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レイディ・メイディ 67-5
2008.10.15 |Category …レイメイ 67・68話
問題の日から開けて1週間。
恋人たちの間には見えない壁が障害となって立ちはだかっていた。
透明の壁には「やあ俺の名は、二股不誠実☆変態王。アンはブスだからそろそろ別れよう」と書いてある。
……かどうかは定かではなかったが、アンは別れを切り出されるのが怖くてずっとリクを避けていた。
かといって、あれだけ過激な言葉を投げつけておきながら、元の鞘に収まるわけにもいかず、ジェーンとも疎遠だ。
ジェーンの方からはこちらの顔色を伺いつつ声をかけてきてくれるが、騒ぎを起こした手前、簡単に折れてはみっともない。
頑なな態度を崩さないでいたら、モーリーがやってきて、「ならいいんじゃないの」とあっさりジェーンを連れ去ってしまったのだ。
こうなってはますます怒っているふりを続けなければならないではないか。
▽つづきはこちら
孤立してしまったアンを拾ってくれたのは、シラーだった。
正直、シラーは苦手だ。
それよりもっと苦手なのがシラーの取り巻き軍団である。
かつての敵メイディアを排除するために徒党を組んでいたメンバーが加わっているからだ。
気が重い。
アン『どうして私ばっかりこんなについてないの』
運命の女神はアンのことを嫌っているのではないかと疑いたくなる。
皆は何でもそつなく上手くやっていっているように見えるのに、アンのところにばかり不幸が回ってくる。そんな星の下に生まれついたとでもいうのか。
次々と困難がその身に降りかかってくると感じていた。
頼みのリクは、強引さに欠け、アンが避けると困ったような顔をするだけでそれ以上は弁解を試みない。
もっと必死になって追ってきてくれたなら、すぐにでも許せる準備があるというのに。
クラスメイトから不名誉なあだ名を次から次へと頂戴して、否定するのは一生懸命なクセに。
だいたい、カイルが主に悪い。
カイル「俺のシズカがぁ~! この変態! フルチンマスター!!」
リク「やめてよ、そんなステキネーミング板についたらどーしてくれるんだ。あれは事故だったって何回説明すれば気が済むんだよ」
カイル「事故で済むか! そもそも夜に部屋に入って脱ぐのがおかしいだろ! 年上美女の色香に勝てなかったんだな!?」
リク「年上美女の色香なんてこれっぽっちもなかったよ。むしろこう……もっと子供っぽいというか……」
カイル「うーわー!! 奥様聞きまして!? 何か今、具体的に言いましたわよ、このヒトー!! いやー! 不潔よー!!」
リク「顔っ! 顔の話っ!!」
穏やかで飄々として声を荒げることのないリクもカイルの執拗なからかいの前には太刀打ちできなかったらしい。
しかも事が事だ。笑って済ませられるレベルを突破。
カイル「うをを!! 俺も誘惑されてー! なぁ、クレス!? 坊やいらっしゃ~い♪って言われたい!!」
クレス「一緒にするなよ、お前と。僕はそんなこと思ってないぞ。でもリクは最悪だ。エロ病がうつるからあっち行け!」
クレスまで信じちゃってこの始末。
リク「もう1週間経ってるんだしいつまでも騒ぐのよそうよ~? 子供じゃないんだからさぁ」
カイル「どーせ子供ですぅ。めくるめく大人の世界へなんて足を踏み入れたことのないキレイな身なんですぅ」
リク「そ、そういう意味じゃなくて」
ヒサメ先生は実は年上美女というあり得ない噂は、本格的に信じるカイルを始め、うっかり彼の言葉に惑わされた哀れなクレスに、素顔を見て男だと思っていたけど、やっぱりカイルが自信満々に女だと言い切るからすっかり信じてしまった馬鹿なリクに伝染し、今やクラス全体の都市伝説!?と化していた。
年上美女(らしい)ヒサメ先生が現れるのを今か今かと待ち望んでいる、この異様な空気。
本人が聞いたら引っ繰り返るほど驚くに違いない。
どこからそんな怪現象が発生したんだと。
