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響く炎:10
2008.01.03 |Category …箱庭の君 短編2
自分も子を持つ身。
ワガママで手のかかる子だが、可愛い。
可愛がるから、またワガママを言い出す。
だが、それが童の姿だろう。
よく笑い、よく泣き、よくかんしゃくを起こす。
それが。
もっと年は上とは言っても、10に満たぬ童であるハズの十音裏様は…
響「十音裏様、またお一人でございますか?」
十音裏「…十音裏でございます、みゆ…」
響「響でござる。加賀美 響」
十音裏「………………」
響「…………………」
十音裏様は、暗い牢獄から逃げ出そうとしたのか、壁を狂ったようにひっかき、その血で自分に与えられた名を記していた。
もう、気狂いとしか思えなかった。
▽つづきはこちら
響「十音裏様、今度、ウチの京次を連れて参りましょう。年は貴方様よりも4つ下ですが、きっと遊び相手になります」
十音裏「……………」
響「十音裏様」
十音裏「……………」
響「十音裏様、…いや、詩腥(シセイ)様。思考を止めてしまいますな」
十音裏「……………」
響「詩腥(シセイ)様」
十音裏「…し…」
響「…お?」
十音裏「叱られまする…。十音裏が…叱られまする…。暗いところはもう…お…お許しを…み…み…みゆ…」
響「…っ」
深之殿は知っておられたようだ。
ワシがここに通っていたことを。
そして、帰った後で十音裏様を責め立てるのだ。
暗い部屋で文字を書かせる。世間の裏に在る者という侮辱の名を。
折檻が繰り返されて、詩腥様はご自分の本来の名も忘れてしまっていた。
これはあまりにむごい。
深之殿に一言申し上げようと参上したなら…
深之「十音裏は和成様がおつけになったのですし、あそこにかくまっておるのも和成様の仰せでございますれば…」
響「かくまうのとアレは違います!」
『そうだ。何故、和成様は何も言わぬ? …後ろめたいか、深之殿に…?』
しかし、子を守れずして親と言えようか?
和成様が味方になってやらずに誰が…。
あれだけ愛した腥姫様との子であろうに…
深之「深之は悪くない。深之は…っ。響殿、響殿…まさか、深之をお嫌いになったのではありますまいな!?」
響「…いや…そうではござらんが…しかし…」
深之「十音裏が悪いのです。十音裏はわらわを憎んでおる」
響『…それはそうだろう…』
深之「だから十音裏は貴方の前で深之に意地悪されたと嘘ばかり。…悪い子!」
響「……………」
初めに鬼子と笑ったのは、他でもない、この深之殿。
ワシがそれに乗らなかったからといって、今更取り繕っているのだろうが…
深之「何ぞ、その目は…っ!」
響「……いいえ…」