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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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響く炎:4

 そこまでせねばならぬこの魔性は、どんなにか強大な魔物だったか…

 ワシは冷たい汗が噴き出るのを感じていた。

 

響『あの声は、この女だ…。封印を解いてしまったのか…? ワシが…?』

 「くそっ…」

魔性「よくあそこまでたどり着いてくれた…。さすがだな」

響「うるさいっ! よくもたばかってくれたなっ!」

魔性「異なことを…。己(おれ)はたばかってなどおらぬよ。ただ、在かを教えただけ。それにお前、助かったろう?」

響「おのれっ!」

魔性「力のなくなった我の声を受け取れる者は少ない…。受けたとしてもあそこにたどり着く前に殺される…。お前はよくやってくれたよ」

響「ああ、そうだろうともさ。ワシは加賀美家が当主、加賀美 響だからな! 今、貴様も冥土に送ってやる。そこにつながれたままでは不憫(ふびん)だろう」

 『とどめを刺してやるぞ、化け物め!』

魔性「哀れと思うなら、解放しておくれな。ずっとここにいていい加減、退屈だったんだ」

響「ふざけるなっ!」


▽つづきはこちら

魔性「ふざけてなどいない。人の勝手でこんなところにつながれて、可哀想だとお思いでないかい?」

響「何故、お前のような妖(あやかし)に情けをかけなければならんっ! 貴様が悪さをしたから封じられていたのであろうがっ」

魔性「悪さ? 己(おれ)に今、会ったばかりで何故そう言える?」

響「…うっ…それは…」

魔性「それは?」

響「それは、魔物は悪いに決まっている!」

魔性「誰が決めた?」

響「ええいっ! そんなことは知らぬっ! 重箱の隅をつつくような設問はやめいっ!」

魔性「それでは困る。己は人間ではないのだから、人間の作った決まり事などわからぬし、従う由(よし)もない」

響「しかし、ワシは人よ!」

魔性「…なるほど。人とは初めて会うた者を礼もなく斬り捨てるが正しいというか…」

響「…ナニ…!?」

魔性「まぁ、それもよい。今ならできよう。己も力を吸われ続けておるでな。けれどこちらも生きるためだ。最後まであがらわせてもらう」

響「…ふん、そんな縫い止められた姿でか?」

魔性「そうさ。だって、仕方ないだろ?」

響「フッ…気の強い女子(おなご)は好きだぞ?」

 

 鼻の先で笑ってやった。身動きできずにどうするつもりなのか。

 ワシは一歩、二歩近づいて女を見据えた。

 

魔性「……なぁ。見なよ、」

響「…ん?」

魔性「この桜の花を」

響「………………」

 

 見上げる。

 

魔性「桜だけじゃないよ。ホラ、足元にも」

響「…………」

 

 言われるままに、足元を見る。

 

魔性「真っ赤な彼岸の華」

 

 桜と魔性だけに気をとられていたが、見渡せば確かに一面の赤。

 

響「…桜と彼岸の華が共に咲くなんて…っ!」

 

 驚きを隠しきれずに、思わず叫んでしまう。この美しくも異様な風景に。

 

魔性「ここは季節ナイ桃源郷。赤い花だけ咲き乱れる理想郷。己がここにつながれている限り…。血を流す限り…」

響「………………」

 『人間の勝手でつなぎとめられた……』

 

 斬る。

 …何故?

 魔性だから?

 それは、何故?

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