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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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響く炎:10

 自分も子を持つ身。

 ワガママで手のかかる子だが、可愛い。

可愛がるから、またワガママを言い出す。

 だが、それが童の姿だろう。

よく笑い、よく泣き、よくかんしゃくを起こす。

 それが。

 もっと年は上とは言っても、10に満たぬ童であるハズの十音裏様は…

 

響「十音裏様、またお一人でございますか?」

十音裏「…十音裏でございます、みゆ…」

響「響でござる。加賀美 響」

十音裏「………………」

響「…………………」

 

 十音裏様は、暗い牢獄から逃げ出そうとしたのか、壁を狂ったようにひっかき、その血で自分に与えられた名を記していた。

 もう、気狂いとしか思えなかった。


▽つづきはこちら

響「十音裏様、今度、ウチの京次を連れて参りましょう。年は貴方様よりも4つ下ですが、きっと遊び相手になります」

十音裏「……………」

響「十音裏様」

十音裏「……………」

響「十音裏様、…いや、詩腥(シセイ)様。思考を止めてしまいますな」

十音裏「……………」

響「詩腥(シセイ)様」

十音裏「…し…」

響「…お?」

十音裏「叱られまする…。十音裏が…叱られまする…。暗いところはもう…お…お許しを…み…み…みゆ…」

響「…っ」

 

 深之殿は知っておられたようだ。

 ワシがここに通っていたことを。

 そして、帰った後で十音裏様を責め立てるのだ。

 暗い部屋で文字を書かせる。世間の裏に在る者という侮辱の名を。

 折檻が繰り返されて、詩腥様はご自分の本来の名も忘れてしまっていた。

 これはあまりにむごい。

 深之殿に一言申し上げようと参上したなら…

 

深之「十音裏は和成様がおつけになったのですし、あそこにかくまっておるのも和成様の仰せでございますれば…」

響「かくまうのとアレは違います!」

 『そうだ。何故、和成様は何も言わぬ? …後ろめたいか、深之殿に…?』

 

 しかし、子を守れずして親と言えようか?

 和成様が味方になってやらずに誰が…。

 あれだけ愛した腥姫様との子であろうに…

 

深之「深之は悪くない。深之は…っ。響殿、響殿…まさか、深之をお嫌いになったのではありますまいな!?」

響「…いや…そうではござらんが…しかし…」

深之「十音裏が悪いのです。十音裏はわらわを憎んでおる」

響『…それはそうだろう…』

深之「だから十音裏は貴方の前で深之に意地悪されたと嘘ばかり。…悪い子!」

響「……………」

 

 初めに鬼子と笑ったのは、他でもない、この深之殿。

ワシがそれに乗らなかったからといって、今更取り繕っているのだろうが…

 

深之「何ぞ、その目は…っ!」

響「……いいえ…」

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