何のことはない、ただの成人男性なのだから。
リクの心にはこの噂のせいで暗雲が立ちこめていた。
アンに誤解されて避けられて、自分は変態王の名を欲しいままにして、鎮にもそっぽを向かれた。
その上、鎮が女性だったとすると今までの自分の態度が大問題。
事故とはいえ、素っ裸で上に乗るのはもちろんのこと、普段から円の動きでイジメたり、抱えて振り回して吹っ飛ばしてしまったり、まぁ扱いのぞんざいなこと、ぞんざいなこと。
女性に対する態度でないのは確かだ。
だいたい父性を求めるって相手が女性なら母性だ。
1から10まで失礼千万。
今日、彼……いや、彼女?の謹慎が解けるのだが、顔を合わせるのが恐ろしい。
リク『……全裸でスミマセン……ええ、まごうことなく全裸男でした。ヒトサマの部屋で堂々とパンツまで干していました。失礼だなんて微塵も思ってませんでした。鎮にだけは変態扱いされても甘んじて受けましょう。変態王・リクですが何か? ええ、変態ですとも』
汗、だらだら。リク、内部崩壊。
顔立ちからリクには少年に見えていたのだが、そういえばナツメのことは少女だと思って疑いなど持たなかった。
どっちなのだろう。
リク『できれば年上美女でないことを願う……』
異性だと今までのような軽い接触ができなくなってしまう。
それ以前にだいぶ怒らせてしまったから、嫌われたのではないかと気が気でないのだが。
数日前、図書室でクロエと話した別れ際、彼女はあきらめないでと言ってくれた。
しかしもうリクには手立てが残っていない。
鎮を傷つけるだけだというのなら、追い詰めるだけなのだというのなら、いっそもう距離を置くしかない。
手を取るつもりがないなら初めから手を差し出すのではない。
この言葉は利いた。
カッコつけのポーズだけだと取られても無理はない。
実際にその通りだと自己嫌悪に沈み込む。
アンと付き合い始めたのは、断わってアンを傷つけたくなかったからだ。
結果、もっと深く傷つけた。
この娘なら好きなれるという希望的観測があったにせよ、それでも性的な意味を匂わせる行動は全て遮断するつもりだった。
つまり受け入れるつもりが始めからなかったのである。
それなのに恋人を名乗ってしまった。
彼女は当然、今後、二人の仲が発展してゆくものだと思っていたはずだ。
普通ならばそうだ。
それを拒んだために今、彼女はどうしようもなくプライドを傷つけられて悲しい思いをしているのである。
リクが楽な道を選んでしまったせいで。
これでは鎮に叱られるわけである。
手を取ってくれないのも自分のこの煮え切らない性格を見透かされてのことに違いない。
「やっぱり俺には無理だよ。クロエだったら適任かもしれない」
そう図書室で打ち明けた。
すると彼女は困ったような顔になり、「たらい回しね、これじゃ」とうつむいた。
救ってみせるなどと大口を叩きながら、手に負えなくなると相手に譲る……というと聞こえはいいが、実際には押し付け合っている。
そんな空気が出来上がってしまっていたとこのとき気がついた。
結局、重荷に感じているのかもしれない。リクもクロエも。
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●Thanks Comments
まだまだ
複雑だね....。
変態王リク(笑)も、アンも、クロエもヒサメ先生も。
そして、違った意味でカイルもクレスも。(笑)
シラーがなんか企んでそう?
アンが心配。
ヒサメ先生...やはり抱きしめてあげたいキャラなのです。
レイメイは皆、ハッピーエンドという設定らしいですが、ヒサメ先生もラストは幸せになれるのでしょうか?
シラーは
もう物語上の役割を終えたので、今回はチラ役なんですけどね^_^;
これからラストに向けてどんどんキャラも絞られていく予定。
鎮のラストは……うん、本編でのお楽しみ?!(笑)
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