮することがある? そなたには力があるのじゃ。……“御神崎様から授かった”力がな。それをなぜ使わぬ? 世は汝の意のままよ。このまま小さな箱庭の中で一生過ごすつもりか?」

都『……何……? 目眩がする……』

猛「なぁ、姫よ。姫よ……」

都「……………頭が……痛い……」

 

 眉間にしわを寄せる。

 

猛「……にやらせてしまえ。………は、そなたの言うことなら何でも聞く、可愛い……ではないか」

都「でも……そんなことをしたら……」

猛「何、このわしをハメだのだからな……そのくらいは働いてもらわんと……」

都「はめた……? それは……?」

猛「あやつよ。そなたに想い寄せるばかりに」

都「まさか、そんなことをする子では……」

 

 耳の中でゥワンゥワンと何か虫の飛ぶ音が回っている。言葉がうまく聞き取れない。

 

都「猛? 猛……?」

 

 目眩がした。

 頭が痛かった。

 ……目の前が、暗くなった。

 

異変

1,

 気が付くと都は一人で横たわっており、猛の姿はない。

 

都「アレ……?」

 「……夢……?」

 『でも……』

 

 先程の、夢かもしれない猛の言葉を思い出す。

 

都「一生苦しめられるかもしれない……父様に……」

 

 想像の中の猛「そなたにはもうわしがついておることだし……」

 

都「…………………………」

 『そうだ……私には、私を……私一人を愛してくれる者がいる……』

 

 ぎゅっと着物のひざをつかむ。

 

『父様が生きている限り、私を傷つけ続ける……。都は父様に嫌われとうない……。……死んでしまったら、これ以上嫌われないですむのではないか……』

 

 フラリと力無く立ち上がり、明けっ放しの障子にもたれ掛かるようにして外を眺めた。

 

都「いつか父様は言っていた……父様は都を嫌いたくはないと……ならば、想いは同じ……。……!! ……そうか、父様は待っておられるのではありませんか」

 

 2,3足を踏みだし、さらに4,5と歩いて、裸足のまま庭に降りる。

 

都「ああ、今までそれに気づきませんでした。申し訳ございません、父様。父様は都が可愛いのですね? うれしゅうございます。都も父様がとても好きでした。よく幼い頃はせてもらい……可愛がってもらったものですね……」

 

 今年、咲き始めの山茶花(さざんか)の花を手に取り………………引きちぎった。

 

都「都は父様に嫌われたくないし、父様は都を嫌いになりたくない…………まぁ」

 

 嬉しそうに微笑む。

 その父も目の前にいはしないのに……。

 

都「おかしゅうございます。こんなことが今までわからなかったなんて……!!」

 

 クルクルと自身が回りながら、ちぎった花びらを撒き散らす。

 黒髪が乱れて花びらと共に舞う。

 そんな異常な様子を見つけた巫女が駆け寄る。

 

巫女「神子様っ!? どうなさいましたっ!?」

都「聞こえるの……声が聞こえるの」

巫女「……え?」

  『お告げ?』

都「あの人の声が……」

 「あははははははっ」

 

 ニエ……イケニエ……ナナツマイリ……ヒメ……トリヒキ……ナナツマイリノバンニ……ムカエニイクゾ。ムカエニムカエニムカエニ……

 

 巫女はわけもなくぞっとして、その場を動けずにいた。

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