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箱庭の君番外 響く炎
2007.12.30 |Category …箱庭の君 短編2
魔性の者に出会って、まず一番してはいけないことを知っているか?
それはな、話を聞いてしまうコトだ。
魔性に応えてはならぬ。
魔性は、あの手この手で心の隙をつく。
知らぬ間にだまされて、魂(タマ)までとられちまうって話だ。
…わかったか、キョー…
▽つづきはこちら
我は嵜国(さきこく)の間宮 和成(まみや かずなり)に仕える武家の者。
名を加賀美(かがみ)家のヒビキと書いて響(キョウ)と申す。
本日、人に仇なす鬼を退治に参った。
その山は。
人が立ち入ると二度とは出てこれないという、あの世とこの世の曖昧な場所にある。
常に霧に覆われた不気味な山だ。
そこが通行できるようになれば……との和成様の所望で私が立ったワケだ。
何、造作もない。
この、加賀美家伝家の宝刀・斬鬼刀(ざんきとう)とワシの腕があればな。
ふふんっ。
鬼。それは人あらざる者。
人がかなわぬから鬼といふ…
響「ぎゃーっ!! 斬っても起き上がってくるって何じゃそらーっ!? 反則だろーっ!?」
配下の者「アンタが大見得きって、退治するなんて抜かすからっ!! こーゆー仕事は退魔師に任せておけばよかったんですっ!」
響「うるさーいっ! 売り言葉に買い言葉だっ! あれだけ言われて黙っておったら、男がすたるわっ! それとも何か!? 当主のワシが黙って口ごもっておればそれで満足だったか、お主っ!?」
配下の者「そうは言っておりませぬっ! しかし、お館様はまだお若い。周囲の古狸共に振り回されてはいけませぬと…」
響「よいっ! 若くとも度胸はありと和成様にお見せする機会じゃ」
配下の者「そのようなコトを申して…、逃げてりゃ世話ないでござろーがっ!!」
響「怒るな。ちょっとした計算違いよ」
配下の者「…ううっ。どうしてこんなノーテンキな…。こんなところで犬死にされては、先代に申し訳が立ちませぬ」
響「だーれが犬死にかっ!」
立ち止まってくるりと身を反転。
響「見ておれよっ! 一刀のもとに切り捨ててくれるっ!」
配下の者「だからソレはもう何べんもやったでしょーがっ!」
響「何べん立ち上がってもきーるっ! 立ち上がらなくなるまで斬って斬って斬り捨ててやるっ!」
配下の者「あ~っ! ワシは孫が生まれたばかりなんです、勘弁して下さい。孫はワシの顔を見てニコリと…」
響「うるさーいっ! そういう話をする奴は一番初めに死ぬって相場が決まっておるんじゃ! ちょっと可哀想っぽい思い出を語るでないっ!! 家族の絵などもっての他だぞ……って、コラ、懐から取り出して眺めるなーっ!!」
配下の者「ううっ…こんな馬鹿若様が跡をついだばっかりに…先代~!」
響「うるしゃーっ!!!」
配下の者2「響様、来ます!」
響「…くっ! そなたらは逃げろ!」
配下の者「…な…何を…!?」
響「確かにワシが悪かった。人がかなわぬから、鬼なのだな…」
配下の者「…響様…」
響「だが、自分で言い出した以上、ワシがおめおめと帰るワケにはゆかぬっ! 七日経ってワシが帰らぬようであれば、討ち死にしたと申しておけ」
配下の者「…!!」
「なりませぬ! なりませぬぞ、響様っ! そのようなつまらぬ意地で命を落とすなどと……。一時の恥が何でございましょうや? それよりももっと大事なことがありましょう?」
響「……わかっておる。しかし曲げられぬ。わかってくれ」
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