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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 67-8

 ジェーンは何か言いたげに口を開いたが、言葉にならずにまた閉じた。
 
アン「……ごめんなさい……。ジェーンが私のことを想ってくれているのはわかるの……」
 
 言い過ぎたと気がついて自らを落ち着けるために胸をなでおろす。
 
ジェーン「………………」
アン「だけど私、貴女に何かしてもらえばもらうほど、惨めになっていくのを感じるの。ジェーンは私なんかいなくても友達いっぱい作れるし、明るくて大らかで積極的で何も気にしないたちだし、立ち回りが上手いから心配事もない……」
ジェーン「………………」
アン「……引き換え私は、友達作るの下手で……いつも“友達の友達”で……。物事をすぐウジウジ考えちゃうし……」
ジェーン「………それって私がちゃっかり屋さんで、何も考えてないってこと?」
 
 ようやっと引きつった笑いを浮かべたジェーンが問い返す。

▽つづきはこちら

 
アン「……そうは言ってないけど」
ジェーン「……ううん。いいのよ、もう」
 
 許された一言にアンはほっと息をついた。
 
ジェーン「行きなさいよ。もう何も言わないから」
 
 ジェーンは微笑んだ。
 
ジェーン「確かに私がいつも先回りしてアンが一人でできることまでやっちゃっててお節介だったよね。だからもう何も言わない」
アン「……ジェーン?」
 
 微笑に違和感を覚えて恐る恐る問いかける。
 
ジェーン「………行きなさいよ………」
 
 笑顔が引っ込んだ。唐突に。
 
アン「ご、ごめん……あの……」
ジェーン「貴女、友達なんか必要ないじゃない! リク君に慰めてもらいなさいよ!! 優しい人でしょ、リク君は!!」
 
 初めて怒鳴った。
 へらへらと笑ってばかりのジェーンが。
 アンは全身に冷水をかけられた思いで一つ年上の大らかな友人を見つめた。
 何とかなだめなくては。
 嫌われたくはない。
 そう思うのに言葉が形になってくれない。
 こちらが怒っていたはずなのにどうして立場が逆転しているのだろう。
 アンにはとっさに理解できなかった。
 目尻が熱くなった。つんと鼻にも痛みが走る。
 居たたまれなくなって、その場から彼女は逃げ出した。
 次にこの教室を使おうとして入ってきた別の生徒たちが驚いて顔を見合わせている。
 やりとりを少しだけ見ていた誰かか「怖ッ」とつぶやくのを合図にジェーンの目にも大粒の涙が浮き上がった。
こぼれそうになるのをぐっとこらえて大股に歩き出す。
自分にシリアスは似合わない。
いつでも軽く構えていたい。
そう、モーリーのように。
ジェーンはモーリーに会いたいと思った。急激に。
彼女なら、あっけらかんとして言ってくれるはずだ。また大したことないことでケンカしてと。
このささくれだった気持ちを笑い飛ばして鎮めてくれるはずだ。
彼女に難しい理屈なんていらない。ただ、のんびりと受け入れてくれるだけだ。冗談を交えながら。
そうしてもらえれば、ジェーンもきっと何を興奮していたんだろうとすぐに元に戻れるはずなのだ。
こんなのは自分の柄ではない。
 
 
一方、ジェーンに嫌われてしまったと思い込んだアンはパニックに陥っていた。
何もかもがメチャクチャだ。
どこからおかしくなったのだろう。
始めは幸せいっぱいだったはずなのに。
周りからのやっかみすら愛を勝ち取ったアンへの祝福に聞こえていたはずなのに。
何が。
何が。
どこから何がおかしくなったのか。
歯車は何から狂いだしたのか。
 
アン『……先生だ……1ヶ月前から』
 
 1ヶ月前、リクとクロエと鎮と鎮の兄が消えた。
 ちょうど鎮の兄が関わりを持たないリクに話があるとアンから連れ去ったときからだ。
 その後、兄は見かけなくなって、3人は大怪我をして戻ってきた。
 それからだ。
 リクとクロエが二人してコソコソ始めるようになり、鎮を今まで以上に意識しだして、アンを蔑ろにし始めたのは。
 何かがあの1ヶ月前にあったのだ。
 けれどそれが何だというのか。
アン『私の方が……ずっと孤独なのに! ジェーンにまで嫌われて、とうとう独りぼっちになっちゃったのに!』
 
 
 その頃、自分をめぐって何やらおかしなことになっているとは知らないリクは階段の途中で黒ずくめの教官を捕まえていた。
 どこから話したらいいだろうか。
 あらぬ噂が立ってしまったことからか、それとも彼を通して別の面影を追っていたことからか、力も伴わないのに大口を叩いてしまったことからか。
 とても、話ずらい。
 こんな気持ちになったのは初めてだ。
 今まで友人たちが自分から去っても追おうと思ったことはない。
 汚い自分には負う資格がないから。去られても当然だと思っていたからだ。
 しかしこの人には捨てられたくないと強く願う自分がいる。
 ただ父親の代わりではないのだ。
 1週間、考えたけれど絶対にそれだけではない。それだけは言える。
 救ってやるだなんておこがましかったかもしれないけれど、ただ重ね合わせるだけの道具ではなかったことくらいはわかって欲しい。
 つなぎとめておくにはどの言葉を選ぶのが適切か。

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