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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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エリート未満:3

「人にはな。生まれながらの魔力容量の限界というのが決まっておって、こればかりはどうにもならぬ。これが大きい奴が恐らく魔術師としての才といっても良いでござろうな。…物覚えは遅くともどうにでもなろうからやはり最終的には器の差か。拙者が見たところ、手前は先の二人に比べて小さいように思える。あくまで未熟な拙者からの視点だが」
 
 風変わりな教官の言葉には申し訳程度に慰めが入ってはいたが、その言葉はずんと心に堪えた。改めて才能がないと言われたようなものである。
 彼はクソ女に言っていたが、カーテンを隔てた俺にも言っているように聞こえた。
 
「ヤツラは確かに特別だ。才のない者が努力で補うことは無論できるが、限界もあろうだが、手前も捨てたものではない。器がいくら大きくても使い切れなくては、ただの宝の持ち腐れ。大抵の者はな、持てる器をいっぱいまでにせん内にいっぱいと思い込んで止まってしまうよ。だからな、多少小さかろうが、めいいっぱい使える方が強い」
 

▽つづきはこちら

………そうかな?
俺にはそうは思えないよ……
器が使いきれない奴を器の小さい奴っていうんじゃないのかよ。
 
「わかるか、ごーるでん。強いと言ったんだ」
「どれだけデカイ魔法がいくつ使えても、胸に刃一突きで人は簡単に死ぬ。奴らが何の天才かによる。同じ舞台で戦えばかなわぬかもしれぬが、面と向かって張り合う必要などない」
 
 それじゃあ負けは負けじゃん。何言ってんだよ、このアホ教官。馬鹿じゃないの?
 勝負の世界は厳しいんだ。理屈で片付けんな。
 
「正面で張り合うのが卑怯と思うならば、それもよし。だが、己の舞台に引き込むのもまた力だ。どんなに見た目の力量差があろうと引き込まれて負けたら、それまでよ」
 
 もしかして慰めているだけ? そんなの、意味ないよ。
 
「ヤツラは魔力も大きければ、頭の回転も早い。小賢しい策など見抜くだろうし、よしんば陥ってもきり抜けるだけの力も有しておる。それでも勝とうと思うなら、まずは己を知り、敵を知ること。ごーるでんがあの両名に勝つには、戦術が必要になってくる。奴らを観察して良いところがあれば取り入れるがよかろ。幸い、手前は観察者の目を持っているようだからな、それを使わぬ手はない。見ているうちにどこに穴があるかわかればしめたもの。それから自分に合った一撃必殺の魔法を磨け。この2つが手前を助けることになるだろうよ。他の魔法はこの際、捨ててもかまわぬ。戦術に必要な分は取り入れるべきだとは思うが、それは授業で十分だろう、手前なら」
 
もし、一撃を外したら? 俺の心の中の声とクソ女の実際の音声とが重なった。
 
「何度でも一撃必殺の魔法を放て。完全に封じられたときは手前の完敗だ。…が、そんな心配がいらなくなるほど磨き尽くせばよい。手前の強みは追う者という立場だ。一番前を走る者よりも有利だからな、精神的に」
 
…そうかなぁ。
また、クソ女の「そうでしょうか」とかぶった。
 
「ああ、まだリクもクレスも強くはない」
 
 あの二人が強くない? あんなに騒がれて教官たちもこぞって褒めたたえているのに?
 ……レヴィアス先生があからさまに欲しがっているのに?
 疑問に答えるようにアホ教官言った
 
「奴らはまだ、ただの優等生に過ぎぬよ。充分に勝てる。勝つための準備をして臨むのなら」
 
そんなコト言ったって。無茶だよ……
 
「そのような顔をするな。手前には他の二人にはない武器があろうが向こう見ずで怖い物知らずのその性格だ」
 
 しばし受け持ちの女子生徒を構って、仮面の教官はなんとイキナリ俺のところにまで顔を出した。
 うわわっ! ヤバイ! 怒られる!
 指輪のこともバレているんだ。マジでヤバイ! どうしよう!?
 俺はギクリとして縮こまり、眠ったフリを決め込んだ
 しかし、教官は叱るどころかまったく口調も声の温度も変えないで、普段関わりのない俺にこう話しかけてきた。
 
「手前もな、倒したいと思う相手を見誤るなよ。よく考えてみ? クレスに負けたが悔しいか?」
 
 タヌキ寝入りが通じていないとわかった俺めっそうもないと首を横に振った。
 クレスに負けて悔しいなんて。そんなおこがましいことはもう思っていない。
アレはバケモノだ。魔法のアイテムをもってしても粉砕されて、自分がう相手ではなかったと身をもって知ってしまった。
隣の話し声を聞くに、メイディアの奴はそれでもなお食い下がるつもりでいるようだが、実際に相手をしていないから言えることだ。
 
「ではたった一度の負けで見向きされなくなったことが悔しいか?」
「う…」
 
 図星を指されて言葉に詰まった。
 そうだ、がケガをしたってーのにレヴィアス先生は労りの言葉をかけてくれるどころか、「せっかく貸してやったものが無駄になった」とつぶやいて見向きもしなかったのである。
 これから先のことを思うと気が重くなる。先生は完璧主義だ。無様な失敗は許さない。
もう目をかけてはくれなくなる。それが怖い。
 
「ま、どちらでも構わぬよ。だがな、誰に見向きされぬ方がきっと都合がいいぞ。急に伸びたと驚かせるにもってこいだ。…度肝抜いてやれ」
 
 誰のとは言わなかったが、レヴィアス先生を指しているのだろう。
 てっきり自分のクラスの子をケガさせたとして叱られると思っていた拍子抜けして目を見張る。
 
「あきらめるな」
「…………………は…い…」
 
 はベッドに潜ったまま、涙を流した。声を漏らさないようにするのが精一杯だった。
 見放される不安と恐怖と悔しさに、声を掛けられたことで初めて浮かび上がった罪悪感とが混ざりあって両目からあふれ出す。
 そんなことがあって間もなく。
 俺は、レヴィアス先生に完全に見放されてしまった。
 無様に負けた俺のせいで名誉とプライドに傷をつけさせてしまったせいだ。
 生徒のトレードが行われて、俺に負けた姫さんの奴が先生に引き取られた。
 彼女は先生の下で失敗したからじゃないから。
 先生の下ならまだ伸びると判断されたのかもしれない。
 代わりに俺は……
 
「ええと……あのー……」
 
 鎧の額当てだけを常に装着して顔が隠れてわからない。何だかよくゆらゆら無意味に揺れている、見るからに冴えない正体不明の小男が俺の担当教官となった。
 ……そう。レヴィアス先生に無能と罵られる、シズカ=ヒサメ教官だ。
 
「これからな、お前様を手放したことを後悔させてな?」
「は?」
 
 執務室に入ると挨拶もなく、イキナリこう切り出されたので俺は目をしばたかせた。
 前フリ一切、ナシ! なんてコミュニケーション能力の不足した大人だろう。
 黒衣の教官は曲がってもいない額当てを直すような仕草をして、無意味に首をかしげる。

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