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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 67-3

リク「ありがとう……クロエは温かいんだね」
クロエ「お礼を言われることは何もしてないんだけど」
リク「聞いてくれただけでも少し和らいだ気がする。それにクロエはそこにいてくれるだけで安心感を与えてくれる存在だよ」
クロエ「ほ、褒めすぎだったらっ。もう、リクったら」
 
 顔を染めてかぶりをふる。
 
リク「いや。みんなもきっと救われていると思うよ。クロエのそういうところに」
 
 そんな二人の会話内容までは耳に届いていなかったが、本を読む振りを続けながら様子を伺っていた最悪の人物が離れた席にいた。
 
シラー『ふぅん?』
 
 シラーブーケ=エマリィ=シャトーだ。

▽つづきはこちら

 彼女の思惑通りに義理の姉がこの世から去り、エマリィ=シャトーの一人娘という立場を手に入れ、義理の母とは関係も良好。
 欲しい物は手に入り、気持ちが満たされたのか目立って誰かを落とし入れようという真似はしなくなった。
 最近では気になる男性もできた。
 自分以外は愛せなかったこれまでの彼女からは想像できない変化である。
本人でも信じられないほど、気持ちも穏やかになっていたのだ。
 しかし生来の問題児である性格が直ったわけではない。
 本に顔を隠して時折、深い緑色の瞳を鋭く細める。
 別にリクをクロエを貶めるつもりはなかったが、アンに飲まされた煮え湯は忘れてはいない。
 自然と胸に下がっているロケットペンダントに手が伸びる。
 生母の形見であり、これを利用してシャトー家に転がり込んだ最後の切り札。
 切り札は成功し、今ではもう用のないそのペンダントを今も彼女は身につけている。
 彼女が口先で何と言おうが自分をだまそうが、心のどこかで軽蔑していた母親を愛していた証拠である。
 それをアンに盗まれてメイディアのせいに仕立て上げられた。
 お陰で自分まで恥をかく羽目になったこと、忘れはしない。
 少しだけ荒波を立ててやろうとシラーはほくそ笑んで席を立った。
 何食わぬ顔で、本を棚に戻しながら。
 ……本のタイトル「ニンジャの全て」……
 
 
 
 リクの謹慎は解けたが、鎮の謹慎はあと4日残っていた。
 独りで部屋にいる間、鎮は無心に絵を書き続けていた。3日前のことを考えながら。
 自分はあのときどうすべきだったか。
 リクには可哀想なことをしてしまったと思う。
 跳ね返って噛み付いてしまったから。
 自らを大人だといってみたものの、あれは大人の対応ではない。
 怖くなって反撃してしまった犬だ。
 実際には鎮という青年は精神的に成熟していない。
 人との関わりを可能な限り避け続けてきた結果、人として成長する好機を逃し続けてきたのである。
 また、付き合ってきた人間もよくはなかった。
 人生の大半はならず者と一緒にいたわけで、そこに常識や優しさなどは欠乏していた。
 女は犯すもの、子供は売りもの、男と年寄りは殺すもの。
力こそが正義。弱者がどんなに正論を吐いたところでたわ言にしかならない。
 これが鎮の知っている常識の全てである。
 彼は自分がまともな精神の持ち主でないことをよく心得ていた。
 ただし、ならず者の中ではマトモだったとおかしな自負もある。
 女は犯さなかったし(けれど殺した)、子供も売り飛ばさなかった(けれど殺した)。
……内容は決して褒められるものではなかったが。
 そんな彼が口に出す言葉の半分以上は嘘である。
 厳しく撥ねつけはしたものの、本当はリクを悪いだなんて少しも思っていなかった。
 重ね合わせて心を慰めることの何が悪いと言うのだろう。
 いない人間の代わりを探して求めて何がいけないというのだろう。
 相手を認識していながら、父の「ように」慕うのは失礼なことではない。
 父親そのものにされてはたまったものではないが、頼りにされていることを迷惑だと感じていたわけではない。
 自分を消すなと言ってしまったのは、相手に対する甘えだったと今、振り返る。
 鎮という人間を見て欲しいという願望の現われを押し付けただけである。
 きっと、本音では誰かに重なった自分ではなく、一人の人間として見てもらいたかったのだ。
 鎮は自らを生徒の中のアンという少女に近い部類の人間だと分類した。
 見て欲しい。それも自分だけを。
 そういった強い欲求を隠し持っている。
 それは気味が悪いくらいに。
 アンどころの騒ぎではないだろう。
 鎮は気持ちの悪い男だ。
 相手なんて誰でもいい。ただ自分に、自分だけに優しくさえしてくれればそれでいいのだ。
 母親を独り占めしたい欲求に近いかもしれない。
 リクが父性を求めるなら、鎮は常に誰かの愛情を渇望している。
 リクと同じである。
 ならば何故、突っぱねたかといえば答えは簡単。
 相手が望みに応えてくれはしないだろうから。
 鎮の欲求はあまりに強すぎて相手に重荷となって押しつぶしてしまう。
それほど度量のある人間が要るとも思えず、また相手にそうさせるほどの魅力も残念ながら備わってはいないと鎮は思う。
リクの望みは敬愛する先生の心を助けることだが、鎮が助かるには唯一絶対の愛情が必要だ。
気持ち的にも呪いを解くためにも。
それをリクがくれることはない。
何故なら、優劣のつけられない性格の彼にとって大事なのは、家族や友人、関わる全ての人々だから。
リク=フリーデルスは博愛主義者である。
一つのために何かを捨てることができない人間だ。
出会うの全ての者たちに惜しみない愛情を振りまく、慈愛の天使だ。
だからこそ、そういったいわゆる優しい人間に鎮は身を置けない。
多くの人々の中の一人では満足できないから。
均等に分け与えられる愛情になど興味はなかった。
リクは鎮を特別視しているというが、それがいかほどのものか。
十何番目なのか何十番目なのかあるいはそれ以下の“特別”なのか。
そんな“特別”に意味なんてない。
そんなものは“特別”なんかじゃない。
欲しいのはただひとつ。
一番。
二番でも三番でもなくて、一番が欲しい。
それ以外なら、何も思われていないのと一緒なのだ、欲張りな鎮には。
 他の皆と同じように好きだと言われても、二番目あるいは十何番目に好きだと言われても少しも嬉しくはない。
 だから、相手のせっかくの好意は受取れない。
優しさは充分に伝わってはいたから、申し訳ないとは思うけれど。
 そうして、本音を言えば。
 甘えたことを言えば。
 手を取ってくれるつもりがないのなら、初めから甘い顔をして期待を持たせて欲しくはないのだ。
 強がりの仮面がはがれたら、自分の力で立ち上がるのが困難になってしまうから。

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