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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ番外編:4 エリート未満

「………壊してしまえ」
「ハイ」
尊敬する教官から与えられたのは、魔力のこもった指輪だった。
練習試合でエリート軍団と名高い我々がこれ以上、
わけのわからない雑草クラスに負けるのをレヴィアス先生は見ていられなかったんだ。
俺は初めて触る魔法のアイテムをぎゅっと握り締めた。
スゲェ。カァーッコイーイ♪
コレを与えられたということは、だ。
俺にこの流れを止めて来いっていうことだ。
それは、信頼されているってことじゃねーの?
そうさ。
俺は本当はスゴイんだ。
本当は隠された才能が眠ってて、まだ目覚めていないだけの天才なんだ。
だってホラ。
先に背が高くなる奴って止まるのも早いってゆーじゃん。
才能だってきっと同じだ。
俺の方が後から伸びるタイプなんだよ。
……きっと。
 
 
レイディ・メイディ番外編:4
エリート未満
 

▽つづきはこちら

 
 指輪を身につけた俺が舞台に上がると、今話題のメイディア嬢と対峙した
 
「覚悟しろ、嘘つき女! ズタボロにして泣かしてやるからな!」
 
 彼女に少なからず恨みを抱いていた俺は、今日のためにとっておいた言葉を叩きつけてやった
 
「ふんっ! 泣くのはお前よ」
 
 相変わらずナマイキな女だ。ムカツクなァ。
 俺は去年の6月。この女に恥をかかされた。
 俺の家柄は男爵家で貴族の中では最低ライン。
 その四男だから、継ぐモノなんてなんにもナイ。
 貴族だって言うとそれだけでスゴイって皆が言うから、ホントはナイショなんだけど、男爵ってそんなにはすごくない。
 体裁を守るために借金とか結構、しちゃってるしさ。
 継ぐものがない俺は、薔薇の騎士を目指そうって思った。
 実は一番上の兄も薔薇の騎士でさ。従兄にもいる。
 だから、俺もなりたかった。
 とりあえず、世襲されなくても貴族の名だけは欲しかった。
 薔薇の騎士は誰でも目指せるものじゃなくて、養成所の門をくぐるだけでも大変なんだぜ?
 適性を見られて、試験を受けて。
 中にすんごい奴がいてさ、魔法なんかも使えちゃってて。
 そいつは絶対に受かるなって思ってたら、合格者の中にいなかった。
 れれっ? なんでぇ??
 なんと、今現在すごくても、底が浅いとダメなんだと。
 底が浅いって何か?
 器だよ、器。
 伸びられる限界が浅いってこと。
 俺?
 俺はホラ、合格してここにいるじゃん。
 入所前の試験で試験官だったレヴィアス先生が俺に言ったんだ。
 君には素質があるって。
 私のところにぜひ来なさいって……言ってくれたんだ!
 レヴィアス先生のお噂はかねがね聞いて知っていた。
薔薇の騎士の中でも更にエリート格を何人も輩出している敏腕の教官だって。
 俺はその人の目に留まったんだ。
 へへっ。俺はすげぇんだ。
 ま、その薔薇の騎士を目指す俺は、ちゃんと合格して、養成所である女の存在を知った。
 伯爵令嬢がいるってんだよ、同じ新入生の中に。
 伯爵令嬢だよ、伯爵令嬢!
 しかもマジで名門のエマリィ・シャトーの一人娘!
 エマリィ・シャトー伯爵は爵位は伯爵だけど、その中でもかなりの力を持った家なんだ。
 なんでそんな毛色の違う姫君がいるのか知らないけど、これってチャンスじゃね?
 見事、姫のハートを射止めれば晴れて俺も伯爵サマ?!
 こんなチャンス見過ごすバカはいないね。
 様子を見てみたら、あ。……イケてるんじゃね?
 真っ白! 日焼けしてねー!!
 細っそー! 折れる! アレ、つまずいてコケたら骨折るんちゃう!?
 怖ッ! 金髪! 青目! あれぞ姫!!
 よし、決めたぜ俺は。あの姫様こそ、俺のマイ・スィート・ハニー。
 他の男共も皆狙ってるにちげーねー!
 でも俺は知っている。
 女の子をオトすには、紅い薔薇とアクセサリーだ。
 だって、俺が好きだったウチのメイドのマリーは、家庭教師のニールに紅い薔薇をもらって結婚しちゃったもん。
 それでいつの間にかなんか指輪つけてたもん。
 俺がセミの抜け殻あげたときと態度が明らかに違ったもん。
 あの2アイテムがあればバッチリさ。
 フフフフフッ。
 ……などと思った俺はなんと浅はかだったか。
 色白金髪お姫様は、血も涙もない悪魔だったのだ。
 
「貴方、何様のつもり? こんな安物でワタクシの気を引けると思ったら、大間違いだわ。出直していらっしゃいな」
 
 紅い薔薇は目の前でゴミ箱に。
 ブローチの入った箱はリボンを解かれることなく、床に打ち捨てられて、オマケに上から足で踏みつけられる。
 そのときの周りの目!
 皆が笑っているように思えて俺は顔を上げることが出来なかった。
    悔しい。
 お姫様は最低最悪の女だった。
 こんな風に酷いフラレ方をしたのは俺だけじゃなくて、もう数え切れないほどの男が肩を落とした。
人の気持ちなんかこれっぽっちも持ってない冷たい心の姫君は、この世で最も残酷な言葉を次々にひねり出しては他人を傷つける。
近付く者を傷つけずにはいられない棘を持つ、まさに黒薔薇のような女だ。
入所して2年目。そんなクソ女に復讐の機会が回ってきた。
クラス対抗試合。
レヴィアスクラスVSヒサメクラスだ。
レヴィアス先生に目をかけられている俺にあのクソ女を壊せという指示が来た。
もちろん期待に沿いますよ、先生!
クソ女の張ったシールドを俺のエア魔法が打ち砕く。
スゲェ! これが指輪の力!
ヒュウ♪ 気ん持ちいい!
俺は調子に乗ってクソ女を吹き飛ばした。
ざまーみろ、いい気味だ。
でもまだ許してやんねー。
 吹き飛んで地上に落ちる前にもう一発をお見舞いしてやった
 なす術もなく、生意気で高慢ちきな女が地面にはいつくばる様は、俺にいいようのない高揚感を与えた。
 いつもは整えられている金の巻き毛が乱れて、顔を隠しているのが惜しいと思った。
髪が邪魔していなければ、どんな表情をしているか見てやったのに
脅えていたか、泣いていたか、絶望していたか。
 大きく裂けたスカートの間から覗く白い足に目が留まった。
俺は鼻の下をこすって、もう一発お見舞いしてやろうと魔法を唱える
仮面の教官から制止の声が上がったが、俺は聞こえなかった振りをしてそのまま詠唱を終らせた
 再起不能にしてやるつもりで渾身の一撃を放ったのだが、対抗する魔法が突然割り込んできて、指輪の力を借りたの魔法を押し切、相殺されてしまう
 オイオイ、何事だよ。
 会場はしんと静まり返り、氷の魔法の出先に注目する。
 天才少年と噂高いクレス=ローレンシアだった。
 
「オイ、お前。気に食わないから相手をしてやる。ありがたく思いなよ」
 
 女性を象った木製の杖をエラソーに突き付けてくる。
邪魔された俺は腹を立てて試合中だと言ったが、相手は不遜に口を歪ませてこう言った。
 
「だから。試合なんか関係ないんだよ。ただお前の不細工な顔が気に食わないだけさ」
 
 試合場に踏み込んでくる。

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