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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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妖絵巻番外編 1番の価値。:7

 それにアタシの番号なんか登録していないハズ。
 知らない番号からじゃ出てくれない。

「メールだ……! メールにしよう!」

 メール好きじゃないから嫌だと教えてくれなかったアドレス。
 教えろ教えろとしつこくせがんで、無理に聞き出したアドレス。
 メールも同じく見てくれないかもしれない。
 でも電話よりはいいハズ。
 これも変わっていたらおしまいだけど。

 


▽つづきはこちら



 文絵です。今日卒業しました。
 覚えていらっしゃいますでしょうか。
 中学生のときに家庭教師をいていただきました、下田 文絵です。
 先生のおかげで高校は第一志望に無事入学でき、本日、その高校も卒業しました。
 先生のお時間さえよろしければ、一度お会いできませんか。



 メールを打ってから送信ボタンを押すのを躊躇った。
 ここまできて、ようやく冷めてきた頭が別の可能性を導き出したのだ。
 彼女がいたら?
 彼女どころか奥さんたいら?
 ううん。そんなのはいい。
 都合が悪かったら、断るはずだもん。
 最後の行に、「お話したいことが沢山あります。少しお時間下さい」と付け加える。
 送信ボタンに指を当てて、また迷った。
 昔のバイト先の生徒から、数年経って会いたいだんなてメールが来たらどう思うだろう?
 下心バレバレ?
 ……それでもいいか。
 えいっ!
 とうとう送信ボタンを押した。
 もう後戻りは出来ない。
 しばらく待ったけど、返事は来なかった。
 彼女か奥さんがいたら、他の女の子の誘いは受けないよね。
 でも返信くらいはくれてもいいのに。
 家に戻り、卒業祝いをしてもらい、夜、お風呂から上がってTVは見ずに自分の部屋にこもる。
 何度もメールを確認したけど、こなかった。
 もう諦めようと思ったとき、着信が入った。




 卒業おめでとう。
 ところでランドセル?


 

 短ッ!
 返信、来たはいいけど短ッ!
 しかもランドセルッ!??
 名前をちゃんと覚えてないってこと!?
 文絵、いい名前って言ってくれたくせに、この……たくあんめっ!!
んっも~! 早速、脈ナシっ!!
でもめげないもんね。
返信は来た。
アタシのこと、一応は覚えているってことだもん。
失礼にもランドセル扱いだったけど!
あんまり興味なさげな先生の返事に負けず、アタシは無邪気を装って約束を一方的に取り付けた。
会うのは3年半ぶり。
もうランドセルではないことをアピールしなくては。



約束した日曜日のためにアタシは新しい服を用意することにした。

「3年半の片思い~? エー? ロッマーン♪」
「7歳も上でしょ? もうオッサンになってたりして~? アハハッ」
「いなくなった当時22なんだから、まだお兄さんです!」
「あれ? 25? じゃ、私の彼氏と同い年じゃん」
「あっ、そうだね。真由のカレシ25だよね」

 高校で知り合った友人たちと騒ぎながら、お気に入りの店で服を物色。

「会ってくれるってことは脈ありなんじゃない?」
「んー。どうだろう。あの先生、計り知れない天然素材だからねー。わかってないかも。アタシのこと、当時から小学生呼ばわりだった……し……」

 あれ? ガラスの向こうにまた見つけた。
 この辺によく来るのかな。
 先生の元カノ。
 やっぱり先生じゃない男の人といる。
 これはもう間違いないな。
 確信の笑みを浮かべた。

「ナニナニ、どしたの? ニヤけてキモイよ」
「アレ。先生の元カノ」
「ウッソー!?」
「よっしゃ、先生、フリー!!」
「てか、元カノといつ別れたかわかんないじゃん」
「……へ?」

 うっ。確かにそうだ。
 今更になって、友人からの指摘が現実味を帯びた。
 でも約束は取り付けたんだから。
 会えばハッキリする。
 会って、彼女がいたとしても告白してみよう!
 先生が高校時代に片思いの子に告白したみたいに。
 奥田君がアタシと付き合っていると知ってたのに告白した美羽ちゃんみたいに。
 何かが動くかもしれない。
 ダメでも心に残してくれるかもしれないもん。





 日曜日。
 指定した駅前でアタシは3年半ぶりに先生と再会した。
 あの頃のままで何一つ変わっていなかった。
 ううん。むしろ、以前より幼く見える。
これはアタシの方が成長したから?
先生はもっとずっと大人だと思っていたのに、意外とそうでもなくてびっくりしたくらい。
そしてやっぱり改めて見ると、キレイな顔立ちをしているなとぼんやり思った。
人を寄せ付けないバリアーが一部の隙もなく張り巡らせられていて、人を見下したような視線がピッタリという高飛車な外見。
彼に想いを寄せる女の子がいたとしても、おいそれと告白できる雰囲気ではない。
無言で相手を黙らせる威圧感が彼にはあった。
でも実際に話してみれば、本当は割りと抜けてて、割りとお人良し。
仮病とわかっていても、お見舞いに買うのが恥ずかしかったであろう少女誌を買ってきてくれる人。
失恋した相手の幸せを願える人。
お年玉に100円引きのたくあん1本くれる人。
懐かしさがこみ上げてきて、思わず駆け寄ろうとしたアタシの足に急ブレーキがかかった。
 緊急事態発生。
 ……隣に、あの彼女が立っていた。
 どうして?
 頭の上に大量のクエスチョンが発生して飛び跳ねる。

「せ……先生……こんにち……は……」

 隣で微笑む彼女が気になって、アタシの言葉は力なく尻すぼみになった。
 昨日、あれだけ頭の中でシミュレーションしておいたのに。

「お前、マジ、ランドセル? 何か……こんなだったかなぁ? もっとランドセルっぽかった気が……」
「ちょっと、和! ランドセルはないでしょ、ランドセルは。……文絵ちゃん、だっけ? ゴメンネ、和ってば、こういう人だから」

 何?
 何なの、この人?
 別れてたんじゃないの??
 呆然とするアタシを久しぶりで緊張しているんだと勝手に解釈した二人は、とりあえず駅ナカの喫茶店に連れて行った。

「話って何だよ? 中学のときの年賀状返せとか言うんじゃないだろうな? イラスト入りの」

 ……それはいいから。
 捨ててくれていいから。

「お前が有名になったら、ゆすりたかりしようと思ってしっかりとってあるぞ。早くプロになれよな」
「ギャア!? どうして名前忘れてたクセにそういう余計なコトばっか覚えてんのっ!?? サイアク!!」
「名前? 覚えてるぞ。オリキャラのサイスくんだ」
「ヒイィイ!!! チガウ、その名前じゃない!!」

 店内なのに関わらず、思わず大声を上げてしまい、アタシはハッと口を押さえた。
 先生といるといつもペースを狂わされる。

「ねぇ。確かこの子……和が辞めた後に家まで来た子よね? 重たそうな買い物袋ぶら下げて」

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