HOME ≫ Entry no.168 「響く炎:2」 ≫ [174] [172] [171] [170] [169] [168] [167] [173] [161] [160] [165]
響く炎:2
2007.12.30 |Category …箱庭の君 短編2
配下の者「跡継ぎはどうなさるおつもりかっ!?」
響「テキトーに決めてくれ」
配下の者「テキトーにってそんなテキトーなっ! なりませぬっ! 跡継ぎのお子どころか嫁もまだではございませぬかっ!」
響「…………よ……余計なお世話だ」
配下の者「余計なお世話なものですかっ! 見合いになれば逃げ出して…。遊び歩いては、姿をくらまして…」
響「今は説教の時ではないわ。早くゆけっ!」
配下の者「……………」
「わっかりました! では早々に葬式の手配を……」
響「…おいっ! 七日は待てよ、コラッ! もしかしたらひょっとして帰ってくるかもしれぬだろっ!?」
配下の者「同じかと思いまするーっ!」
遠ざかる声。
▽つづきはこちら
響「…………………………」
「あんにゃろ…。フツー、それでも“お供させていただきます”っていうのが、アレだろ、義理人情じゃねーのか!? …ホンットに置いていきやがった…」
……そんなワケで。
超優しく勇敢なワシは、地獄の果てまでお供しますと泣きつく者たちを無理やり追い返し、ただ一人この場に残る決心をした。
響「覚えてろ、こんにゃろ、ぜってー生きて帰ってやるからなーっ!!」
鬼は、やはり斬っても斬っても起き上がってきた。
ワシの体力は限界で、あわやと思ったときにどこからともなく怪しげな声がした。
女の声「鬼はまやかし。鬼の本体は…………」
響「こんなところに社…!? これが…」
声に従って最後の力を振り絞り、山を駆け抜ける。
指示された場所には、はて、言われた通りの崩れかけた社。
中に札があった。
それを破り捨てると……
響「霧が…晴れてゆく…!?」
霧が晴れて視界が良くなると、周囲に転がる夥しい白骨を目にすることとなった。
おそらくこれが今までにこの場所に踏み込んだ者の末路だろう。
ワシは手を合わせて、そこから離れた。
ともかく、鬼は退治された。
……が、あの声の主は何者だったのか……?
ワシは確かめたい欲求にあがらえず、あてもないのに山の中を徘徊する。
鬼の爪を受けた体はガタガタで、始めに着ていた鎧も重くて捨ててしまった。
血が大量に流れて目眩がする。
声は何度呼びかけても、もう応じてはくれない。
よせば良かったのに、そんなことをしていたから…………すっかり道に迷ってしまった。
こうしてさまよっている内に数日が過ぎた。
傷と寒さと飢えで死ぬかと思った。
折角、鬼を退治できたというのに。
あきらめかけて、へたりこんだとき……
響「…?」
ひとひら。
薄紅色の花びらが目の前を踊った。
響「……この時期に桜!? そんなバカな……」
●Thanks Comments
●この記事にコメントする
●この記事へのトラックバック
≪ 響く炎:3 |PageTop| 箱庭の君番外 響く炎 ≫