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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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妖絵巻番外編 1番の価値。:6

 両隣の表札を確認したが、名前が出てない。
 ついでにこの部屋にも表札がない。
 下に下りてポストを見たら、あった。“古賀”。
 上に上がって、もう一度、同じ部屋のチャイムを押す。

「すみません、古賀さんという方の部屋って……」
「あら? 和のお知り合い?」

 ……和……

「あの……」
「もしかして、生徒さんかな?」

 お姉さん? じゃ、ないよ、ね?
 


▽つづきはこちら


「今、ちょっと出てるけどそろそろ帰ってくると思うの。どうぞ上がって?」

 どうして、今現在彼女がいないだなんて思ったんだろう。
 いてもおかしくない。
 あの身体の弱い彼女さんの話は、ずっと昔の話で今は引きずってないよって言ってたじゃない。
 完結したお話で、先生は先生で新しい物語が始まってたんだよね。
 先生がモテそうだなって思った時点で一人じゃないかもしれない可能性を思い出すべきだった。

「貸して? 荷物そんなに、重いでしょ? お母さんに頼まれ物?」

 親切で女性が伸ばした手から逃げるように後ずさった。

「そ、そうなんです! 急ぎだから、待ってるわけにも行かなくて! もう帰らなきゃ」
「そうなの。でも何か用があったんでしょ? 伝えておいてあげようか?」
「いいです! バイト、辞めちゃったみたいだから、挨拶に来ただけだし! 今までありがとうございましたって伝えといて下さい!!」

 早口にまくし立てて、逃げ出した。
 マヌケな荷物が、行きより重たく手に伝わる。
 途中で捨ててしまおうかと思ったけど、もったいないので思い止まった。
 彼女ができたならできたって言ってくれれば良かったのに。
 そしたら余計な期待とかしないて済んだのに。





 こうしてアタシと先生との時間はたった一年。
 あっけなく終わってしまった。
 先生に作ってあげようと思った料理の材料はお母さんに渡して喜ばれた。
 無駄にしなくて良かった。
 先生みたいに失恋しても、片思いの子の幸せを願ってあげられたら良かったんだろうけど、今は全然ダメだ。
 先生は別に嘘なんてついてなかったのに、アタシの中では嘘つき呼ばわりだし、こんなことなら優しくしてくれなくてよかったのにとか恨み言でいっぱい。
 ひょっとしたら、先生の母校に入学すれば教師になった先生が新任として入ってくるという考えがチラとかすめもしたけど、会ったところでどうだというのだろう。
 向こうにはキレイな彼女さんがいるのに。
 うん、やめよう。
 アタシは進路希望の学校に先生の母校は書かなかった。
 ううん。書いたけど、消した。
 どうせならもっとずっと、数年経った頃に会いに行こう。
 その頃にはこの胸の熱も冷めているかもしれない。
 その頃には7歳年上の先生は家庭を持っているかもしれない。
 その頃には今の彼女と別れているかも。
 ……できれば3番目が一番いいかな。
 フリーになっているときに大人びたアタシが告白したら、首を縦に振ってくれる?
 自分の都合のいい想像しながらアタシは残りの中学生活を、先生不在のまま過ごし、やがて第一志望校に入学した。
 高校に入って、彼氏が出来たけどどうしても先生と比べてしまって上手くいかなかった。
 アタシの中でいつも一番の位置には先生がいて、彼氏になった人でさえ、順番を変える事ができなかった。
 アタシもなかなかヒドイ奴だと知った。
 当時はあんなに苦しんだ奥田君や美羽ちゃんのことでさえ、時間の流れに飲まれて消え去っていったのに先生だけがアタシの中で鮮烈に残っている。
 どうして3年も4年も前の人が、それもたった1年しかいなかった人がこんなに印象的なのだろう。
 何か特別な出来事があったわけじゃなかった。
 ただの学生家庭教師と生徒というだけ。
 告白してこの恋にピリオドを打てなかったからかな。
 あの後も先生は、別の生徒の勉強をみていたろうし、今では希望通り教師として教壇にあがっているかもしれない。
 アタシだけじゃなくて多くの人が、「先生」って呼んでるかもしれない。
 過去のことを美化して理想に当てはめているだけなのかな、アタシは。
 高校卒業式で校長先生の話を聞きながら、ぼんやり思った。
 私の卒業には、赤い薔薇の花束抱えてプロポーズするようなおかしな人は登場せず、極々一般的に終了した。
 泣いたり笑ったり抱き合ったり。
また集まろうと約束したり、写真取り合ったり。
 帰りに親しいグループでマックに寄った。
ささやかながら卒業パーティーのつもりで。
そこでどこかで見た顔と遭遇する。
向こうは全く気づいてなかったけど、アタシは覚えていた。
ほとんど顔を合わせていないのに関わらずすぐにわかったのは、手の甲にある特徴的なアザのお陰。
生まれつきと思われる、薄いアザ。丁度、きれいな三角形になるように浮いているの。
あの特徴は一度見たら、そうそう忘れない。


