みやまよめな：３７

　中にいるのが猛と決めつけて、いつでも抜けるように刀に手をかけ、様子を伺う。

 

　中にいる者「ほれ、都。弟が来たぞ。言った通りじゃ」　ささやきかける。

都「……まさか……」

？「そなたに惚れておるからな、あの弟君は」

都「…………………」

？「信じられぬというのなら、試しに、それ、そこの障子を開けてみよ」

都「……でも……」

？「パッとじゃぞ、パッと！！」

都「…………………」

 

　そっと障子に手をかけ……

　言われるままにバッ！！と勢いよく開く。

 

都「……あ……」

社「……う……」

 

　二人、目が合う。

 

都「……………………………」

社「……………………………」

 

　少し間を置いて、

 

都「き……きゃあぁぁぁっっっ！！！」

社「……くっ！！　姉上……違っ……」

　『……くそっ！！　ええいっ！！　もういい、猛を殺って……！！』

 

　走り込んで部屋に土足で上がり込む。

　だが、そこに男の姿はなかった。

 

巫女たち「何事ですか、神子様っ！！」

 

　悲鳴を聞いて駆けつける。

 

社「いない……？　そんな……」　唖然(あぜん)。

　「確かに今……」

巫女たち「キャー！？　男っ！？」

　　　　「や、社様ではございませぬかっ！？」

　　　　「なんでこんな夜更けにっ！？」

社「！！」

　『しまった……！！』

都「愚か者っ！！」

社「……………………」

　叱った後で、都「皆の者……騒がせて悪かった。社にはキツく私から言っておくから、今度のことは許してやっておくれ」

巫女たち「……………」

 

　顔を見合わせ、巫女たちは仕方なくそれぞれ引き上げる。

 

社「……………………………」

都「……………………………」

　「社！！」

 

　ジロリと睨んで鋭く呼びつける。

 

社「……はい」

都「そこにお座りなさい」

社「……はい……」

 

　土足のまま、廊下で正座。

 

都「一体これはどういうことなのです？」

社「私はその……」

　『畜生、猛のやつ、どこに消えた！？』

 

　キョロキョロとあの巨漢を目で探す。

　しかし、ここにはあの巨体を隠しおおせる物など何一つとして置いてない。

 

都「説明なさい！！」

社「……………姉上こそ、猛を何処へやったのです！？」

都「猛なんかおりませぬ！！　どうかしていますよ、社」

社「どうかしているのは、姉上でございます！！　正体も知れぬ者に……」

 

　じっと都の乱れた寝間着姿を目に映し、

 

社「体を預けるなどとっ！！　それが乙女の……、神子と呼ばれる貴女のすることですかっ！？」

 

　怒りに任せて怒鳴る。

 

都「！！」

　「社っ！！　言ってよいことと悪いことがありますっ！！　いつ私が……っ」

社「猛とちちくりあっておる現場で取り押さえられたクセにっ！！　今だって、私は聞いて知っているんですっ！！　あの男が出入りしてるって！！」

都「やっぱりお前か！！」

社「！？」

都「私も聞きましたよ、お前が告げ口したのだとっ！！　まさかと思っていたのに……っ！！」

社「……ッ！！」

都「ヒドイ子！！　恐ろしい子っ！！　私のささやかな幸せを踏みにじって楽しいか、社！！　私はお前を信じていたのに！！！」

社「そっ、それは違うっ！！　姉上っ！！　社はただあんな男よりも姉上にふさわしい者をと……」

都「言い訳など、聞きたくもないっ！！　早々に立ち去れっ！！　そして、私の前から……」

社「……ッ！！　姉上っ！！！」

 

　その先は聞くに耐えなかった。

　とっさに立ち上がって、都の口をふさがせる。