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みやまよめな:41
2008.06.02 |Category …みやまよめな
恋と呪い
1,
社『嘘だ……アイツ、死ぬ者だったのか? もののけ類いかと思っていたが』
知らせを受け、現場に急ぐ。
猛が、死んだのだ。
社「!!」
足を止める。
広場には人だかりができており、中央には父が人の首を切り落として何やら自慢げに高々とかかげていた。
社「……猛……」
ぼんやりと切り取られた頭を目に映す。
社「父上!!」
駆け寄る。
▽つづきはこちら
父「おお、社か」
社「その者は父上のお気に入りだったのでは?」
父「しかし、都がこやつに色目を使うようになっての。わしに逆らうようになったものだから、しかたがなかったのじゃ」
社「コイツも死ぬのか……」
目を開いたまま、絶命している猛を見つめ、当たり前のことをつぶやいた。
首は切り落とされる瞬間、何を思っていたのだろう。
口元が不気味にほころんでいる。
笑ったまま死んだというのか。
社「このこと、姉上には?」
父「これから、この首を見せてやるところじゃ」
社「!? 何のためにですっ!?」
父「無論、わしに逆らうとどうなるかを知らしめるためよ。都の奴は父であるわしに逆ろうてばかりおるでな」
社「いつ姉上が逆らいましたかっ!? そのような残酷なふるまいはおやめ下され!!」
『本当は私もそうしたい……!! でも……それでは姉上が壊れてしまう!!』
父「……ほ? 都じゃ」
遠くに目をやる。
社「!!」
視線をたどると、その先には確かに都。
うわさを聞き、抜け出してきたに違いない。
父「ほれ見たことか!! 都はまたわしの言い付けをやぶって、のこのこと出てきおったわ。どうせ普段からほっつき歩いておったのじゃろう」
社「姉上っ!! 来てはなりませんっ!! 見てはなりませぬっ!!」
自らの体を盾にして視界をさえぎろうとする。
だが、時すでに遅く……
都「……猛……? 猛殿………?」
呆然と立ち尽くす。
都「いやぁぁぁっっっ!!!!」
叫んで、駆け寄る。
社「姉上っ!! いけませんっ!!」
都「返してっ!! 返してえっ!!」
社の脇をすりぬけ、父の腕から猛の頭をもぎ取ろうとつかみかかった。
父「ええいっ!! 離れろ!!」 なぐる。
社「!! 父上っ!!」
都、一度倒れるが、すぐに跳び起きてまた腕にしがみつく。
父「このっ!!」
逆の腕を振り上げた。
都「…………ッ!!」
ガブッ!!
とうとう腕に都がかみついた。
父「ぎゃっ!?」 思わず手を離す。
都「猛っ……!!」
落ちた首を拾っていとおしむように抱き締め、
都「猛殿は誰にも渡さぬ!!!!」
首を抱いて走り去って行く。
社「…………………………………」
そんな都を寂しそうに見送る社。
父「あっつ~……。とんでもない娘じゃ」
噛み付かれた手をさする。
父「首を持ち去りおって…………………薄気味の悪い娘じゃの」
社「父上がそうさせたのでしょうっ!!」
父「……なんじゃ、怒っておるのか? 猛がいなくなって一番せいせいしておるのはお前だろうに」
社「猛はどうでもようございますが、姉上にそれを見せるものではないでしょう。女子ですぞっ!?」
言い捨てて、姉の後を追う。