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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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響く炎:7

焔「お前様は、ほんに変わっておるわえ」

響「何がじゃ?」

焔「己(おれ)を嫁にして、願いをいくつも叶えさせようって腹かい?」

響「……おっ。そんな手もあったなぁ? お焔、お前は頭がよい」

焔「……はっ。では何を思うて、せっかくの願いをこのようなことに……」

響「せっかくの…って…。願いは一つだなどとケチなことを言うから……。初めに思いついたままを口にしただけよ」

焔「…あきれた」

響「……………」

焔「お前様のような馬鹿者は初めて見たよ」

響「珍しいなら、得したな?」

焔「……………」

 

 嫁さんを手に入れたから、しばらくはその膝(ひざ)でのんべんだらり。

 周囲の者共がうるさく言ったが、もう祝言も済ませたし、言われる筋合いもない。

 あとは……


▽つづきはこちら

響「お焔、妖と人は子をなせんのか?」

 

 あれから2年経ったが、一向に子宝に恵まる気配がない。

 

焔「なんだ、お前様、ややが欲しかったのか?」

響「そら、もちろん」

焔「では今からとってこよう」

 

 急に立ったので、ワシは転げて頭を打った。

 

響「あ~、待て待て待てっ!」

 

 寝転がったまま、着物の裾を引っ張って止める。

 

焔「…?」

響「どこから“とってくる”つもりじゃ!?」

焔「ガキなんぞ、その辺に落ちているわえ。いくらでも」

響「違う、違う。お前とワシの間の子が欲しいのだ」

焔「………………」

響「…無理か?」

焔「無理はない。…では、そうしよう」

響「…?」

 『なんだ…大丈夫なんだ…』

 

 それからしばらく。

 

焔「ホレ、やや子」

 

 無造作に放ってよこされ、ワシはあわてて受け取った。

 

響「…オイ」

焔「なんぞ?」

 

 やや子をワシに預けたお焔は、いつも持ち歩いている扇で口元を隠す。

 

響「どっから持って参った? 今すぐ返してきやれ」

焔「なんで?」

響「なんでじゃなくて、よその子を勝手に連れてくるのは…」

 

 お焔は我らと少々違っていた。

 人でないのだから、人の理(ことわり)に従う由(よし)もない。これがお焔の言い分で、それは確かにそうなのだが…。

 共に暮らすなら、こちらの理に従ってもらわねば困る。…と、説き伏せたのが先日。

 

焔「それはいかぬと前にも聞いた」

響「理解してくれたか。では…」

焔「己とお前様のややだ。これで文句なかろ?」

 

 煙草をうまそうにひと吸い。

 

響「待て。お焔。あの話からひと月も経っておらぬし、お前が腹を膨らませたのを見た試しがない」

焔「そのようなことを申されても……

響「……………」

焔「気に食わぬなら、捨ててこよか?」

響「いやいやいやっ! 待て待て、早まるなっ!」

 

 人でないお焔を相手に話すのは、それなりの苦労がいる……

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