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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 67-2

リク『ごめんよ、クロエはシアンじゃなくてクロエなんだよね』
クロエ「?」
 
 椅子を引いて腰を下ろしたクロエはヒサメ先生の授業じゃないからつまらないのと軽い不平を鳴らした。
 
クロエ「聞いたよ、アンから」
リク「……広まってる?」 ぎく。
クロエ「う、うん」
リク「……………………」 ずぅ~ん。
クロエ「リク……」
 
 そっとリクの手を取ってクロエは真っ直ぐ見つめた。
 
クロエ「誰だって気持ちが揺れるときはあると思うの」

▽つづきはこちら

リク「え、あ、うん」
クロエ「それは仕方のないことだわ。だけどね……」
 
慰めてくれるのかなとリクが思ったのもほんの短い間。
 次には爆弾発言を落とされることになるから。
 
クロエ「二股はダメよ。二股は」
リク「……違うったら……」 がくー。
クロエ「年上女性に憧れる気持ちはわかるけど、相手の同意なく行為に及んだらそれは犯罪なの」
 
 優しく頭をふる。
 
リク「……ちなみにソレ………どこから誰に聞いたの?」 げっそり。
クロエ「えと……アンとカイルとクレスとモーリーとミハイル先生の話を総合して……かな?」
リク「……全部、嘘だよ」
 
 だいたいどうしてあの場にいなかったカイルとクレスとモーリーの名前がそこで登場するのだ。
 怪しいことこの上ない。
 
クロエ「そうなの?」
リク「そうだよ。いくらなんでも素っ裸で女の子襲ったりなんて……」
クロエ「……素っ裸だったんだ」
 
 にぎっていた手を離して笑顔に影が差した。
 
リク「ハッ!」
 
 そこまでは誰も言ってなかったらしい。
 うかつにも口を滑らせてしまった。
 
リク「ほ、ホントに違うからっ! 俺、雨に濡れて鎮のところで乾かせてもらってただけで、それで毛布借りてたんだけど、つまずいて落としてええと……鎮の上にどすんとこう……踏んづけただけというか……」
クロエ「……シズカ……」
 
 あどけなさの残るクロエの瞳に、探偵の光が宿った。
 
クロエ「シズカさんですか。リクさん。つい昨日まで先生って呼んでいたのにシズカさん呼ばわりですか」
リク「うわわっ、なんで敬語になってるんですか、クロエさん!?」
  「っていうか、年上女性ってシズ……っ先生は、女の人じゃ…………」
 
 反論しかけてはたと止まる。
 あの顔は初めて見た気がしないとずっと引っかかっていたが、今、ようやく思い出した。
 あれはチェリー……いや、ナツメではなかったか?
 
リク「あれ!?」
クロエ「何がアレなんですか、素っ裸で年上女性を襲って恋人に泣かれた最低男のリク君。でも私は信じているわ。早いところ白状しちゃいなさい。牛丼食べさせてあげるから」
リク「全然信じてないじゃないかー!!」 がーん!?
クロエ「声が大きいわ。ここは図書室よ」 にこっ。
リク『うわぁ~……めっさ疑ってる目つきだー!』
 
 しかし牛丼は魅力的でうっかり冤罪を認めてしまいそうになるが、認めたら最後、変態王の名が一生ついて回ってしまう。
 
リク「俺はクロエや皆が思っていることなんてしてないよ。ただ二人を傷つけてしまったのは確かだと思うけど……いや、そういう意味では傷つけてませんから、軽蔑するのよしてくれませんか、クロエさん」
クロエ「…………話し合ってきたのね?」
 
 ふざけていじめるのはこの辺にしてあげて、クロエは見当つけていたことを口した。
 リクの沈んだ表情を見れば結果は想像つくけれど。
 
リク「クロエには敵わないな。そうだよ。先生と話をしてきたんだ。……初めはアンの話だったけど……」
クロエ「そっか」
リク「でも……余計なお世話だったみたいだ。俺、思い上がっていたよ。俺にどうこうできる人じゃない」
クロエ「どうしてそんな悲しいこと言うの…? 大丈夫。先生は今、気が立ってるだけよ。……とか失敗した私が言っても説得力ないかしら」
 
 ぺろりと舌を出して頭をかく。
 
リク「そんなことないよ。クロエは本当に心から先生を心配してあげてるんだから」
 
 クロエという女の子は本当の意味で優しい少女で、癒しの白薔薇がこれほど似合っている子はいないだろうとリクは思った。
 彼女ならば鎮の頑なな心も解きほぐすことが出来るかもしれない。
 
リク「俺じゃダメだな……とても……役不足だよ」
 
 卑屈な笑みを浮かべて首を垂れる。
 
クロエ「リク……」
リク「俺ときたら自分のことばっかりで、俺のせいで先生を苦しめていただなんて考えもしなかった。先生は俺なんて眼中にない。信じてもくれない。俺の手なんか……必要としていないんだ」
クロエ「……本当に……そう思っているの?」
リク「あの人は強いから……誰の手も必要ないんだよ」
クロエ「……世の中にそんなに強い人っているのかしら」
リク「少なくとも俺なんかは遠く及ばないみたい。弱者の手は要らないってハッキリ言われた。……ハハッ」
クロエ「ごめんね、私が頼んだせいで辛い思いさせてしまったみたいで」
リク「クロエのせいじゃないよ。みんな……俺が悪いんだ」
クロエ「自分を責めないで? リクは先生を助けたかっただけじゃない。何も悪いことなんてないわ」
 
 むしろここまでしてもらっておいて、心を開いてくれない鎮に問題があるのだ。
 けれどそれを責めようとクロエは思うような子ではなかった。
 リクは悪くない。鎮も悪くない。そう、定義づけるのがクロエ=グラディウスという少女だった。
 近い将来、ローゼリッタをその細い両肩で支えてゆく運命に選ばれた聖少女。

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