……先生の彼女!


なんて偶然!?
中学卒業から一度だって出くわしたことがなかったのに。
なのに一緒にいる若い男の人は、先生じゃない。
どういう関係だろう。
会話に耳を傾けたけど、もう食べ終わったところらしく立ち上がって店の外に出て行ってしまった。

「ごめん、アタシ、お母さんと約束あるの忘れてた! また電話するね!」

 メンバーにそういい残して、急いで店を出る。
 彼女さんは若い男の人と腕を組んで歩いていた。
 間違いない。
 あれが彼氏だ。
 じゃあ、別れたんだ!
 先生の幸せを願って挙げられない、心の小さなアタシは嬉しさのあのり、身体の震えが止まらなかった。
 先生が今はフリーだ!
 先生に会いに行こう!!
 自転車にまたがって、強くペダルを踏む。。
 何度か足を運んではためらって引き返したあのアパートへ向けて出発だ。
 相変わらず短絡的なアタシの頭の中に、あの女の人と別れた先生にまた新しい彼女ができているんじゃないかとか、既に家庭を持っているんじゃないかとかそんな考えは浮かんでいなかった。
 息を切らせて目的地まで到着。
 自転車を止めるのももどかしく、鉄製の、塗装の剥げかかった階段を一気に上がる。
 奥から2番目。
 チャイムを押す。

「はーい」
「先生、あのっ……!」
「? どなた?」

 ……出てきたのは、中年のおばちゃんでアタシはアセッた。
 先生の今度の彼女は……!?
 ま、まさか……

「どちらさま?」
「あ、あの……古賀さん……の、お宅……ですよ、ね?」
「……藤崎ですけど?」
「……は?」
「藤崎です」
「間違えました、失礼しました……」

 パタンと閉じられる鉄製の扉。
 表札には、「藤崎」。
 彼女が出来ているとか家庭持ってるとかそれ以前に、引越ししている可能性が立ちふさがっていたとは……うかつ!!
 困った。
 引越し先なんて調べようが……?
 ん? 待って。
 携帯の番号があったハズだよね。
 お休み時の連絡用に。
 でもどうしよう?
 番号が変わっていたら?

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●Thanks Comments

頑張れ文絵ちゃん!

と、なんだか応援したくなった(≧ε≦)
発想が一直線過ぎるとこがなんだか読んでいて気持ちがいいです♪ 和の素敵お兄さんな感じも堪らん(*^o^*)

From 【希】2009.11.15 17:35編集

Re:頑張れ文絵ちゃん!

文絵、充分うらやましい性格してるよね(笑)
もう少し考えて行動しろよと激しく言いたい(^_^;)
和、素敵兄さん?
……たくあん1本よこしてくるけどいいんですか!?(笑)

From 【ゼロ】 2009.11.15 21:48

なごみん…

惚れてまうやろー!(爆)
今後どうなるのか、続きが楽しみですー。

From 【秋月悟】2009.11.15 20:42編集

Re:なごみん…

秋月さん、目を覚ませ、和ですよ? アレ、和ですよー!??Σ(´∀`;)
続き、どこで終わらせようか悩みどころ。
今日中に終わればいいなーっと。

From 【ゼロ】 2009.11.15 21:49

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