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響く炎:6
2008.01.01 |Category …箱庭の君 短編2
………………えー。こうして、ワシは…
響「無事に帰ってこれたワケだが」
配下の者「………………」
響「ワシの葬式があの翌日に終わったってどーゆーコトだ!? …説明してもらおーか?」
配下の者「いや、響様があまりのお覚悟だったので、お帰りにはなりますまいな…と」響「七日は待てと言ったろうがっ!!」 相手の首を締め上げる。
配下の者「いやいや、今日は8日目でございますれば~……」
響「たわけっ!! 葬式はそのずっと前に終わっておったではないかっ!!」
配下の者「備えあれば憂いなし! 次に討ち死にされたときには葬式をせずに済みますな。いやはや…」
響「いやはやじゃねぇっ!! 次に討ち死にするときってのはどんなだっ!?」
女「…お前様…」
配下の者「…ほ? 何ですな、そこな汚い女は?」
響「おお、よくぞ聞いてくれた。これはだな、我が妻の…………」
言いかけて、はたと気づいた。
名前なぞ聞いておらなんだ。
▽つづきはこちら
響「…………そなた、名は何と申す?」
女「…何とでも」
しれと答えて肩をすくめる。
配下の者「……………」
響「では………炎…焔(えん)だ。お焔(おえん)としておこう」
一面の赤い花は、炎(ほのお)に似ていた……。
魔性の血を吸って咲き狂っていた、毒々しいまでに赤い花は。
女を地獄の業火で焼いているように見えた。
それが……印象的だった。
焔「…では、お焔…と」
配下の者「ちょっと…ちょっとちょっとちょっと!」
響「むむ、何だ、引っ張るな」
配下の者「響様、何ですか、あの女は!?」
ワシを焔から引き離して、小声になる。
響「だから、ワシの嫁御じゃというておろう?」
配下の者「名も持たぬ女がでございまするかっ!?」
響「今、名付けてやった」
配下の者「そういう問題ではござらんっ! 由緒正しきお家柄の貴方様が、あのような正体知れぬ小汚い女なぞ…どこで拾いなすったか!?」
響「あの山におった」
配下の者「…んな馬鹿な…」
響「よいか、じぃ。鬼退治をしたならば、宝と女が手に入るのがお約束だとは思わないか? 桃太郎とか、一寸法師とか、浦島太郎とか…ん~あ~…そう、かぐや姫とか」
配下の者「お約束などどーでもようござるっ!! しかもかぐや姫は鬼退治ではなーいっ!!」
ワシはそれらを無視して、お焔を呼んだ。
響「確かにきれいな身なりではないな。よし、今からそなたに合う着物を持ってこさせよう」
ワシは鬼を退治して主君・和成様より褒美を賜り(たまわり)、さらに一風変わった嫁御を手に入れた。