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みやまよめな:39
2008.06.01 |Category …みやまよめな
やがて、いくつかの提灯(ちょうちん)が遠くから見えてくる。
椿「社様~!!」
万次「社様ーっ!!」
使用人「若様ーっ!!」
椿「ホントにこっち?」
万次「さっき俺が小便しに起きたら、社様が血相変えて出て行くのを見たけどな」
使用人「あ、あれっ!!」
急に叫んで指さす。
その先には座り込んでいる社。
向こうもこちらに気づいたのか、尻をたたいて立ち上がった。
椿「社様~!!」
ブンブン無邪気に手を振る。
社「……椿……」
後ろめたくてうつむく。
側まで来ると、いち早く万次は社の涙の跡に気づき、わざと椿を遠ざけるよう計らう。
▽つづきはこちら
社「…………………………万次、すまない」
真っ赤に泣き腫らした目をこする。
万次「いやいや。男子はそうめったに泣き顔見られるもんじゃありませんからな。特に、女子(おなご)の前じゃな。……なっ、社様?」
社「…………………」
こくん、とうなづく。
社『……夜で良かった……』
情けない顔を見られなくて済む。
万次「………………………」 ニッと笑って、背中を叩く。
社「……………うん……」
今の社は、ごく頼りない、ただの16歳の少年に見えた。
万次丸たちの一番後ろをノロノロとついて行きながら、ふと都の館の方を振り返る。
社『………猛……………やっぱりいたんだ……』
『だが……』
『いつ現れた? どこから?』
とっさに持ってきてしまった黒百合を眺めて懐にしまう。
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