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みやまよめな:38
2008.06.01 |Category …みやまよめな
都「むぐっ!? んんっ!!」
『離せっ!! 社っ!!』 暴れる。
社「あっ……、姉上っ!! 話を……話を聞いて下されっ」
暴れるのを抱えるようにして押さえ付ける。
社「姉上、私はあの男が姉上をだましているようにしか……痛て……ちょっ…………ちょっと……暴れないで……」
都「うぐっ!?」
暴れているうちに足を滑らせ、都が転倒。
社「おわっ!?」
引っ張られて、社も一緒に転ぶ。
社「っつ……テテ。……あ……?」
気づくと都が自分の下敷きになってしまっており、顔も間近。
▽つづきはこちら
社「……………………」
呆然として見つめる。
都「イタタ……」
社「……………………」
ゆっくり上体を起こしてみると、都の寝間着の前がはだけて、白く形のよい乳房が片方覗いていた。
逆側からは胸に抱いていたものと思われる、例の黒百合がはみ出している。
社「……………姉上…………私…………は……」
ドクン、と強く鼓動が鳴った。
…………口の中が急速に乾いていく。
つぶやくように声を絞るのがやっと。
鼓動が激しく心の臓を打つ。
社「姉上……」
震える手を伸ばす。
都「!!」
視線に気づき、さっと着物を整える都。
さらにその手を払って、
都「出ておゆきっ!!」
相手の腹を蹴飛ばして、自分から引き離す。
社「うっ」
ヨロめいて、尻餅。
避けられた手は都の代わりに、落とされた黒百合を拾っていた。
社「……姉上……」 ゆっくりと顔を上げる。
都「話はまたにしましょう!! 今日のところはお帰りなさい!!」
立ち上がり、出口を指さす。
社「……………………………………………………………………………………」
ぷつん。
社の中で、何かが切れた。
社「姉上ぇっ!! 姉上っ、私はっ、社は前から貴女のことが……ッ」
都「聞きたくないっ!! それ以上、言うでないっ!!」
社「都っ!!!」
四つ這いで近づき、着物の裾を握り締める。
都「コ、コラッ!! 放しなさいっ!!!」
社「都、なぜそんなに嫌うのだ!!? 私はこんなに……っ」
自制の利かなくなった社の細首に、ひやりとした刀が横から触った。
社「!?」
我に返って目を横に動かす。
そこには、姿を消していた猛が立っていた。
社「……た……猛……」
猛「ホラな、弟はとんだ食わせ者じゃ」
都「…………………………………」
汚い者でも見るかのように蔑んだ(さげすんだ)目で、社を見下ろし、猛に寄り添う都。
社「…………………………」
『………姉上………』
猛「さぁ、どうする、若様?」 ニヤニヤ。
社「……ぐっ……」
唇を噛み締めてうつむく。
都「……もうよい……下がれ」 哀れんだ目付き。
社「……………し………………失礼………致しまし…………………た」
自分の惨めな声が遠くに……………聞こえた。
ぼんやりとした、重い足取りで館を後にする。
社『……何のために来たんだったか……』
足を引きずって、元来た道を引き返す。
石につまずいてヨロけ、道端に座り込む。
社「……………………………」
空を見上げる。
月がにじんだ。
社「………………うっ…………くっ…………くぅぅ~……」
食いしばった歯の間から、嗚咽が漏れる。
……情けない。
目からとめどなく溢れる涙。
社「ひっ……ひっ……うううっ……」
「取り消して……………取り消してくれよ…………今のナシだろ、………誰か………………………嫌だよ、…………こんなの…………ふっ………ふえぇ……」
うずくまる。